性欲を満たせるからでも、お金を稼げるからでもない…大学4年から風俗店で働く宗教2世女性が、「風俗の仕事が楽しすぎる」と感じた意外なワケ
文春オンライン / 2025年1月19日 17時10分
新興宗教家庭で育ったまりてんさん(写真=『聖と性 私のほんとうの話』より/講談社提供)
〈 「男性の背中に立派な和彫りのイレズミが…」「ヤバい人なんだ」大学4年から風俗店で働き始めた宗教2世女性が、入店直後に衝撃を受けた出来事 〉から続く
新興宗教家庭で育った宗教2世の現役風俗嬢・まりてんさん。入信を拒んだ彼女は家庭での居場所を失い、孤独を感じながら成長していく。大学生になると、不特定多数の男性と性的な関係を持ち、大学4年の冬から風俗店で働き始める。
彼女は、どのような孤独感を抱えながら学生生活を送っていたのか。なぜ風俗店で働くようになったのか。ここでは、まりてんさんの著書『 聖と性 私のほんとうの話 』(講談社)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/ 1回目 から続く)
◆◆◆
風俗の仕事が自分に合っていた
私はその時期、大学卒業のための卒業制作にとりかかっていましたが、デリヘルのお仕事が楽しすぎて、卒業制作が間に合わなくなりそうになりました。なんとかギリギリで卒業できましたが、それくらい、デリヘル嬢というお仕事が私に合っていたのだと思います。
私が大学時代に精力的に取り組んでいた「逆ナンパ」ですが、いくら成功率が高くなっても、誰にも褒められないし、成績にあらわれるわけでもありません。自分では、「成功率、こんなに高くてすごくない?」なんて鼻は高かったんですが、あくまで自己満足。
それがデリヘル嬢になると、きちんとしたシステムの中でお仕事として成果が出て、評価もされます。
この驚きをたとえるのであれば、友達にとてもおいしいクッキーを焼いてあげていて、友達は「おいしい、おいしい」って喜んでくれていたけど、お店に出品したら売れるんじゃない?って言われて出してみたら「すごく売れたじゃん、嬉しい!」みたいな感じです。
月の給料は50万円ほどになっていった
浜松でしたし、お店の料金も高くはなかったので、そこですごく稼いだというわけではないのですが、月のお給料は50万円ほどになりました。そのお店としてはすごいことだったようです。
なにより、ホテルというあらかじめ決まった場所で、60分や120分などとコース時間が決まっているサービスを行う風俗は、路上の逆ナンよりも安全で、時間が区切られている分、楽に感じるようになりました。
逆ナンで男の人の家に行くと、やはり束縛されたり、拘束時間が長くなったりすることもありましたから、数多くの「答え合わせ」をしたかった私にとっては非効率的でした。
趣味の延長のように繰り返していた逆ナンをして相手を深掘りしていくという行為が、仕事上の「接客」になるという意味で、自分が「遊び人」から健康な人、健全な人になれた気もしていました。
「仕事」という言い訳ができたことで、単純に努力して働いて稼いでいる人になり、普通の人間になれたと嬉しかったんです。「ビジネス」が隠れ蓑になり、自分の行為が評価されると感じるようになれました。
「赤ちゃんいるのにこんなとこ来るんだ」風俗店に来るお客様の話が好きだった
私が聞いていて好きだったのは社会的に地位がある人の自慢話でした。だいたい風俗店に来て話す自慢話って自分がこういう仕事したとかじゃなくて、「部下がほんとにダメでよお」みたいな悪口です。あるいは学校の先生が生徒の文句をひたすら言うとか。ただ、そういうドロッとした内面を引き出せれば、もうこっちの勝ちです。リピーターになってくれます。
その一方で、その学校の先生が盗撮なんかしてたりするわけです。生徒がなっとらんみたいなことをいつも言っているのに、自分はどうなんだ、と。そういう大人の心の裏表に接するのがとても新鮮でした。
携帯電話の待ち受けに赤ちゃんの写真を使っているお客様にも最初は衝撃を受けました。まだ私も大学生でしたから、「赤ちゃんいるのにこんなとこ来るんだ」とびっくりしたりしたんです。人間って欲張りというか、いっぱい求めるんだな、と。そういう道徳に背いてる、聖書の教えに反するようなことをするお客様の話は私の大好物でした。
なかには「いま総額300万円くらいの借金あって明日5万円返さなきゃいけないのに会いにきちゃった」っていう、あまりうまく働けてないような人もいて、そういうお客様には私が興味津々になってしまって「なになに? いつからそんな状況になっちゃったの?」って食いついたりして。私は挫折というのか、傷を負った人生を歩んでいる人が好きでしたから。
18~19歳の男の人は「主人公意識」が強い
やはり逆ナンだと若めのサラリーマン相手が多いですし、狙っていたのが「草食系」だったので、ピロートークで聞ける話もそこまで深くはありませんでした。逆ナンで社会的な地位のある人に出会うことはまずありません。そういう人は繁華街を隙を見せつつトボトボ歩いてたりしないですし、深夜のスーパーでアイスを物色したりもしないでしょうしね。
あとは、幅が広がったといっても私は年下には興味がなかったので、そこは「答え合わせ」の面からは捨てていました。18~19歳の男の人もお店には来ましたが、私が期待するドロッとした二面性のある話は到底聞けなかったですから。
そういう若い男の子は「主人公意識」が強くて、「俺が俺が」な感じで主張して、弱みを見せることはほぼないんですね。「このあと二人で飲みに行こうよ」と誘ってきたりもするし、良くいえばカジュアルな感じで接してくるので、リピーターにはなりそうもないし、私は関心がなかったです。
ともあれ、デリヘルというスキームにある程度守られながら、私はどんどん「答え合わせ」の幅を増やしていきました。
(まりてん/Webオリジナル(外部転載))
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