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「ボーガンを使えば殺せる」“借金あり・暴力あり・労働なしの三重苦夫”を殺そうとした「34歳・妻の言い分」(2020年の事件)

文春オンライン / 2025年1月18日 17時0分

「ボーガンを使えば殺せる」“借金あり・暴力あり・労働なしの三重苦夫”を殺そうとした「34歳・妻の言い分」(2020年の事件)

34歳の2児の母がくわだてた「夫の殺人計画」とは…? 写真はイメージ ©getty

 結婚した相手は、借金あり、暴力あり、労働なしのダメ夫…。ついに堪忍袋の緒が切れた妻は、夫の殺人計画をくわだてる。どうしても夫から逃げたい彼女の計画はどんな結末を迎えたのか? 2020年に兵庫県で起きた事件を、前後編に分けてお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

◆◆◆

250万円の貯金がパーに

 小沢明奈(当時34)は高校時代からアルバイトを始め、無駄遣いせず、コツコツと貯金をしてきた。

 高校卒業後はスーパーや総菜屋などで働き、貯金は250万円ほどあった。

 24歳のとき、初めて交際相手ができた。それがのちに夫となる小沢忠志(当時37)だった。忠志は明奈に依存し、明奈の実家に転がり込むような形で、同棲を始めた。2人きりで部屋に閉じこもり、そのことを親族になじられると実家を出て行き、誰にも知らせずに入籍した。新居となったのが、やがて事件現場となるアパートである。

 まもなく長男が誕生。明奈は忠志が200万円もの借金を抱えていたので、自分の貯金から肩代わりした。

 また、忠志が「飲食店を経営したい」と言うので、両親が貯めていた学費に加え、自分自身がローンを組んで500万円を用意した。

 だが、商売はうまくいかず、わずか2カ月あまりで店を畳むことになった。2人には月額7万2000円のローンだけが残った。

 2人で頑張れば何とかなると思ったが、相変わらず忠志は仕事が長続きしない。代わりに明奈が働こうとしたが、乳飲み子を抱えている身では、なかなか仕事が見つからなかった。

夫の借金を援助交際・風俗で返済

 生活は常に困窮した。明奈はそのために援助交際で稼ごうと思った。水商売すら経験のない明奈には、当然ながら抵抗もあったが、背に腹は代えられない。家事も育児も一手に担っており、自由になる時間はほとんどなかった。

 だが、それが忠志にバレてしまった。明奈は不貞をなじられ、暴力を振るわれ、スマホの中身をチェックされて、今いる場所を写真で送るように命じられた。

 次男が生まれると、生活はさらに困窮した。明奈は家計を支えるため、また隠れて援助交際するようになった。忠志の目をごまかすため、金が足りなくても足りているフリをしていた。

 相変わらず忠志は働かない。にもかかわらず家族計画はいい加減で、明奈は28歳から32歳にかけて、3回も中絶させられる羽目に陥った。明奈としては「産みたい」と思っていたが、経済的事情から許されなかった。

 子供たちが成長すると、託児所に預けて、風俗店で働くようになった。忠志には実家近くの花屋で働いていると言ってごまかしていた。

 ところが、それもバレてしまい、明奈は子どもたちの前で土下座させられた。忠志の束縛はますますひどくなり、暴力もすさまじくなった。「外に出られない顔にするぞ」と言われたり、一瞬、息ができなくなるぐらい腹を蹴られたこともあった。

「離婚するなら親権は渡さない。お前がこれまでしてきたことを考えれば、オレに慰謝料として300万円ほど払う必要がある」

 明奈は忠志の支配下に置かれ、誓約書を書かされ、まともな思考回路さえできなくなっていった。

 コロナ禍の直前になると、明奈はホテルの清掃の仕事をしていた。月収は12万~13万円。それで一家4人が生活していた。忠志は働かずに一日中、家でゲームをしていた。失業保険にも入っていなかったので、収入もなかった。

 ところが、明奈も緊急事態宣言が出た直後に「しばらく休んでくれ」と言われ、仕事を失った。代わりに飲食店で仕事をし始めたが、そんな状態でも忠志は仕事をしなかった。

 仕方なく風俗店に復帰したが、すぐにバレてしまい、忠志から「またか!」と叱責された。明奈はすべてがイヤになり、「離婚したい」という書き置きを残して実家に戻った。

 だが、最終的には子どもたちのことが心配になって、忠志のいる家に戻った。明奈は忠志の言動におびえ、飼い殺しにされ、彼の目を見て話すこともできなくなった。

ボーガンを使えば、殺せるんじゃないか

 そんなとき、近隣都市で家族ら4人がボーガン(洋弓銃)で殺傷されるという事件を報道で見た。身長182センチの忠志と身長157センチの明奈では体格差がありすぎる。でも、ボーガンを使えば、殺せるんじゃないか。

 忠志から離れるには殺すしかないという考えに取りつかれた明奈は、ネットで見つけた専門店でボーガンと弓矢と付属品を購入した。威力を試すため、洗面所の壁に撃ってみた。ズブリと穴が空いた。これなら殺せるかもしれない。

 でも、そんなことをしたら、子どもたちが犯罪者の子どもになってしまうのではないか。そんな葛藤を抱えながら、3週間が過ぎた。

〈 「また4人で暮らしたい」妻の反省に裁判長も驚き…ダメな夫を殺そうとした“ボーガン妻”のその後(2020年の事件) 〉へ続く

(諸岡 宏樹)

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