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「また4人で暮らしたい」妻の反省に裁判長も驚き…ダメな夫を殺そうとした“ボーガン妻”のその後(2020年の事件)

文春オンライン / 2025年1月18日 17時0分

「また4人で暮らしたい」妻の反省に裁判長も驚き…ダメな夫を殺そうとした“ボーガン妻”のその後(2020年の事件)

夫に矢を放った34歳・2児の母のその後とは…。写真はイメージ ©getty

〈 「ボーガンを使えば殺せる」“借金あり・暴力あり・労働なしの三重苦夫”を殺そうとした「34歳・妻の言い分」(2020年の事件) 〉から続く

「夫の束縛や暴力、これから大丈夫なのかという経済的不安があり、夫を殺せば離れられると思い、やってしまいました」――数百万円にのぼる夫の借金を、風俗の仕事をしながら返し続けた34歳の女性。

 借金あり、暴力あり、労働なし…そんなダメ夫から離れるため、ついに彼女はボーガンによる殺人を計画。夫に矢を放った彼女の「その後の人生」とは? なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/ 最初 から読む)

◆◆◆

夫をボーガンで殺そうとした日

 事件当日、明奈と2人の子どもたちはリビングで寝ていた。いつもは忠志も一緒に寝るが、この日は寝室のベッドに1人で寝ていた。

 早朝5時頃に目覚めたとき、明奈はそのことに気付いた。とっさに「矢を撃つには今しかないんじゃないか」と思い立った。

 迷いがあったのでビールを飲んで落ち着こうと思ったが、ますます決断を強くしただけだった。

 ボーガンを用意し、寝室に向かった。そのときに目覚まし時計が鳴ったので、慌てて引っ込めたが、忠志は寝ぼけ眼でスイッチを切り、再び寝入ってしまった。

(次の目覚ましが鳴る前にヤラなければ…)

 忠志の頭を狙って、引き金を引いた。「バン!」というすごい音がした。忠志の頭に矢は刺さらず、跳ね返されてしまった。

「イタッ!」

 忠志は上半身を起こして、頭を押さえた。

「大丈夫?」

 思わず駆け寄ると、「触るな、痛い!」と振り払われた。それと同時に恐怖が湧き上がってきた。ここまでやったら、自分が反撃されて殺されてしまうのではないか。トドメを刺さなければならない。明奈は台所に包丁を取りに行った。

 うつ伏せになっている忠志をクッションで押さえつけ、首筋に包丁を突き立てた。忠志は必死で抵抗し、明奈の手首と包丁をつかんだ。

「こんなことをしたら、子どもたちはどうすんねん。オレがここで死んだら、お前も子どもたちも不幸になるだけやんか!」

 忠志は明奈から包丁を取り上げ、説得を続けた。

「オレが死んだら殺人者になってしまう。オレが死ぬ前に自首してくれ」

 明奈は忠志にうながされて110番した。自分が夫を殺そうとしたことを正直に話した。まもなく2人の警察官が駆け付けた。忠志は自分の首を止血しながら、状況を説明した。

 明奈は殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。

裁判で見せた反省の姿「また4人で暮らしたい」

「夫の束縛や暴力、これから大丈夫なのかという経済的不安があり、夫を殺せば離れられると思い、やってしまいました」

 忠志は頭頂骨骨折や頸部刺創などで、全治2カ月の重傷を負ったが、明奈の公判に情状証人として出廷し、「妻を恨みに思う気持ちは一切ない。自分にも非があった。それを棚に上げて妻だけを責めるわけにはいかない。もう許している。出所したら、また4人で暮らしたい」と話した。

 事件後、公営住宅に入居するため、形だけの離婚をしたが、子供たちがクリスマスに「プレゼントは要らないから、ママに帰ってきて欲しい」という手紙をサンタクロースに書いたエピソードなどを披露し、これまで話し合えていなかった夫婦間のわだかまりも解くことができたので、罪を減刑してほしいと涙ながらに訴えた。

 明奈も「出所後は夫と復縁し、また4人で暮らしたいと思います」と述べた。

 これに驚いたのは裁判員や裁判官の方だった。

「明奈さん、あなたは家庭のためにもう十分やってこられたと思います。それなのに復縁したいだなんて…。私たちは理解できない」

「今までは私が一方的に不満をため込んでストレスを抱えてしまっていた。これからは同じ立場で話もできるし、暴力もないと思う」

 裁判長も次のように話した。

彼女にくだされた判決は…

「あなたは自分のことを責めてばかり。夫のことをまったく責めていない。夫の経済的な不安をどう解消するかということなんですよ。どうして今までと違って、言いたいことが言えると思うのか?」

「私も夫のことをちゃんと理解していなかった。今なら目を見て話せます。自分が言わなさすぎた。それが申し訳なかったです」

 裁判所は懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を言い渡したが、間違っても将来、立場が逆になった事件が起こらないことを願うばかりである。

(諸岡 宏樹)

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