「脚が太くても、腕がデカくても…」パワーリフティング界の女王(24)が明かした“周囲の視線”に対する“素直な心情”
文春オンライン / 2025年1月31日 11時10分
拠点のトレーニングジムで
〈 「不純な動機ですよ!」200kg超のバーベルを持ち上げる驚異の“筋肉女子”…野村優(24)がパワーリフティングを始めた“意外なきっかけ” 〉から続く
圧倒的に女性の競技人口が少ないパワーリフティング界。それだけに、競技に打ち込み続ける女性に対して、周囲から奇異の目を向けられることもあるだろう。国内最強格の女性選手である野村優さん(24)は、そうした反応をどのように捉えているのか。
競技との向き合い方、そして、女性選手だからこその切実な思いについて話を聞いた。
◆◆◆
急に体から「ブチッ!」と音が鳴って…
――真剣にスポーツに取り組まれている以上、怪我と無縁でいられないように思います。また、尋常ではない重量を持ち上げるパワーリフティングとなると、練習時から怪我のリスクが付きまとうように想像するのですが、野村さんの場合いかがでしょうか。
野村 私は腰を痛めることが多いですね。最初に怪我をしたのは高校生の時でした。当時のライバルに負けるのが悔しくて、自分にとって限界に近い重量でがむしゃらにスクワットをしていたら、急に体から「ブチッ!」と音が鳴って。筋肉の線維が千切れる筋断裂でした。
1年前にも大会前に怪我をしてしまいました。そのときは、腰の仙腸関節の靭帯損傷でしたね。治療には3~4ヶ月の期間がかかって。
――それだけ休養していると、競技のパフォーマンスに直結する筋肉がかなり落ちてしまいそうです。
野村 やっぱり満足のいくトレーニングができないので、「落ちたな……」という感じでしたね。ただ、そのときは幸いベンチプレスだけはできたんです。なので、これで上半身の筋肉はなんとか保とうと思って頑張っていると……今度は肋骨を疲労骨折してしまって(笑)。怪我のリスクとの付き合い方は難しいですよね。
「脚が太くても、腕がデカくても、いいじゃん、かっこいいじゃん」
――陸上や新体操など、女性アスリートに男性から性的な眼差しを向けられる機会が蔓延しているように感じています。野村さん自身はそうした現状をどのようにお考えでしょうか。
野村 私自身、SNSへのコメントとかに結構来ますね。内容までは覚えていませんが、強い女性にいじめてほしいような人達っているじゃないですか。失礼なことを言われたりすることはありますが、いちいち傷ついていても仕方ないのかなと思っていて。
それよりも、ポジティブにSNSを使って、パワーリフティングの魅力を発信していくのが私のやり方ですかね。
――今はどのような発信をされているのでしょうか。
野村 投稿している内容はさまざまですが、最近はずっと「脚が太くても、腕がデカくても、いいじゃん、かっこいいじゃん」っていうメッセージを女性に向けて伝えよう! という気持ちが強いですかね。
――その真意は?
「こういうかっこよさもあるよ!」という美の価値観
野村 高校生のとき、女の子はよく制服のスカートを短くしたりするじゃないですか。そのとき、「脚、太っ!」って男子から言われて、当時、思春期でもありましたし、その一言で結構傷ついたんですよね。
でも、いま、私は“脚が太い”というのも一つの美の価値観だと思っています。
もちろん、“脚が細い”っていうのも一つの美の価値観だと思うんですけど、誰もがそれに憧れて妄信してしまうと、健康の面で悪影響が出てくる可能性もあります。ボディポジティブじゃないですけど、「こういうかっこよさもあるよ!」ということを少しでも分かってくれる人が増えたらいいなと思っているんですよね。「脚が太くても、腕がデカくても、いいじゃん、かっこいいじゃん」です。ぜひ一緒にパワーリフティングを始めましょう!
――とはいえ、トレーニングジムは男性が圧倒的に多いでしょうし、パワーリフティングを始めるハードルはなかなか高そうです……。
肉体的に強くなることは女性にとって大きな自信につながる
野村 たしかに、界隈は圧倒的に男性のほうが多いですね。私の場合、競技を始めたきっかけが部活からだったので、比較的スムーズに始められましたが、ジムの門を叩くだけでも、女性にとっては相当な勇気が必要だと思います。
私が女性を対象にした大会を開催しているのも、そうした間口の狭さを少しでも解消できればという思いがあるからなんですよね。
――ライバルになる可能性もありますが、やはり女性競技者は増えてほしいですか。
野村 それは増えてほしいですよ。パワーリフティングの楽しさをわかってほしいですし、なにより肉体的に強くなることって、女性にとってすごく大きな自信につながると思うんです。
私自身、パワーリフティングを始めて肉体的な強さを得られたことで精神的にも強くなれた実感があるんです。ほかの女性にとっても、パワーリフティングは“強い女性”になるきっかけになりうるんじゃないかなと。
「服、難しいんですよ!」
――ちなみに普段の洋服選びについてもお話を聞かせてもらえますか。
野村 服、難しいんですよ! 本当にめっちゃ難しくて。袖が広がっているタイプの服を見て「これならいける!」と思って買ったものが、前腕がまず脇のところで詰まってしまったり。絶対に試着しないと買えないです。ネットで買って何回失敗したか(笑)。
あと、自分的には全然いいんですけど、ミニスカートを穿くと、どうしても「あまりにも強そうな印象になってしまって難しいな」と思うことはあります。
「脚が太くても、腕がデカくても、いいじゃん、かっこいいじゃん」というメッセージは本当に心から思っていて、広めていきたい。けど、私自身も、人目がまったく気にならないわけではない、という相反するような感情はありますね。
お寿司だったら100貫はペロッと食べられます
――選手として、最軽量時は63kg級で出場、その後は84kg級での大会出場も経験されています。体重管理は大変じゃないですか?
野村 増量は得意なんですよね。63kg級から84kg級に移したときも、半年くらいで15kg増やしました。普通に食べてたら普通に増えますから。
――たくさん食べられるのもアスリートにとっては大きな才能だとよく耳にします。野村さんは食べる力が強いんでしょうね。
野村 例えばお寿司だったら100貫はペロッと食べられますね。小さい頃からよく食べたら褒められることが多くて、中学生時代も給食のおかわりを積極的にするような子でした。はじめの頃はおかわりを要るか要らないか聞いてきていた先生も、そのうち残った給食を私の食器に無言で注いできたり(笑)。
――年頃の女の子として、その先生の行動はどう受け止めていたんでしょうか。
野村 周りの女子はほとんどおかわりしないですし、恥ずかしさがなかったわけではないですけど、嬉しい気持ちのほうが強かったですね。まず、給食が残ると困るじゃないですか。私が食べたら先生が喜びますし、私もいっぱい食べられて嬉しいし、みたいな気持ちでした。
――では、現在も特別な増量用のメニューがあるわけではない?
野村 本当は管理栄養士もつけたいですが、なかなか難しいですし、いまはそこまで厳密に管理してはいないですね。ただ、筋肉のためにタンパク質を多めに取ることは意識します。あと、なるべくクリーンなものを食べるようにしようと思っています。
――逆に減量時はどうしているのでしょう?
キツい減量も目標があればやっていける
野村 減量は難しいですよね(笑)。自分の意志だけでやってもなかなか難しいので、アプリに監視させるっていうイメージで、一日の摂取カロリーとPFCバランスを管理しています。
ただ漠然とダイエットしているだけだとキツいと思うんですけど、この試合に出場するために、という目標があればやっていけるんですよ。世界大会でアメリカに行きました。でも体重落ちませんでした。なんて事態になったら洒落にならないですからね。
記録を追求したい気持ちと、健康な身体のバランス
――減量は我慢がつきものですし、ストレスも溜まると思います。どのように対処されているんでしょうか。
野村 ストレスが溜まったとしても、性格的にイライラを人にぶつけたりすることはないのですが、高校の頃から減量を繰り返してきているからか、それこそストレスからなのか、生理が来づらくなった経験があります。
大学生の時に結構長い間来なくなってしまったことがあったんですよね。そんな経験もあって、2023年に参加した世界大会のタイミングで増量を決めました。自分の身体のサイクルが狂い始めているように感じられて、一度リセットしようと思ったのが大きな理由でしたね。
――階級制の競技である以上、記録や結果を追い求める気持ちと、健康な身体を保つバランスの難しさはありますよね。ベストな階級はどれくらいになるんでしょうか?
野村 日常的な生活を考えると、ちょうどいまくらいの69kgがベストかなと思っています。ただし、世界で戦うなら63kg級に出場しないと厳しいので減量中ですね。
たしかに、どうしてもアスリートとして記録を追求していきたい気持ちと、健康な身体をどのようにして保つかのバランスは難しいなと思いながら、今後もうまく付き合っていきたい、いければと思っています。
(「文春オンライン」編集部)
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