「仕事を早退して駆けつけたらニュースに映ってしまって…」猫たちがのびのびと暮らす「猫の島」で起きた“痛ましい出来事”とは
文春オンライン / 2025年1月17日 18時0分
サラ・ジェイン・ポルテッリ監督
ここは地中海に浮かぶマルタ島。首都ヴァレッタや巨石神殿群などの世界遺産をはじめとした歴史文化遺跡と、燦々と輝く太陽と美しいビーチに恵まれた島国は、そして――「猫の島」でもあった。
サラ・ジェイン・ポルテッリ監督の映画『ねこしま』は、マルタで共に生きる野良猫と人間の姿を追うドキュメンタリーだ。はじまりは2020年。コロナ禍が世界を覆おうとする頃、オーストラリアからこの地に移り住んだポルテッリさんは、街のいたるところでのびのびと暮らす猫に釘づけになり、カメラを向けた。場所は、マルタ島の北東海岸沿いの港町スリーマにあるインデペンデンス・ガーデン、通称“猫の公園”だった。
「猫を撮りためながら、公園内にある巨大な猫像『アタス』を制作したアーティストのマシュー・パンドルフィーノさんに会いに行ったりもしました。でも、脚本があるわけではなく、ドキュメンタリーとして何を撮りたいのか私自身わかりませんでした。何も得られないかもしれないと恐れながらも続けていると、猫をケアする人たちのコミュニティが徐々に見えてきました。彼らは知り合いで、互いのやっていることを理解し、時に協力し合う。なぜそんなコミュニティが広がっているのか不思議で。猫が繋いでいる人々の線を辿ってみることにしたんです」
まず、猫に会いに行こうと思った。SNSを駆使して情報を集める。とりわけ惹かれた猫は「ボブ」。映画『ボブという名の猫』から名づけられたが、地域猫なので世話する人が様々な名前で呼ぶ。
「私はキングと呼んでいました。高貴な美しい佇まいで、人なつこくて人気でしたね。でもその出自は謎なんです。猫は話してくれませんからね(笑)。次第に、猫の代わりに話してくれる人に会いにいくようになったんです」
野良猫たちの憩いの場「猫の村」の管理人、ローザ・Z・サリノスさんはそのひとり。出会った年に因む名前をつけて猫を世話していたが、「この映画で最も痛ましい話」とポルテッリさんは眉根を寄せる。
「そこは商業施設の建設予定地で、廃村の危機にありました。ローザさんは10年にわたって建設反対運動を続けていた。取材するうち、『猫が追い出されているわ』『明日解体される』などと逐一通報が来るようになり、私自身がジャーナリストのようにこの問題を追うようになりました。居ても立っても居られず、仕事を早退して現場に駆けつけたところがニュース映像に映ってしまったことも……」
撮影インタビューに1年、追加取材をしつつ編集に1年。その間、映像のおかげで、行方不明になった猫の捜索に一役買ったこともある。ポルテッリさん自身、猫の繋ぐコミュニティの一員となっていく。
〈パイロットになって稼いで猫の楽園を作る〉。そう意気込んでいたのはアイザック・ムスカット君。撮影当時、13歳、マルタ最年少の愛猫活動家だった。
「彼は野良猫たちに去勢手術を受けさせるため、ちゃんとしたトラップを仕掛けて猫を保護する活動をしていました。トラップの購入など活動資金は、学校や子どもたちが寄付してくれて。彼は、これからのマルタの猫文化を担う、一番の期待の星ですが、同時に、多くの人々の協力が欠かせないこともわかりました」
人が猫を愛する理由。猫は〈愛を教えてくれる。寿命も延ばしてくれる。命をくれるの〉とローザさんは語る。
「この映画を通じ、いかに猫が人に寄り添いケアしてくれるかを再認識しました。忍耐と愛を教えてくれるだけでなく、心を穏やかにもしてくれる。猫があなたの人生をきっと強くしてくれる存在だとわかっていただけるでしょう」
Sarah Jayne Portelli/オーストラリア生まれ。2016年、短編映画『Daughter』を監督し、高い評価を受けた。監督作品に『Friends, Foes & Fireworks』『In Corpore』『Machination』『No Woman Is an Island』などがある(いずれも日本未公開)。本作で2023年ファウナ・テポストラン・アニマル・フェスティバル最優秀猫映画賞などを受賞。
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映画『ねこしま』(公開中)
https://catsofmalta-movie.com/
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年1月23日号)
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