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〈背任の疑いで逮捕〉東京女子医大の女帝(75)が元タカラジェンヌ親族企業に1億円超支出の“公私混同”

文春オンライン / 2025年1月16日 17時0分

〈背任の疑いで逮捕〉東京女子医大の女帝(75)が元タカラジェンヌ親族企業に1億円超支出の“公私混同”

至誠会第二病院(筆者撮影)

〈 〈背任の疑いで逮捕〉「いつ事故が起きても不思議ではない」名門・東京女子医大で看護師らの大量退職…理事長“女カルロス・ゴーン”の「疑惑のカネ」 〉から続く

 2025年1月13日、東京女子医科大学の元理事長、岩本絹子(78)が、大学から建築士に不正な報酬を支払わせて損害を与えたとして背任の疑いで逮捕された。

「週刊文春」では、内部資料を入手し、岩本容疑者の公私混同、そして元宝塚スター親族企業らが関係する「疑惑のカネ」を徹底追及してきた。以下、当時の記事を再公開する。(全3回の2回目。 続き を読む)

※週刊文春2022年4月28日号(4月21日発売)に掲載された記事に、取材を追加して再構成(2022年7月19日配信分/年齢・肩書きは当時のまま)

◆◆◆

【疑惑のカネ1】直轄組織で水増し・架空請求の疑い

「教授より2倍以上も給与が高い、出向の事務職員がいるらしい——」

 学内で広まっていた都市伝説のような話に、“第一の疑惑”が隠されていた。

  2014年、岩本氏は東京女子医科大学の副理事長になった際、直轄の「経営統括部」を新設した。これによって、カネ・ヒト・モノ・情報の全てを岩本氏が掌握する体制を作ったのである。

 翌年からその経営統括部に、自身が会長を務める至誠会(同窓会)が運営する至誠会第二病院から職員を出向させた。年間最大6人で、19年までの5年間の人件費総額は、実に約2.5億円にのぼる。経営統括部の実状を知る元職員は、当時をこう振り返る。

「出向職員の仕事は、岩本先生の秘書業務と経理業務などでした。元々、女子医大の職員が足りていなかった訳ではないので、本当に彼らが必要だったのか、疑問に感じました」

 問題なのは、彼らの給与額である。「至誠会出向者給与戻し入れ 出金票」によると、最も高給な職員には月額150万円が支払われていた(金額は税込、以下同)。一般事務職でありながら、教授クラスの2倍近い破格の待遇である。

 この職員は、岩本氏の右腕として長年仕えている人物だという。他の職員も120万円、90万円と高給を得ている。経営再建中だった女子医大としては、随分と大盤振る舞いだ。

 調べていくと、出向職員の給与には、巧妙なカラクリが隠されていたことが判明する。

消えた差額の「月100万円」と架空のボーナス支払い記録

「女子医大が至誠会に払っていた高額な給与額と実際に出向職員に支給された金額には、大きな開きがありました」

 こう証言したのは、元出向職員のAさんである。その証拠として、至誠会から給与が振り込まれた銀行通帳を筆者に見せてくれた(下部画像を参照)。

 Aさんの場合、女子医大は至誠会に月額120万円を支払っていたが(19年4月~9月分)、至誠会からAさんに支給されたのは、月額約20万円から40万円。つまり、最大月100万円の差額分が、どこかへ「消えていた」のだ。

 また、女子医大は至誠会に対して、出向職員の夏のボーナスとして18年は807万円(6人分合計)、19年は855万円(同)を支払っていた記録がある。だが、Aさんの銀行通帳にボーナスの入金は見当たらない。

「私にボーナスが出たことになっていると聞き、本当に驚きました。一円も受け取っていませんので。他の出向職員にも聞いてみましたが、やはりボーナスは貰っていないと言っていました」(Aさん)

 さらに、複数の関係者からは、次のような証言も得た。

「経営統括部に、出向職員が6人いた時期はありません。実際は2人から3人でした」

 つまり、勤務していない出向職員の分まで“架空請求”された可能性がある。普通なら考えられないケースだが、岩本理事長直轄の組織なので、誰も口出しができなかったという。

女子医大と至誠会が交わした「給与等に関する覚書」の意味

 そこで、岩本氏にインタビューを申し込んだが、取材拒否。文書での質問状には、岩本氏個人の代理人になった弁護士から、次の回答が返ってきた。

「出向契約に基づき支払った金額が、出向元でどのように処理されているかについては、本学としては把握するものではありません。架空請求といった概念が生じる余地はありません」(要約、以下同)

 その後、新たに女子医大と至誠会が交わした「給与等に関する覚書」が存在することが判明した。覚書には、女子医大が出向職員に支払う給与額について“両者が合意”していることが記録されている。にもかかわらず、実際に支給された金額と、最大100万円の開きがあるのは不自然だ。

 しかも、この覚書には「ボーナス分も含めて毎月の給与額とする」と明記されていた。つまり18年と19年に合計1662万円も女子医大が支払ったボーナスは、契約上はありえないものだったのだ。

 そもそも、出向職員の給与を出す女子医大と受け取る側の至誠会、この両方のトップを岩本氏が務めている。これは私立学校法で禁じている、「理事の利益相反取引」にあたる可能性が高い。

【疑惑のカネ2】元宝塚スター親族企業に1億円“公私混同の契約”か

 宝塚歌劇団で主役を務めるトップスターには、並外れた経済力で支えるパトロン=通称「おばさま」が存在する。実は、月組の元トップ・彩輝直の「おばさま」は岩本氏だった。

 “第二の疑惑”は、この元タカラジェンヌ親族企業との公私混同の契約である。

 前述の“第一の疑惑”の舞台となった、至誠会から女子医大への出向契約について、女子医大の監事(弁護士)から「委託の色彩が強いのではないか」との指摘があったとされる。これを受けて、2020年から出向契約を業務委託契約に切り替えることになった。だがその際に、契約先は至誠会ではなく、株式会社ケネス&セルジオ(以下、ケネス社)という会社に、すり替えられていたのである。

 女子医大とケネス社の「業務委託基本契約書」によると、契約期間は2020年4月1日から22年12月31日とある。経営統括部の業務支援、理事長秘書業務全般として、報酬は月額385万円。21年3月からは岩本氏の専属運転手の費用が加わり、月額451万円になった。今年4月分までに、ケネス社に支払われた報酬総額は、実に1億円を超える。女子医大では、年間1000万円以上の契約は理事会運営会議の承認が必要だが、この会議に出席していた元理事はこう証言する。

「至誠会の出向契約を業務委託に切り替える稟議は、よく覚えています。岩本理事長が、まくし立てるように話していたのが印象的だったからです。ただ、この時にケネス社という名前は出ていませんでしたので、(取材を受ける)今まで私は知りませんでした」

 さらに、ケネス社と契約するには稟議書が必要になるが、この書類もなかったという。

ケネス社代表取締役の妻は元タカラジェンヌ・彩那音

 ケネス社の設立は、2012年。登記簿の「目的」欄に記されているのは、不動産売買、コンピュータシステムの企画、芸能タレントの育成・マネジメントなどが占める。病院運営とは縁遠い業種にみえるが、女子医大との接点はどこにあるのだろうか。

 取材の結果、同社代表取締役B氏の妻は、元タカラジェンヌの彩那音(あやなおと)と判明した。長年に渡って岩本理事長が贔屓にしている、元月組トップ・彩輝直(あやきなお)の実妹である(※ #1 を参照)。

 つまり、岩本氏は、プライベートで親交が深い女優の親族企業と1億円超の取引をしていたことになる。

専属運転手として契約した甥の報酬は月額66万円

   岩本理事長の公私混同ぶりは、これだけではない。ケネス社と契約した専属運転手は、彼女の甥だと判明した。「出金票」によると甥の報酬は、月額66万円。女子医大では准教授クラスの給与にあたる。

 不可解なのは、ケネス社に契約を変更した後も、働く職員は以前に至誠会から出向していた人間と同じという点。その1人は、至誠会第二病院に事務長として勤務している。

 東京・世田谷にあるケネス社を訪ねてみると、広い敷地に立つ瀟洒な一般住宅だった。インターフォンで来訪の目的を告げると、同社の関係者が現れたが、何も話せないという。

 岩本理事長の代理人からは、次のように回答があった。

「知人の会社に委託しただけです。通常の取引であり、特段問題はないと思料いたします。ケネス社との業務委託契約締結に係る稟議書自体はありませんが、承認は得ております。(※月額66万円の報酬について)外注であり、本学の基準で報酬を支払っていません。業務として高額ではありません」

 正当性を主張する一方で、女子医大は、ケネス社との契約に関する稟議書自体がないことを認めた。では、理事会でどのように「承認」を得たのだろうか。なお、理事会の議事録にも同社の名前は記載されていない。疑惑は深まるばかりである。( #3 に続く)

〈 〈背任の疑いで逮捕〉「疑惑のカネ」を告発した職員を懲戒解雇 東京女子医大内部監査室は「まるで秘密警察」 〉へ続く

(岩澤 倫彦/Webオリジナル(特集班))

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