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小松左京原作、藤岡弘、で見せる超能力スパイ「エスパイ」の激闘!――春日太一の木曜邦画劇場

文春オンライン / 2025年1月21日 17時0分

小松左京原作、藤岡弘、で見せる超能力スパイ「エスパイ」の激闘!――春日太一の木曜邦画劇場

1974年(94分)/東宝/7480円(BD版・税込/写真はDVD版2750円・税込)

 旧作においても配信での映画鑑賞が主流になってきた昨今、映画館だけでなくDVDやBlu-rayなどのソフト販売も厳しい状況にある。

 ただ、そうした中にあっても各レーベルはむしろ積極的に旧作のソフト化を進めている。中でも野心的なパッケージを出し続けているのが、東宝とKADOKAWAだ。

 配信がこれだけ充実している上に消費者の可処分所得も限られている。そうなると、多くのソフトは熱心なファン向けの、コレクターズアイテムとして生き残っていくしかない。この二社はそこを熟知して商品化。画質はもちろん、さまざまな資料や充実した解説書を特典とし、マニアが喜ぶパッケージを提供している。

 東宝は二〇二三年末に公開五十周年として『日本沈没』のBlu-rayを発売した。この時は公開当時のパンフレットやロビーカードに加え、撮影時に使われた台本を封入。日本列島が天災によって沈み込んでいく様を橋本忍が描写した、ド迫力な筆致を存分に堪能することができる。

 そして、昨年末にBlu-rayが発売されたのが、今回取り上げる『エスパイ』だ。

『日本沈没』に続いて原作は小松左京、主演は藤岡弘、で製作された本作では、冷戦下の国際的な対立関係を軸に、超能力を操るスパイ=エスパイたちの激闘が描かれている。

 世界平和のために結成された組織の日本支部長である法条(加山雄三)をリーダーとするチームは、テレポーテーションの使い手・田村(藤岡)、テレパシーの使い手・原田(由美かおる)、念動力の使い手・三木(草刈正雄)で構成、その能力を戦争遂行のために使う巽(内田勝正)ら「逆エスパイ」に挑んでいく。

 この設定だと大スケールのSFアクションを期待したくなるところだ。が、この時期の東宝作品らしく全体のテンポは緩く、雰囲気は暗く、チープさも目立つし、エスパイの活躍も前半は長いこと映されない。そのため、その期待には沿えているとは言えない。

 ただ、それでも見どころはタップリある。尾崎紀世彦が歌う平尾昌晃作曲の主題歌や、敵に洗脳された由美かおるが中東風の音楽に合わせて妖艶に踊る場面などの醸し出す、エキゾチックなムード。そしてなんといっても敵の首領を演じる若山富三郎の、他を圧倒する恐怖を漂わすニヒルさ――。一九七〇年代前半の日本映画特有のカオスが好きな者には、たまらない内容だ。

 そして、Blu-ray特典の解説書には藤岡、由美、草刈のインタビューが掲載。彼らが苦心しながら作品に向き合った様が垣間見られる。由美の美麗なスチール写真も多数あり、これはオススメだ。

(春日 太一/週刊文春 2025年1月23日号)

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