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「卒業して疎遠になった…」それでも学生時代の友達を友達と言える理由

文春オンライン / 2025年1月23日 6時0分

「卒業して疎遠になった…」それでも学生時代の友達を友達と言える理由

 あなたにとって、友達とは?

 こう聞かれた時、あなたはどう答えるだろうか。話があって一緒にいると楽しくなれる人? 気を使わずに自分らしくいられる相手? 人によってさまざまな定義があると思うが、とりわけ“学生時代の友達”は不思議な存在だ。

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 その当時はどんなに仲が良かったとしても、ライフステージの変化によって全く会わなくなることもある。仮に会ったとしても学生時代と社会人では価値観はおろか、性格だって変化するため、結果的に話が全く合わずに疎遠になってしまうことだってある。大人になってから新しく友達を作ることと同じくらい、学生時代の友人と友達で居続けることが難しいように感じる。

 そんな年を重ねるごとに複雑に感じてしまう“友達”をタイトルに冠した 『佐々田は友達』の最終巻 が1月23日に発売された。主人公は、アイデンティティの揺らぎを覚える高校2年生の佐々田絵美。学校では一人静かに過ごすのが好きな佐々田だが、ある日突然クラスの陽キャ・高橋優希にロックオンされるところから物語が始まる。

 教室の一番遠くにいた2人は、(マンガなのに)マンガのような奇跡的な絆や感動的な友情を育むこともなく、付かず離れずの絶妙な距離感を歩む……。そんな人間関係のリアルな体温を帯びた本作が描くのは青春時代の特有の光と影だけではない。人と関わることで自身が形成されていく、自己成長や変容の過程までも見事に描き、宝島社「このマンガがすごい!2025」ではオンナ編11位にランクインするなど大きな注目を集めている。

“友達”という言葉

 最終巻では、高校生活の思い出作りに映画制作に励む話、生徒会長に立候補し選挙戦に奮闘する優希の姿、そして高校を卒業し大人になったみんなの今の姿が描かれている。高校生活最後の輝きから現在地がゆるやかに繋がっていくような、まるでタイムカプセルを開けた時のようなむず痒さと、加えて冒頭で投げかけた「友達ってなんだろう」という問いへのアンサーが詰まっている一冊だった。

 教室でも、社会でも、私たちはすぐに人をラベリングしてしまう。でも、そんなラベルを取っ払い“違う”相手と対峙するからこそ、自分が形成されていくことが他者と関わることの本質ではなかったか。

 そして“友達”であることには、「友達だよね」と口に出して承認し合う必要もないのだ。今現在交流があろうとなかろうと、過去を振り返った時に共有できる、一瞬の輝きさえあれば、“友達”なのだ。歳を重ねるにつれて臆病になりがちな私たちに『佐々田は友達』という物語はこう語り掛け、光を与えてくれる。

 これから先、友達という言葉に対してざらついた感情を抱いてしまう時、私はきっと佐々田や優希と同じように静かにあの一瞬に思いを馳せるだろう。そして、確かにそこにあった友達の存在を確認し、2人のようにどこか誇らしげにニヤッと笑うと思う。

(ちゃんめい/文春コミック)

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