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「僕の体は筒井さんで出来ている」映画『敵』の吉田大八監督が原作者・筒井康隆と念願の初対面で語ったこと

文春オンライン / 2025年1月17日 17時0分

「僕の体は筒井さんで出来ている」映画『敵』の吉田大八監督が原作者・筒井康隆と念願の初対面で語ったこと

ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA

〈 「なるほど、言いえて妙だなと思いましたよ」長塚京三が最新主演作『敵』のタイトルに“納得した理由” 〉から続く

 日本文学界の巨人・筒井康隆の同名小説を『桐島、部活やめるってよ』『騙し絵の牙』の監督・吉田大八が映画化した新作映画『 敵 』が、2025年1月17日(金)より全国公開されました。

 本作の主演には、『ザ・中学教師』(92)で初主演を飾り、『ひき逃げファミリー』(92)で第47回毎日映画コンクール男優主演賞、『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』(97)で第21回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど、1974年にフランスで俳優デビューしてから実に50年、名優として日本映画、ドラマ、舞台の歴史に名を刻んできた長塚京三。2013年公開の『ひまわり~沖縄は忘れない あの日の空を~』以来、12年ぶりの主演映画となる。

 “理想の上司像”の印象も強い長塚が、本作では元大学教授・渡辺儀助を演じ、人生の最期に向かって生きる人間の恐怖と喜び、おかしみを同時に表現する。清楚にして妖艶な魅力をもつ大学の教え子には瀧内公美、亡くなってなお儀助の心を支配する妻役には黒沢あすか、バーで出会い儀助を翻弄する謎めいた大学生には河合優実。そのほか松尾諭、松尾貴史、カトウシンスケ、中島歩ら実力派俳優陣が脇を固める。

 小説「虚人たち」で泉鏡花文学賞を、「夢の木坂分岐点」で谷崎潤一郎賞、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞を受賞するなど受賞歴多数、「時をかける少女」等でも知られる原作の筒井康隆。文壇・メディアとの戦いを経て、生き抜いてきた自身が描く老人文学の決定版である「敵」。今回の映画化にあたり吉田監督は「自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました。」と自身の新境地を見せる。

 また本作は、第37回東京国際映画祭にて、東京グランプリ/最優秀男優賞/最優秀監督賞の三冠を達成!さらに、11月に行われた台北金馬映画祭のWindows On Asia 部門」に選出、12月には上海国際映画祭の「Japanese Week」に招待され、先日発表された、第18回アジア・フィルム・アワードでは、作品賞/監督賞/主演男優賞ほか6部門へのノミネートの快挙!国内外で絶賛の渦を巻き起こしている。

筒井作品を長年愛読してきた吉田監督

 今回吉田大八監督によって映画化され、現代老人文学の最高峰と言われる『敵』の原作・筒井康隆の著作には、「パプリカ」、「時をかける少女」、「七瀬ふたたび」などの大人気SFから、「わたしのグランパ」などの人間ドラマ、「文学部唯野教授」のようなポストモダンを笑い飛ばす知的野心作まで、幅広いジャンルが存在し、それぞれが映像化され話題になってきた。中でも「時をかける少女」は、実写・アニメと9度に渡って映像化され、今なお幅広い世代から支持を集めている。

 そんな筒井康隆作品の中における『敵』という作品について、筒井作品を長年愛読してきた吉田監督は「驚異的な解像度で生活のディテールがひとつひとつ綴られていく、普通に心地よい前半———主人公・渡辺儀助の静かな日常———が次第に侵食され、後半にかけて儀助の記憶がカオスのまま家中へ放たれていく、ダイナミックな展開がやっぱり大好きでした。そういう、丁寧に積み上げた世界を一気にぶっ壊す“筒井的カタルシス”は、昔からの愛読者だった僕の基本的志向に多分なっています。」とその魅力を語る。

 さらに「『敵』にも共通する筒井さんの匂いはこれまでの作品へも自然に滲み出していたことは自覚している」と自身への筒井康隆作品の影響についても明言する。

 この度、映画化を実現させた吉田大八監督が原作者の筒井康隆とついに対面。完成した作品を観た筒井は「傑作!」と絶賛。全編モノクロの映像についても「モノクロームの方がいい。カラーでは考えられない。」と断言する。

 今「敵」が映画化されたことについては、「映画化については当時否定的になりがちだったんですよね。こんなものは映画になるわけがないとかね。あの頃はそういう風に思っていたんだけれども、よく考えてみれば逆に、だからこそ映画になりやすいんじゃないかと、映画化に最適な作品ではないかと今ではそう思っています。」と胸の内を明かす。

筒井にとって70代は「全然年寄りだと思ってなかった」

 原作の同名小説「敵」は老齢文学の傑作といわれるが、当時64歳で「老い」がテーマの作品を書いたことについて筒井は「年をとるのが怖かったからでしょうね、年をとったらどうなるんだろうと思って。なんか今よりももっとみみっちくなってしまうんじゃないかとか、不細工になるんじゃないかと 色々考えた」と振り返る。主人公の儀助は原作でも映画でも70代の設定。

 しかしながら、筒井にとって70代は「全然年寄りだと思ってなかった」という。その上で、「(年寄りだと)思い始めたのはやっぱり80過ぎてから。それでも別に若い時と何にも変わることはないからね。若い時と同じように飲めるわ、歩き回れるわ、金は入ってくるわ、同じことですね。」と振り返る。それが昨年春、89歳の時に頸椎を痛めて車いす生活に。「一瞬にしてこれ(体)になって、そこから一気に年寄りになっちゃった。だからまだ年寄りになってから1年しか経ってない(笑)」と話す。

 また、「僕の体は筒井さんで出来ているほどファン」と語っている吉田監督に対して筒井は、「喜劇、あるいは笑いというものをどういう風に考えてらっしゃるかを伺いたかった。」と吉田監督に質問。吉田監督は「(筒井が映画『敵』のビジュアルをみて)さっき長塚さんが怖いとおっしゃってましたね。確かにこのビジュアルだと確かにそうなんだろう。だからこそ、そういう人が女性に対してちょっと無様なことになったり、面白いことになったりするのは、僕は自分でも見るたびに笑ってしまいます。こういう人の心の内が1番笑えるというか。こういう人であればあるほどという風に思ってました。」と吉田監督の考える喜劇、笑いについて語る。

もし20年前に「敵」の映画化が決まっていたら……?

 最後に吉田監督から、もし20年前に「敵」の映画化が決まり、主演のオファーをさせて頂いていたらどうしていたと思うか、と聞かれると「言ってきてくれるのは嬉しいけれども、いや~やってないかな。僕にとっては演じる楽しさみたいなのがないかな。やっぱり僕はドタバタがいいね。」と回答。

 実際に会うのは初の二人だが、“敵”を通じて相思相愛。「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた」と原作者・筒井康隆も太鼓判を押す、全編モノクロームの世界で、虚構と現実の狭間に没入する映画体験をぜひ劇場で楽しんでほしい。

<物語>
渡辺儀助、77歳。
大学教授の職を辞して10年―妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋に暮らしている。料理は自分でつくり、晩酌を楽しみ、多くの友人たちとは疎遠になったが、気の置けない僅かな友人と酒を飲み交わし、時には教え子を招いてディナーを振る舞う。預貯金が後何年持つか、すなわち自身が後何年生きられるかを計算しながら、来るべき日に向かって日常は完璧に平和に過ぎていく。遺言書も書いてある。もうやり残したことはない。だがそんなある日、書斎の iMacの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくる。
<クレジット>
長塚京三
瀧内公美 河合優実 黒沢あすか 中島歩 カトウシンスケ 髙畑遊 二瓶鮫一 髙橋洋 唯野未歩子 戸田昌宏 松永大輔 松尾諭 松尾貴史
脚本・監督:吉田大八 原作:筒井康隆『敵』(新潮文庫刊)
企画・プロデュース:小澤祐治

プロデューサー:江守徹 撮影:四宮秀俊 照明:秋山恵二郎 美術:富田麻友美 装飾:羽場しおり 録音:伊豆田廉明 編集:曽根俊一 サウンドデザイン:浅梨なおこ 衣裳:宮本茉莉  ヘアメイク:酒井夢月 フードスタイリスト:飯島奈美 助監督:松尾崇  キャスティング:田端利江 アクション:小原剛 ガンエフェクト:納富貴久男 ロケーションコーディネーター:鈴木和晶 音楽:千葉広樹 音楽プロデューサー:濱野睦美  VFX スーパーバイザー:白石哲也 制作プロデューサー:石塚正悟 アシスタントプロデューサー:坂田航
企画・製作:ギークピクチュアズ 制作プロダクション:ギークサイト
宣伝・配給:ハピネットファントム・スタジオ/ギークピクチュアズ
製作:「敵」製作委員会
©1998 筒井康隆/新潮社 ©2023 TEKINOMIKATA
公式サイト: https://happinet-phantom.com/teki 公式 X: https://x.com/teki_movie

(週刊文春CINEMAオンライン編集部)

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