「10億人産んでる国だから大丈夫だろうって」プロの料理人のファンも多い大人気中華料理愛好家・酒徒さんが、家族とともに再び中国に住みたい理由
文春オンライン / 2025年2月8日 11時0分
![「10億人産んでる国だから大丈夫だろうって」プロの料理人のファンも多い大人気中華料理愛好家・酒徒さんが、家族とともに再び中国に住みたい理由](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_76333_0-small.jpg)
酒徒さんにとって北京は中国で最も思い入れの強い都市だという 『中華満腹大航海』(KADOKAWA)より
〈 外食の“町中華”でも“ガチ中華”でもない…レシピ本大賞W受賞『あたらしい家中華』が大ヒットの深いワケ 〉から続く
中華料理の多様性に魅了されて約30年。「本場中国の味が伝わるなら」というぶれない意志と、「食べたい、調べたい、書きたい」の長年のリズムで流れるように前進し続ける酒徒さん。
新刊の食紀行『中華満腹大航海』(KADOKAWA)発売を受け、北京、広州、上海と、10年にわたる駐在時代の家族とのエピソードと、趣味の飲酒と健康のこと、これからの活動の展望を伺った。(全2回の2回目/ #1を読む )
◆ ◆ ◆
妻と中華料理を一緒に食べ歩く
――ご新刊のなかの、2000年代のエピソードに、「連れ(いまの妻です)」という文言がありました。初期の頃からご一緒に?
酒徒さん(以下、酒徒) 知り合ったのは、大学時代に北京へ短期留学したときです。何十年前なんだって話ですけど、向こうも中国語を勉強していまして、その後、10年間の駐在時代もずっと一緒でした。
――すごくいいなあと思ったのは、奥さまも中華料理に愛を持って、好奇心旺盛に一緒に食べ歩かれているご様子が、(食に比べると)少ない描写のなかから伝わってきて。
酒徒 我々を結びつけているのは食への興味、その一点というところがありまして。最初に(ふたりで中国に)行ったばかりのころは、朝・昼・晩すべて中華料理という生活を、それこそ1~2年ずっと続けていたんですけど、ふたりともそれがぜんぜん苦にならないというか、むしろもっと食べようというタイプだったので、今回の本を書けたのも、そういう生活ができる相手がいたからだと思います。
現在8歳の息子の出産は中国で
――息子さんは、現在8歳とのこと。中国で出産されたのでしょうか。
酒徒 はい、前回上海に住んでいたときですね。
――現地でのご出産は大変だったのでは?
酒徒 僕もそう思ったんですけどね。意外と相手(妻)のほうが平気で、別に言葉通じるし大丈夫でしょう、10億人産んでる国なんだし、みたいな。そんなノリでした。
――医師とのやりとりも中国語で?
酒徒 はい、そうですね。すでに現地に長く暮らしていましたので、ふつうの人が想像するような不安やストレスを感じることもなく、ぶじ出産を終えることができました。
――じつは、今回同席している編集者も私も、親の仕事の関係で幼少期に中国に住んでいた時期がありまして。
酒徒 えっ、そうなんですか。それは珍しいですね(うれしそうに)。
――編集者のほうは90年代半ばから北京と上海に、私はもっと前で、80年代後半に。
酒徒 おおおお、その時期ですか。
パックで売られていない肉の迫力
――私の場合は、日本人学校のない地方都市に住んでいまして、近所にスーパーもなくて、市場でふつうに生きた鶏を買って絞めて料理をするといった環境だったので、家に料理人さんが来てくれていて。
台所で歩いていたすっぽんがスープになって出てくるとか、子どもの経験値として何を食べてもおいしくて、それから好き嫌いがなくなって食べることがすごく好きになって。
酒徒 いま、すごくうらやましいなって思って聞いています。
――時代は違っても、そういう肌感覚がすべて、ご新刊に書かれていて、酒徒さんの中国の食と文化に対する優しさが詰まっているなと思いました。
酒徒 あはは、そうですか。僕も中国の人たちが市場に買い物に行って、生きた食材を買って、自分たちの手で料理をするというところに、パワフルさと食へのエネルギーみたいなものを感じていて。パックで売られていない肉の迫力みたいなものは、いまでも好きですね。
いまは生きた鶏自体を市場で売らない地域も多くなっていますが、広州に住んでいたときは、生きた鶏を捌いて毛をむしるところまではお店の人にやってもらって、丸鶏のまま持って帰って料理していました。
「はしご酒ダイエットで2年で20キロ減」
――あの、20キロ太られたというのは、中国に駐在されていたときですか? 酒徒さんのSNSに「はしご酒ダイエットで2年で20キロ減」とありましたが。
酒徒 太ったのは、2019年に帰国してから、コロナのストレス太りですね。中国にいるときは、あんまり太らないんですよ、逆に。
――あれだけ食べ歩かれて、なぜでしょう。
酒徒 なんででしょうね。日本での中華料理のイメージがチャーハン、餃子、ラーメンなどの一部の料理に偏っているんだと思うんですけど、基本的に中国の人たちはものすごく野菜を摂りますし、献立もうまく組み立てるんです。日本でサラダとか食べるよりも何倍もの野菜を、毎食摂っているようなイメージです。油もわるものにされがちですけど、適度な油はお通じをよくしたり、野菜をたっぷり食べるための道具のようなところもあるので、みなさんが思っているほど重いものではない。
――なるほど。
酒徒 「はしご酒ダイエット」というキャッチをつけましたけど、基本的に僕はお酒がない食事に興味がないので、仕事がある日は朝と昼の食事をほぼ省いて、「リングフィット アドベンチャー」(Nintendo Switchのフィットネスソフト)を家でやってたんですよ。続ける工夫としては、成果=体重を記録していくと、ちょっと食べすぎて太っちゃったときも歯止めがきいて、これがけっこうよかったなと思いますね。あと、ストレスをためると続かないので、お酒はいっさい我慢しない。それでみるみる痩せました。なんかうそくさいですし、他の人にはまったくオススメしないです(笑)。
胃袋が元気なうちに、もう一度中国生活をしてみたい
――ご活動について、これからの展望はありますか?
酒徒 あらためてインプットしたいなという気持ちが、ちょっとずつ膨らんでいるところです。
レシピ本の出版もそうですが、これまで自分がやってきたことをアウトプットする活動がすごく多くて、今回の食紀行を出したことで、けっこう整理がついたなという思いがあってですね。帰国してから6年、コロナで中国に行けない状態が続いて、これだけ長い期間中国に行かなかったことって、今までないんですよ。
とくに自分がいま40代後半なので、胃袋が元気なうちに、家族みんなで楽しめるうちに、もう一回中国生活をしてみたいなという気持ちはあります。
――また中国に赴任したいですか?
酒徒 したいですね。
――ふたたび赴任することが決まったら、息子さんにはどうやって伝えますか?
酒徒 中国にはこんなおいしいものがあるよとか、両親でいろいろプレゼンしたいと思います。
――息子さんは3歳まで中国に。
酒徒 具体的な記憶は正直ないでしょうけど、自分は上海生まれだっていうことは、ちゃんと認識していて、心理的な壁はあんまりないんじゃないかな、とは想像しています。
地方で「なにこれ、なにこの食材」とわくわくしたい
――現地でやってみたいことはありますか?
酒徒 やっぱり地方旅行したいですよね。家族でいろんなところを飛び回りたいです。自分が食べたことがあるものを、子どもと一緒に体験したいという気持ちもありますし、僕らも行ったことがない場所へ行って、全員で「なにこれ、なにこの食材」みたいな感じでわくわくしたいっていう気持ちもあります。
――次に中国に行かれたら、最初に食べたいものは、何が思い浮かびます?
酒徒 それがねえ、選べないですよねえ、多すぎてね。とりあえず自分のブログを見返して、片っ端から食べていくんでしょうけどね。これだ、これだ、って言いながら(笑)。
北京は好きなので、北京には行きたいな(つぶやくように)。
――上海だったらどうですか?
酒徒 お昼ごはんには、ツォンヨウバンミエン(葱油拌麺)は絶対食べるかな。
いまや自分でもつくりますけど、あれは多分、最初の数日以内に食べに行くと思います。寒い時期だったら、山羊の鍋とかね。上海では冬によく食べられるんですけど、後輩を誘って行きたいですね。
サラリーマン生活を手放し、食の世界への転身は…
――サラリーマン生活を手放して、食の世界に転身されるおつもりは?
酒徒 それで食っていけると思うほど、甘い考えは持っていません(笑)。
――お仕事を受ける、受けないの基準はありますか。
酒徒 プロの料理人の方みたいに明確な基準があるわけではないんですけれども、料理の仕事を受けるのであれば、本場の中華料理をそのままお伝えしたいっていうのが常にコンセプトなので、それができるかできないか、ですね。
要は向こうで知ったもの、おいしいと思ったものを、そのままお伝えするというところでしか、プロでもない素人の僕の存在価値はないと思っていて。
――酒徒さんが思われる、「本場の中華料理」とは、どういうものでしょう。
酒徒 単純に言えば、本場の人がふだん食べているものなんですけれども。
そのなかでも、どちらかというと今風の創作とか、高級食材を使った料理ではなくて、中国各地でそれぞれ昔から食べられていた、あまり気取りのない料理が自分の好みです。今後もなにか発信をするなら、そういう料理のおいしさを語っていきたいですね。
◆
酒徒(しゅと)/1970年代、埼玉県生まれ。大学1年生のとき、友人たちと初めて訪れた中国で口にした現地の料理に魅了され、中国各地の食べ歩きをライフワークに。大学卒業後、現地での語学留学を経て、北京・広州・上海に合計10年駐在。2019年に帰国後、noteの「おうちで中華」マガジンで、「本場で知った素人でも手軽につくれる中華料理」のレシピを好奇心旺盛に続々公開し、注目を集める。2023年10月に発行された初のレシピ本『あたらしい家中華』(マガジンハウス)が売れ続け、2024年9月、料理レシピ本大賞をW受賞(「プロの選んだレシピ賞」「料理部門入賞」)。2024年12月に上梓した新刊『中華満腹大航海』(KADOKAWA)は、発売後即重版となった。InstagramやXでおいしい情報を発信し続けている。
(中岡 愛子)
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