《ムラ社会の闇》田舎でのスローライフに憧れて移住したはずなのに…深川麻衣に監督が新作映画で期待していた演技とは?
文春オンライン / 2025年1月25日 6時10分
なぜか子どもを産むことを村人たちから懇願されていた。
2016年に乃木坂46を卒業して以来、俳優としてのキャリアを着実に重ねてきた深川麻衣。そんな彼女の最新作は、のどかな田園風景が広がる村を舞台に、一般社会から隔絶したムラ社会の闇を描くスリラー『 嗤う蟲 』だ。初めて脚本を読んだとき「ゾワゾワした」と言う本作で、深川は田舎でのスローライフに憧れて移住したはずが、村の「掟」に引きずり込まれていく若い夫婦の妻・長浜杏奈を演じる。
すべて夫任せというわけではなく、杏奈は「強い女性」
映画の序盤から村に取り込まれていく夫とは対照的に、一見おっとりしているが村や村人への違和感を隠そうとしない杏奈を、深川は「強い女性」だと言う。
「冒頭の杏奈は田舎で農業をやりたい夫についてきた妻のように描かれますが、移住先でもリモートでイラストレーターの仕事を続けています。子育てをめぐって夫と口論になれば『いままで積み上げてきたキャリアを失いたくない』とはっきり言える、じつは芯の強い女性。夫を信頼しているけれど、すべて夫任せというわけではなく、我が強いところもあって……。そんなふうに想像しながら杏奈をつくっていきました」
『嗤う蟲』はムラ社会の闇に迫る映画だが、必ずしも「村=悪」「主人公夫婦=善良」という単純な構図で描かれてはいない。たとえば杏奈は、保守的な村人への自己紹介でふだん仕事で使っている旧姓を当たり前のように名乗ったり、「#田舎移住」として写真をインスタに投稿したりと、人によっては「意識高い」「鼻につく」と感じかねない描写も多い。
監督からの演出はほとんどなかった
「監督からは撮影前に『夫婦をただの善人に見せたくない』と言われていました。とはいえ、杏奈たちはほかの土地から移住してきたよそ者です。とくに引っ越してきた当初は極端に受け身なので、村人からのアクションに対するリアクションで、監督の言う“ただの善良な夫婦でない”感じを表現する必要がありました。たとえば杏奈が村人から苦手な食べ物を勧められるシーンで、笑顔で遠慮しながらも、内心は嫌がっていることが透けて出るような愛想笑いを浮かべたり。そういう部分は意識しました」
そんな杏奈も、やがて村の掟に飲み込まれていく。気がつけば外堀を埋められていたかのような、じわじわとした追い詰められっぷりは本作の大きな見どころのひとつだが、意外にも監督からの演出はほとんどなかったという。
「杏奈のイライラを表現するために『顔は笑ったまま足は貧乏ゆすりして』といったピンポイントな演出はいくつかありましたが、基本的には私に委ねてくださって。城定監督とご一緒するのは初めてだったこともあり、最初は不安に感じることも。ただ、監督は芝居の流れを確認する段取りからしっかり見てくださるし、カメラ割やアングルを決めたうえで撮影に臨む方なので、そこに対する信頼は早々に感じていました。それに“追い詰められる”という意味では、共演者が個性豊かで実力のある方ばかりだったので……」
プロデューサーによる深川の起用理由
共演者とは、田口トモロヲ、杉田かおる、松浦祐也、片岡礼子らのこと。そんな錚々たる面々が、村人として杏奈たちを追い詰めていく。
「みなさんが個性をぶつけてくださるので、私たちもオーバーにやりすぎると作品の世界観がカオスになってしまう。なので、そこは杏奈としての自然なリアクションに徹しました」
ちなみに本作の作品資料で、布川プロデューサーが深川の起用理由を「正統派俳優の深川さんが、感情を露わにして叫んだり怖がったりする芝居を見たかった」と語っている。そのことについてどう思うか、最後に聞いてみた。
「私もさっき資料を読んで、そのことを初めて知りまして……。でもたしかに、これまでも何かに追い詰められる役を演じることが多く、関係者の方からも『そういう役が似合うよね』と言われたこともあります。ふだんは感情の起伏が安定しているほうなので、まったく違う顔を見たい! と思ってもらえるのかもしれませんね(笑)」
杉山秀樹=写真
山口香穂=スタイリング
吉田真佐美=ヘアメイク
衣装協力:リツコ カリタ、アペルディエム
プロフィール
ふかがわ・まい 1991年、静岡県生まれ。2018年に主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』でTAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。主な出演作に『愛がなんだ』(19年)、『水曜日が消えた』(20年)、『おもいで写眞』(21年)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(23年)、『パレード』(24年)など。2024年は「他と信頼と」、朗読劇「HAROLD AND MAUDE」など舞台にも活躍の幅を広げている。
INTRODUCTION
スローライフに憧れて都会から村に引っ越してきた若い夫婦は、静かな暮らしを満喫する。しかし、村には恐ろしい〈掟〉があり、二度と出ることはできないことを知らなかった。日本各地で起きた村八分事件をもとに、“村の掟”の数々をリアルに描く。監督は幅広い作品を手掛ける城定秀夫。主演は、乃木坂46の元メンバーで現在は数々の作品で俳優として活躍する深川麻衣。村人たちに徐々に取り込まれる夫に若葉竜也。住人は杉田かおる、松浦祐也、片岡礼子、中山功太といった実力に定評のある俳優が集結。村を支配する自治会長役・田口トモロヲが不穏な存在感を漂わせている。
STORY
都会から遠く離れた麻宮村に移住してきた杏奈と夫の輝道。親切な村人、美しい自然、ゆっくりと流れる時間。まるで楽園のようなこの村で、仕事に子育てにと夢に描いた充実した日々を過ごしていた。しかし徐々にプライバシーがなくなっていくことに不安を抱く杏奈だが、輝道は自治会長に従順になり麻宮村のムードに染まっていき夫婦はすれ違いだしていく。次々と起こる怪奇な出来事や、どこか底気味悪い村人たち……。得体の知れない恐怖に苛まれ二人は狂気の淵へと追いつめられていく。
STAFF & CAST
監督:城定秀夫/出演:深川麻衣、若葉竜也、松浦祐也、片岡礼子、中山功太、杉田かおる、田口トモロヲ/2024年/日本/99分/配給:ショウゲート/©︎2024映画「嗤う蟲」製作委員会
(岸良 ゆか/週刊文春CINEMA)
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