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「毎月2億円以上の赤字が続いていた」“大企業レベル”のコンサル会社がいきなり倒産…急成長した企業が自己破産まで追い込まれた“本当の理由”

文春オンライン / 2025年1月28日 6時0分

「毎月2億円以上の赤字が続いていた」“大企業レベル”のコンサル会社がいきなり倒産…急成長した企業が自己破産まで追い込まれた“本当の理由”

©AFLO 写真はイメージ

〈 オフィス家賃は月3000万円、従業員約300人で“大企業レベル”だったが…倒産したコンサル会社が急成長の裏で抱えていた“深刻な問題” 〉から続く

 会社清算、会社更生法・民事再生法適用など様々な形での倒産が急増している。円安、資源高、人件費の高騰などに見舞われ、資金繰りに窮する企業が相次いでいるのだ。

 ここでは、60年にわたって「倒産」の現実を取材・分析しつづけてきた帝国データバンク情報統括部による新著『 なぜ倒産 運命の分かれ道 』(講談社)より一部を抜粋。急成長していた中小企業向けコンサルティング会社・北浜グローバル経営株式会社(以下、北浜G)が倒産した理由とは——。(全2回の2回目/ 1回目 から続く)

◆◆◆

人材育成追い付かず? 採択率が急低下

 北浜Gに異変が起きたのは2023年春。同年1月から3月にかけて公募された事業再構築補助金の第9回の採択結果が公表され、北浜Gが申請に関わった案件の採択率が36.0%にまで落ちたのだ。

 ところが、全体の採択率はそれ以前とほぼ変わらない。そうなると、採択率低下の原因を案件そのものの内容の低下といった、外的な事象に求めるのは難しい。矢継ぎ早の人員補充で教育・研修が追い付かないなど、「プロフェッショナル未満」のスタッフが増え過ぎてしまったという、内的要因であると考えるべきだろう。

 ちょうどこの頃、提携金融機関の審査担当者が、とあるつなぎ資金の案件に関して補助金申請の進捗確認を行ったのだという。その際に、完成前の申請書類の一部を見て「申請が通るとは思えない出来映えと感じた」ように、明らかな“質”の低下が露見していた。

 そして、北浜G自身もある提携金融機関に融資を打診したが、謝絶されている。その交渉の場に居合わせた融資担当者は「1000万円でも2000万円でもいい、という切羽詰まった口ぶりだった」と当時を振り返る。

受託案件増加で膨らみ続けた先行支出

 ここで、北浜Gにおける資金の流れをあらためて確認しておこう。補助金申請コンサルを始めたころの報酬体系は、完全成功報酬型。事業計画や資金計画の作成などをサポートし、無事に採択されたことを条件に「成功報酬」を受領する決まりだった。つまり、着手から採択までの間に要したコストが先行支出となり、成功報酬で回収する資金パターンで、受託案件が増えれば増えるほど、営業キャッシュフローのマイナスが大きくなる状態にあった。

 しかし、実際には、着手から採択まで数ヵ月を要することも少なくなかった。営業キャッシュフローのマイナスが大きくなるなか、借入金で資金を手当てしていたが、それでは足りず、着手時に補助金申請者から一部を「手付け」として前受けする方式に切り替えたほどだ。

 特に2022年以降は、大規模な人員補充による人件費の増加と、本店移転に伴う家賃の増加により、先行支出は以前とは比べようもないほど大きなものとなって、借入金残高もみるみるうちに膨らんでいった。それでも、この時点で倒産に至るとは誰も予想だにしなかったことだろう。

行政方針の変更で窮地に

 2023年秋には、歯車の回転が完全におかしくなった。9月に事業再構築補助金の第10回公募の採択結果が公表されたが、北浜Gが申請に関わった案件の採択率はわずか15.3%。見込んでいた成功報酬が得られない事態となった。

 さらに、第11回公募からは、行政方針の変更により補助金審査が厳格化され、申請資料が増加したり複雑化したりする事態となった。また、代理申請へのチェックも厳しくなるなど、申請にかかる負担が大幅に増加。さらに、採択発表が大幅に延期されたうえ、全体の採択率も26.4%とかつてないほどの低水準となった。

 この結果、毎月2億円以上の赤字が継続することになり、資金繰りは瞬く間に悪化。2024年3月には、取引債務や公租公課の支払いが困難となる状況に陥っていた。4月に入り、スポンサー探しを始めたが、時すでに遅し。将来性や資金支援の面での折り合いがつかず、5月24日に事業継続を断念し、大阪地裁へ自己破産を申請した。

多くのクライアントを裏切る結果に

 振り返るならば、本店を一等地に移転した経営判断が最大の誤りと言えるのではないだろうか。そもそも、こうした事務中心の業務であれば、立派なオフィスは要らない。外部委託していたフリーランスのように、リモートワークでも十分に対応できる業務だったはずだ。

 また、補助金申請を入り口として、後の経営支援コンサルにつなげていこうと考えていたことは、十分に理解できる。しかし、人材不足の真っただ中で、身の丈を超える案件数を受託してオーバーフローしたことも、大きな蹉跌と言える。

 ただ、引っかかるのは、少なくとも1年前から経営状態の悪化がうかがえたのに、倒産の数ヵ月前まで取引金融機関にそうした窮状を打ち明けなかった点だ。ある提携金融機関には、北浜Gの営業担当者が倒産当日の午前中にも案件紹介をお願いしに来ていたという。多くのクライアントを連れてきた金融機関に、後足で砂をかけるような倒産の仕方は決して気持ちがいいものではない。

 倒産後に開催されたクライアント向け説明会の場では、潜在的な債権者が2500~3000名にのぼる可能性が指摘されたという。着手金を払ったのに採択までたどり着かなかったクライアントもいれば、補助金交付に向けた手続きのサポートを受けているクライアントもいたはずだ。彼らも「あとはご自身で……」と非情な通告を受け、路頭に迷うことになった。

 もともと人材育成支援コンサルを手がけていた企業が、自社の人材育成でつまずくとはなんとも皮肉な話。最後に補助金審査の厳格化というダメ押しがあったにせよ、他社の再構築計画をスムーズに進められなかった会社に、“自社事業の再構築”という課題は重すぎたのかもしれない。

(帝国データバンク情報統括部/Webオリジナル(外部転載))

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