“公開処刑”でも際立っていた中居正広の「感情のわからなさ」 何も語らないことによって彼が“守ろうとしたもの”とは
文春オンライン / 2025年1月25日 7時0分
引退を発表した中居正広 ©時事通信社
女性トラブルの渦中にいたタレントの中居正広氏(52)が芸能界引退を発表した。昨年12月、女性と性的トラブルを起こし高額の示談金を支払っていたことが発覚し、各局のレギュラー番組が続々と終了を発表する中、ついに本人が芸能界から身を引くと決断したことになる。
引退の発表は、23日に自身のファンクラブサイトに掲載された“少しでもお先にご報告”と題した文書だった。テレビ局など関係各所との契約解除等に関する会談がすべて終了したタイミングだといい、「これで、あらゆる責任を果たしたとは全く思っておりません」「全責任は私個人にあります」と謝罪。
ファンクラブの会員には「こんなお別れで、本当に、本当に、ごめんなさい」と綴り、「さようなら…」という言葉でSMAP結成から37年の芸能生活を結んだ。
ネットやメディアでは彼の才能を惜しむ声とともに、「逃げた」「自業自得」という批判も飛びかった。彼のいう“相手さま”との守秘義務もあったのだろうが、実際に何が起きたのか、など騒動の真相については何も語られなかった。
“公開処刑”と今回の引退発表の共通点
「何も語らない中居氏」で思い出すのは、2016年1月18日に行われた“公開処刑”と呼ばれるSMAPの謝罪会見だ。
「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)の番組中で、暗幕を背にメンバー5人が真っ黒なスーツに身を包み、陰鬱な表情で並んでいた。
会見を仕切ったのは真ん中に立った木村拓哉さんで、リーダーのはずの中居氏の立ち位置は向かって一番左端だった。口を開いたのも最初でも最後でもない4番目、SMAPのリーダーであることを感じさせる要素はなかった。
会見が始まっても、他のメンバーが話している間は視線を落とし、身体の前で両手を重ねて聞いていた。
自分の番がくると、まず重ねていた手をこすりあわせた。彼にしては珍しい仕草で、プレッシャーや不安があったことが窺える。
「今回の件で、SMAPがどれくらい皆さんに支えて頂いているのかということを、あらためて強く感じました」と力のない低い声で述べると「本当に申し訳ございませんでした」と深く頭を下げた。
そこで一瞬カメラに視線を向けると、「えー」と声を出しながら大きく息を吐く。緊張はしているのだろうが、表情も声色もほとんど変わらない。
最後にトーンを抑えた声で「これからもよろしくお願いします」と再び頭を下げた。1度目よりも、頭の位置は高かった。
5人の中でも特に短いコメントで、感情を読み取ることも難しい。その“あっさり具合”は、引退発表文と共通した印象を受ける。
この会見での立ち位置、話す順番や内容について本人たちの意志がどれほど反映されていたかはもちろんわからない。事務所サイドがそのほとんどを決めていたという話も漏れ伝わってきている。
しかしリーダーでありながら他の誰よりも言葉が少なく、表情も動かさなかった。他のメンバーは口調や声色の変化、視線の動きなどからその感情がある程度読み取れるが、中居氏の「心の動きや感情の揺れのわからなさ」は際立っている。
“公開処刑”の少ない口数の中で、中居氏が言及したのはSMAPに関わる人たち、そしてファンのことだった。
このファンに対する時に感情が出やすい特徴は、引退発表の文面でも同じだ。「中居ヅラ」と呼ばれるファンクラブの会員に向けた「一度でも、会いたかった 会えなかった 会わなきゃだめだった」というコメントは、本人の内面が漏れ出ているように感じさせる。
過剰なほどの饒舌さは、自分の心を守る方法だったのか
中居氏の会見と言えばもう1つ、2020年2月21日に行われた事務所退所についての会見が思い出される。入場からエンターテイナーぶりを発揮し、司会も立てずに自分で会見を仕切り、軽妙な語り口とユーモアで記者たちを笑わせた。
一見すると“公開処刑”会見や引退表明文とは真逆の印象だが、今振り返ると、その饒舌さは、自分の心の内側に踏み込ませないための守りの手段にも思えてくる。
彼の心の内や感情を探ろう、踏み込もうとする記者たちを、過剰なほどに饒舌にしゃべることでうまくかわしていたのではないか。彼にとってしゃべることは、仕事であると同時に自分で空気を掌握することによって心を守る手段だったのだろう。
そしてその方法が使えなくなった時、彼にできるのは「何も語らない」という方法しかなかったのかもしれない。
(岡村 美奈)
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