18歳で「君の名は。」大ヒット、朝ドラでは破天荒な面も…“元夫”俳優がみた上白石萌音(27)の「意外な素顔」
文春オンライン / 2025年1月27日 11時0分
上白石萌音 ©AFLO
2021年度後期のNHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』が再放送されている。ヒロインの1人・安子を演じた上白石萌音は、きょう1月27日に27歳の誕生日を迎えた。中学生で芸能界入りするまでの歩み、記録的ヒットとなった映画『君の名は。』の声優に抜擢された背景、緻密な“役づくり”の裏側とは……。(全2回の2回目/ はじめから読む )
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2016年に大ヒットしたアニメ映画『君の名は。』で上白石萌音は、神木隆之介演じる主人公の少年・瀧と心身が入れ替わってしまうヒロイン・三葉の声を当てた。監督の新海誠は、《オーディションではたくさんの素敵な女優さんと出会わせていただいたんですが、「三葉がどういう女の子なのか?」という輪郭を一番くっきりと僕に示してくれたのが、上白石さんだったんです》と、公開時に彼女との対談で明かしている(『ダ・ヴィンチ』2016年10月号)。
当の上白石は、作品の世界観にすっかり魅せられたものの自信はまったくなく、オーディションの帰りには「三葉、バイバイ」と一旦は心のなかで別れを告げていたらしい。それが、デビューが決まった「東宝シンデレラ」オーディションのときと同様、予想に反して合格する。彼女いわく《「決まったよ」という連絡をマネージャーさんからもらった時は、思わずほっぺをつねってしまいました。そんなベタなことを人って本当にするんだなって、自分でもびっくりしました(笑)》(同上)。
あらゆる方言でヒロインを演じてきた
『君の名は。』の三葉のセリフは飛騨弁だった。上白石はこれ以前、初主演映画『舞妓はレディ』で、鹿児島弁と津軽弁をちゃんぽんで話していた少女が、舞妓になるべく飛び込んだ京都の花街で、京言葉を身につけていくさまを演じていた。それもあって彼女は、47都道府県の方言を制覇したいと冗談めかして語っていたことがある(『キネマ旬報』2016年8月下旬号)。現在再放送中のNHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』でも岡山弁に挑戦して見事にハマっていた。
新たな作品に入る前に、その舞台やモデルとなる場所に赴くことも好きだという。井上ひさし作の音楽劇『組曲虐殺』への出演(2019年)に際しては、小樽を訪ね、主人公の作家・小林多喜二と自身が演じるその恋人・田口瀧子ゆかりの地をまわった。その旅のことは稽古中や本番中、幾度となく思い出し、《土や水の感触、風の肌触り。実際にその土地を踏んで感じたことは、揺るがない記憶として心の支えになってくれる》と、「赴く」と題したエッセイにつづっている(上白石萌音『いろいろ』NHK出版、2021年)。
ピアノに和歌、法律も…役づくりはみっちりやらないと気が済まない
役づくりは時間をかけてみっちりやらないと気が済まないという。幼い頃、母親から教わったものの早々に挫折したピアノも、映画『羊と鋼の森』(2018年)で初共演となった妹の萌歌と姉妹のピアニストを演じるに際し、猛特訓の末、吹き替えなしで見事な連弾を披露している。百人一首をテーマにした映画『ちはやふる―結び―』(2018年)では古典に造詣の深い高校生を演じるため、和歌の詠まれた時代背景はもちろん、文法も一から勉強し直したという。彼女の演技に説得力があるのは、役と真摯に向き合い、人物像を裏づけるためにこうした地道な作業を惜しまないからだろう。
それでも彼女は、《役を演じるにあたって、いろんな知識を蓄えたり、その役が体得している技を練習したりしながら、いろんな人の人生を垣間見られること》が楽しいと言ってはばからない(『週刊朝日』2018年4月20日号)。現在放送中のドラマ『法廷のドラゴン』(テレビ東京)でも、将棋のプロを志しながらも法曹の道に転じた異色の弁護士を演じるとあって、《将棋と法律の勉強を面白く進めながら、撮影が始まるのを待ち侘びていました》とのコメントをドラマの公式サイトに寄せている。
もちろん、ときには役づくりに悩むこともある。橋本環奈とW主演を務めた舞台版『千と千尋の神隠し』(2022年初演)では当初、原作である宮﨑駿監督の同名アニメ映画をトレースすることに必死だったが、行き詰まってしまったという。しかし、本物の真似をしても仕方ないと思い切って映画を封印したところ、結果的に本物そっくりだと評価された。彼女はこのときのことを、《表面的なものを似せても枠組みでしかなくて。ちゃんと噛んで食べましたかというのを問われていたというか。大事な経験でした》と顧みる(『文藝春秋』2024年1月号)。
上白石萌音が目指す“最終形態”
こうして彼女のこれまでをたどってみると、とにかく真面目という印象を抱かされる。それは仕事に対してばかりではない。あるインタビューではこの先目指すものを訊かれ、《人としては、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」が最終形態ですね。欲はなく苦にもされず、見返りを求めずに愛を注げて、自分のことも大事にできる人になりたいです》と答えている(『anan』2020年9月2日号)。その姿勢には頭が下がるが、宮沢賢治がくだんの詩に「ジブンヲカンジョウニ入レズニ」と記していたのに対し、彼女は「自分のことも大事に」としているところにちょっと安心する。
ネガティブな感情も表現に活かす
そんな上白石だが、表向きはポジティブに振る舞っていても、じつは自己肯定感が低く、本質的にはネガティブな性格だと、ことあるごとに語っている。もっとも、ネガティブな感情も、表現を仕事にしていればいくらでも活かすことができると、あくまで前向きだ。
「気づいたらボケている」共演俳優がみた“素顔”
昨年12月公開の映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』で演じた自身初の悪役・よどみは、人々をそそのかしては悪意を吐き出させるというキャラクターで、ネガティブな感情も表現に活かしたい上白石にはまさに打ってつけであった。考えてみれば、彼女がこれまで演じてきたのもけっしてポジティブな役ばかりではない。前出の『カムカムエヴリバディ』のヒロイン・安子も、勉強熱心なところは現実の彼女に近いとはいえ、結果的に自分の子供よりも恋人をとってアメリカに渡ってしまったわけで、終戦直後の日本の女性としてはかなり破天荒である。
このドラマで安子の夫を演じた松村北斗は昨年、映画『夜明けのすべて』で再び上白石と共演した。その公開時、二人で応えたインタビューでお互いをどんな人だと分析しているかとの質問に対し、松村は彼女のことを《気づいたらボケてる人》、《ためになる話をしていると思ったら、ひょうきんなオチがあったりして。コーヒー1杯を飲み終わるのにちょうどいい尺の小噺ができる人ですね》と評した(『anan』2024年2月7日号)。具体的にどんな話をするのか気になるところだが、素顔の彼女は、優等生キャラのなかにも天然ぶりを垣間見せているようだ。
「木があれば登りそうな感じ」「あっ、登ってました!」
先に引用した『君の名は。』公開時の対談でも、新海誠監督が、劇中でのヒロイン・三葉の「来世は東京のイケメン男子にしてくださーーい!!」という叫びを本当に言いそうだと思えたのは、オーディションしたなかでも上白石さんが最初で最後だったと明かした上、《なんというか……うん、この子は叫ぶかも、と(笑)。木があれば登りそうな感じ、というか》と言うと、上白石はすかさず《あっ、登ってました!》、《ど田舎で育ったので、木登り大好きでした(笑)》と無邪気に返してみせた(『ダ・ヴィンチ』前掲号)。こういうところはいかにも天然っぽい。
『君の名は。』から10年近くが経ったが、上白石はいまでも唐突に木に登ってしまいかねない危うさをどこかに隠し持っているのではないか。偶然にも、『カムカムエヴリバディ』のメインビジュアルでは、彼女が同じくヒロインを務める深津絵里と川栄李奈とともに木に登って写っていた。作品のなかでも、危うい演技でハラハラさせてくれる彼女をときには見てみたいものである。
(近藤 正高)
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