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「本当はこんな話をしてはいけないのかも…」フジテレビ日枝久氏が「文藝春秋」に打ち明けていた〈フジテレビ流の社長人事の決め方〉

文春オンライン / 2025年1月27日 11時0分

「本当はこんな話をしてはいけないのかも…」フジテレビ日枝久氏が「文藝春秋」に打ち明けていた〈フジテレビ流の社長人事の決め方〉

フジテレビの日枝久氏 ©文藝春秋

〈 「道筋をちゃんと付けないと、僕は無責任になる」フジテレビ日枝久氏が明かした“経営者の責任”「うちだけの特殊性かもしれないけれど…」 〉から続く

 中居正広氏の女性トラブルをめぐり、窮地に立たされているフジテレビ。その批判の矛先は、フジテレビに長年君臨する日枝久氏にも向かっている。

 日枝氏はどのようにフジテレビを運営してきたのかーー。その一端を窺わせるのが、2017年、当時会長だった日枝氏がフジテレビの幹部人事の決定プロセスについて、 詳細に語ったインタビュー だ。

 この年、鳴り物入りでフジテレビ社長に就いた亀山千広氏を退任させ、当時すでに73歳だった宮内正喜氏を後任にあてた。さらに日枝氏自身は会長を退任するものの、取締役相談役、フジサンケイグループ代表として残った。そのトップ人事はすべて、日枝氏がただ一人で決め、重役たちも報道の前日まで誰一人知らされなかったという。ジャーナリスト森功氏による インタビュー ( 「文藝春秋」2017年7月号 )を一部紹介します。(文中敬称略)

◆◆◆

日枝氏が一人で決めた役員人事

 亀山に引導を渡したのは他ならない日枝自身だ。どう告げたのか。

「本当はこんな話をしてはいけないのかもしれないけど、彼はやっぱり苦しかったんでしょうね。内示として、『結果責任はあるから、今回は外れてもらうよ』と言い渡すと、彼は『ありがとうございます』と言い、肩の荷を下ろしたようでした」

 フジテレビではこの間、会長続投が当然のように思われてきただけに、首脳人事の注目点は、もっぱら社長レースだった。そこで最右翼と下馬評の高かったのが、専務の遠藤龍之介(61)だ。遠藤周作の長男で日枝編成局長時代には上司部下の関係で、何かと話題の尽きない日枝体制の下、広報部門を支えてきた。遠藤新社長はなかったのか。

「週刊現代に遠藤君が新社長と書かれたとき、僕は彼に秘書室で『おめでとう。社長になるんだってな。お前は広報担当なんだから、(亀山)社長にも週刊誌に出たと言わないと駄目だよ』と冗談を言いました。『いやー、僕は当事者だから言いにくいですよ』と言っていましたけど、秘書室でも週刊誌を回し読みしていて彼も困っていた。もちろん僕の頭の中には遠藤社長はなかったので、週刊誌報道があったから社長が消えたなんてこともありえません」

 今度のトップ人事は5月9日の報道当日まで、外部はもとより社内にも情報が洩れなかった。それは日枝がただ一人で決め、情報管理を徹底してきたからにほかならない。人事の草案を練ったのが4月21日から23日までの3日間、静岡県伊東市の川奈ホテルゴルフコースでおこなわれたフジサンケイレディスクラシックのときだ。

「決算発表が5月だから、連休前には大体決めておかなきゃいかん。毎年そうだけど、今回は1〜2月頃から考え始め、いろんな人に意見を聞きました。人事の具体的な話ではなく、プロダクションの人たちとか、OBやネット局の人たちとか、皆さん方の話を聞きながら、フジサンケイレディスクラシックのときに川奈(ホテル)で煮詰めていきました」

 社長レースでは先の遠藤以下、鈴木克明(58)、稲木甲二(61)という三専務の名前が候補に挙がった。他の役員人事を含め、その中身については、日枝の頭の中だけに封じ込まれ、当の重役たちでさえ、報道の前日まで誰一人知らされなかった。

 そして日枝は報道前日の8日午後2時から6時過ぎまで、自ら会長室にフジ・メディアHDの該当役員全員を一人ずつ呼び、異動の内示を伝えた。たとえば仙台放送の社長に異動する社長候補の稲木については、こうだ。

「もちろん受け入れ先の仙台放送社長の竹内(次也)君には伝えましたけど、彼自身は8日まで知らなかったはずです。8日が月曜日だから、土日に竹内君に事情を電話で説明し、納得してもらいました。仙台放送は昨年フジ・メディアHDの傘下になり、この先東北ブロックの基幹局としての役割を担う。そこでオールラウンドプレイヤーの稲木君に基盤を強くしてもらおうと考えた。そんな話をし、仙台の竹内君には外に絶対漏らすなよ、と口止めをしておきました。だから稲木君も8日に僕と会うまで、中身については知らなかったと思います」

73歳を社長に抜擢

 遠藤はフジテレビ本社に残るが、残る社長候補のもう一人の専務、鈴木もまた、テレビ西日本に異動になる。日枝はそうして受け入れ先となる地方局や関連企業の社長たちに一人ずつ電話をかけ、了解をとりながら人事を決定していったという。

 社長レースではあの「101回目のプロポーズ」を企画した常務の大多亮(58)まで候補に挙がったが、最終的に日枝の眼鏡にかなったのが宮内正喜だ。御年73、現社長の亀山より一回りも上であり、かつて秘書室長として日枝の側近でもあった。その新社長の抜擢に疑問の声もあがったが、日枝は意に介さない。

「(年齢の高い宮内を社長にすると)逆風が吹く。絶対にメディアからいろいろ言われるというのは、織り込み済みでした。だけど、今のフジテレビには若い人より、編成、営業、ネットワーク、秘書室長、いろいろやってきた経験が必要だと思ったんです。彼は難しい局面で岡山放送に行って立て直し、2年前にBSフジの社長として戻しました。

 BSの前任社長が長くなってきたとき、4K問題も含め、これからBSがメディアの中心になると考え、彼に(社長を)やってもらった。もともと『プライムニュース』なんかは評価が高いし、BSが大事な収入源になってきている。その宮内君が社長になると、BSの売上げがトップになった。それで『宮内君で大正解だった』と思っているうち、今度の人事になったんです」

※本記事の全文(約7000字)は「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます(森功「 フジ日枝久独占告白 社長交代劇の内幕 」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。

・5期連続の減収減益「これ以上の不振は世間が許さないからな」
・スタープロデューサーの亀山氏に期待をかけるもドラマの復活に失敗
・73歳を社長に抜擢「今のフジテレビには若い人より経験が必要」
・「潔くない」と言われてもグループを守りたい

 また、2013年の日枝氏のインタビュー「 フジテレビはなぜダメになったのか 」(森功)も、 「文藝春秋 電子版」 でお読みいただけます。

(森 功/文藝春秋 2017年07月号)

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