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デマや誹謗中傷でついに死者が 「流言」を言いっぱなしにする立花孝志氏と「真実を知り全てがつながりました」と言っていた有権者は...

文春オンライン / 2025年1月28日 6時10分

デマや誹謗中傷でついに死者が 「流言」を言いっぱなしにする立花孝志氏と「真実を知り全てがつながりました」と言っていた有権者は...

立花孝志氏 ©時事通信社

「以前は産経新聞を購読していたのですが、今では新聞はもちろん、テレビも一切見ない。その代わりユーチューブとXで偏りなく情報を集め、考えが凝り固まらないようにしています」

 これは昨年11月におこなわれた兵庫県知事選での「斎藤元彦氏を支持する50代女性」の言葉だ。日刊ゲンダイが選挙戦ルポで紹介していた。

 女性の言葉をあなたはどう思うだろうか? ツッコミどころが多い、いやその通りだ、と様々な感想があるかもしれない。しかし、何がどうなっているのか知りたいという欲求自体は多くの人に共通しているはずだ。誰だって「真実」を知りたいからだ。

「立花さんのおかげで真実を知った」

 斎藤氏支持の女性はこうも言っていた。「立花さんのおかげで真実を知り全てがつながりました」。立花氏とはN国党党首の立花孝志氏のことだ。兵庫県知事選に立候補していながら「自分には票を入れないで」と、斎藤氏を応援する旨の街頭演説をして回っていた。

 斎藤氏は知事を務めていたが失職した。知事時代にパワハラなどの告発文書を公益通報として扱わず、作成した元県幹部を懲戒処分としたことが発端で、県議会は不信任決議を全会一致で可決した。告発者は昨年7月に死亡した(自死とみられている)。

 この過程は報道され続けたが選挙期間になるとテレビや新聞は報道しなくなった。何がどうなっている? 知りたい。それなら自分で情報を取りに行く。その結果として50代女性は「立花さんのおかげで真実を知り全てがつながりました」となったのである。

読売新聞が立花氏を名指しして...

 選挙後になって新聞は『選挙と立花氏 言動を看過できない』(朝日新聞社説11月23日)と指摘するようになった。読売新聞も立花氏の名を挙げたうえで、

《斎藤氏を擁護するため、亡くなった告発者の名誉を傷つけるような発信が相次ぎ、斎藤氏支持の論調ができた。》

《その種の情報を発信したことも、斎藤氏の熱烈な支持者を生んだようだ。》と書いた(11月19日)。

 現在、立花氏の主張に賛同した人の中には苦い思いをひそかに抱いている人もいるかもしれない。そうした経験をすることで人は学ぶこともある。

 ただ、兵庫県知事選は「そうした経験」だけでは済まされなくなっている。人が亡くなっているからだ。

立花氏を直撃すると...

 昨年の『週刊文春』(7月25日号)に次の記述があった。告発者X氏の公用パソコン内の情報が兵庫県庁で出回っていた頃、文春は以下のように書いていた。

《中身についてはX氏が決して触れられたくなかったことであり、本稿では言及しない。ただ、X氏の告発を握りつぶすためにこれを利用しようとする行為がどうしようもなく卑劣であることは論を俟たない。》

 告発者のプライベートについて文春は報じなかった。公益通報とは関係ないからである。しかし立花氏ら選挙で利用した人たちがいた。

 文春は知事選後には立花氏に直撃した(12月12日号)。すると立花氏は選挙期間中の言動の数々を翻した。たとえば立花氏は自死した告発者が「不同意性交等罪が発覚することを恐れての自殺」などと選挙ポスターなどを通じて主張していたが「同意であると確認できた」とあっさり前言を翻していたのである。

 立花氏の言説を「真実」と信じてしまった人たちはこのことを知っているだろうか? オールドメディアは見ない、読まないというなら届いていない可能性も高い。オールドだろうがニューだろうが「選挙戦で何が言いっぱなしになったのか、テレビや新聞でも検証が必要ではないだろうか」と当コラムでは言い続けてきた。

 すると先週、またしてもショッキングなことがあった。兵庫県の竹内英明元県議が亡くなったことが19日にわかったのだ。自死とみられている。竹内氏は斎藤知事のパワハラ疑惑などを調査する百条委員会の委員だった。すると、SNS上で竹内氏に対する誹謗中傷が過熱。昨年11月、「一身上の都合」を理由に県議を辞職した。

兵庫県警が「事実無根」と否定

 所属していた会派によると、《竹内氏は辞職前、斎藤元彦氏を応援する目的で知事選に立候補した政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が、SNS上で、竹内氏の自宅に行くと予告したことなどで「家族の生活が脅かされる恐れが生じた」と説明していた。辞職後も誹謗中傷が続いていたという。》(神戸新聞NEXT1月19日)

 驚くのは竹内氏が亡くなったあとにも立花氏が「竹内氏が県警から任意の事情聴取を受け、近く逮捕される予定だった」といった内容をSNSで発信したことだ。これに対して兵庫県警のトップが「全くの事実無根」と否定した。

「僕でっちあげなんて言ってませんよね」

 メディアも立花氏のデマについて報じ、立花氏は20日に公開した自身のユーチューブチャンネルで訂正して謝罪した。今回はメディアが速やかにデマを否定したことで立花氏も無視できずに謝罪に至ったように見えた。こうした報道姿勢は今後も必要ではないか。

 一方で立花氏は、謝罪動画を出した後もなお、「竹内県議がでっちあげをしていた」との主張は変えていなかった。すると『報道特集』(TBS系)が立花氏を問うた(25日放送)。立花氏は何を根拠に竹内元県議の主張を「でっちあげ」としたのか直接、立花氏を問いただしたのだ。

 立花氏は、「でっちあげというか僕は疑惑と言ったつもり。(竹内氏は)疑惑に対してちゃんと弁明されたらよかった」「疑惑とでっちあげとなると、ちょっと印象が違いますよね。僕でっちあげなんて言ってませんよね。疑惑ですよね」と否定したが、1月20日の自身のユーチューブで「デッチあげ」とホワイトボードに書き、発言していた事実を突きつけられた。

 立花氏は動画を公開したわずか4日後に「疑惑と言ったつもり」と発言を変えていたのだ。しまいには「僕はそういう疑惑があるということを言っているだけ。そんなことに対して僕は別に興味がないから言ってないもん」と言い出した。正体見たり、という衝撃映像だった。

メディアが選挙期間中におとなしくなってしまった

『報道特集』の日下部正樹キャスターは最後に「私たちは相手にするとめんどくさいからと言って立花氏の発言にきちんと向き合ってきませんでした」と述べたうえで「結果的に立花的な言動が野放し状態になって一部社会的に受け入れられる空気をつくってしまった。私たちと立花氏の間に線を引くためには私たちは愚直に真実を追い続け、たとえ少数派になろうとも事実に基づき、ダメなものはダメなんだと声を上げ続けなければなりません」と語った。報道番組でのこの言葉は大きい。

 冒頭で引用した「立花さんのおかげで真実を知り全てがつながりました」と語った斎藤支持者も、新聞やテレビが選挙期間中におとなしくなったから立花氏にたどり着いてしまったとも言えないか。選挙期間中でもデマや誹謗中傷を検証し報道することぐらいはできないか? これは何度でも書いておく。デマや誹謗中傷を続ける人物に対して淡々と事実を突きつける。文春だろうが報道特集だろうがオールドメディアと罵倒されようがこうした当たり前のことがもっとおこなわれてほしい。

(プチ鹿島)

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