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「お尻がぶりんぶりんするアニメを作りたい」…さや香・蛙亭・真空ジェシカの同期芸人「ムラムラタムラ」が腰を振り続ける理由

文春オンライン / 2025年2月2日 11時0分

「お尻がぶりんぶりんするアニメを作りたい」…さや香・蛙亭・真空ジェシカの同期芸人「ムラムラタムラ」が腰を振り続ける理由

芸人のムラムラタムラさん

〈 「有田さんも小峠さんも『もっこり』してくれた」…マヂラブ野田が「お笑い界の救世主なのか」と評した奇天烈芸人・ムラムラタムラのブレイク前夜 〉から続く

 アメコミから飛び出てきたヒーローか、単なる変態か――奇抜なレオタード衣装を身にまとい、キレ良く腰を前後に振る「もっこりからのリーモコちゃん」というギャグを持つ芸人・ムラムラタムラ。2020年、「アングラ芸人」としてテレビ番組に出演して大暴れし、マヂカルラブリー・野田クリスタルが「お笑い界の救世主なのか」とSNSでつぶやくなど話題を呼んだ。

 同期に「さや香」「蛙亭」「真空ジェシカ」といった錚々たる顔ぶれが並ぶ中、近年は「お尻がぶりんぶりんするアニメを作りたい」とアニメ制作に乗り出すなど、我が道を突き進み続けるムラムラタムラ。そんな彼の生い立ちや、今後を聞いた。(全2回の2回目/ 最初から読む )

◆ ◆ ◆

お米農家の次男から「もっこり芸人」に

――実家は島根県のお米農家だそうですが、芸人になることに反対はされませんでしたか。

ムラムラタムラさん(以下、ムラムラタムラ) 口に出して言われたことはありませんね。何なら芸人になる後押しをしてくれたのは母でしたし、うちは結構お笑い好きな家族なんですよ。

 母が好きなのはバラエティ番組で、僕の小さいころからテレビをよく見ていた印象があります。タモリさんや明石家さんまさん、笑福亭鶴瓶師匠やダウンタウンさんが特に好きでした。

 姉がいるのですが、こっちは母と違って『爆笑オンエアバトル』や『エンタの神様』といったネタ番組をよく見ていました。土曜日の夜には姉と一緒にエンタを見て、そこから『ギャグマンガ日和』のアニメを見るルーティンがあって、自分のお笑い像はこの辺りがルーツかもしれません。

 もちろん自分でもいろいろ見ていましたよ。『M-1グランプリ』もそうですし、ヨシモト∞ホールのライブもインターネットで見ていました。振り返ると、こういうコンテンツに触れながら自然にお笑いへと興味が向いていった感じです。

 そんな自分を見て、母が「そんなにお笑いが好きなら、こういうのがあるよ」と教えてくれたのが、NSC(吉本興業の養成所)でした。NSCの存在を知ったのは中学生のときで、そこからさらに芸人への興味が強くなって、夜行バスに乗って大阪の劇場によく行きました。なんばグランド花月もそうですし、京橋花月に行ってはネタを見ていました。

 どんどん気持ちが高まって、中学や高校と並行してNSCに通っている人もいるらしいと聞いたことから、高校に行かず中学の卒業後はNSCに行こうかと迷っていたくらいです。親に「大学に行ってからでも遅くないんじゃない」と言われたので、結局は高校卒業後になりましたけど。

 本当は高校も途中で辞めたくて、退学してNSCに行こうと思ったこともありました。でも「この先何があるか分からないし、高校は卒業してほしい」と説得されて、卒業まで通いました。

――芸風や衣装からは破天荒なイメージもあるムラムラタムラさんですが、親御さんの言うことに素直なのは、少々意外です。

ムラムラタムラ 高校生くらいになると丸くなりましたが、昔はひどいもんでしたよ(笑)。姉と兄がいる末っ子で、甘えに甘えた子どもでした。僕の生まれ育った地域では、わがままのことを方言で「じら」と表現するのですが、よく「じらを言う子やのう」とあきれられていました。

 小学生のときには、家族に「見たいテレビがあるから、この時間に起こして」と言ったのに起こしてもらえなかっただけでテレビの置いてある棚を蹴飛ばして壊したこともあります。誕生日にゲーム機を買ってもらったときは、僕としてはソフトも一緒に欲しいと伝えていたはずがうまく伝わっていなかったようで、ゲーム機だけをもらって母にブチ切れたこともありました。

 田舎だったので、ソフトを買いに行くのに何時間もかかるんですよ。せっかくゲーム機は目の前にあるのに、そんな遠くまでソフトを買いに行く時間はないから、その日に遊べない。それにどうしても腹が立って、とにかく怒りました。今思うと「母ちゃん、ごめん」としか言えません(笑)。

辛かった高校生活を『NARUTO』が救ってくれた

――高校を退学することも考えたとお話しされていましたが、どんな点が嫌だったのでしょうか。

ムラムラタムラ まず何より勉強が嫌いで、毎年アウトにならないギリギリのラインで進級してました。それに加えて「同じクラスの奴らと同じような生き方はしたくない」という“尖り”もあって。周りに「俺は芸人になる」と宣言していたので、唐突にミニコントをやらされたり、お笑い的な無茶ぶりも結構ありました。

 所属していた柔道部も、上下関係が厳しいのはもちろん、夕方に全体の練習が終わった後も遅くまでウェイトトレーニングをしたり、とにかくつらかったです。それでも卒業できたのは、親の説得もありましたが、好きな漫画『NARUTO-ナルト-』のおかげです。作中に「忍者とは忍び耐える者」というセリフがあって、このつらい日常を耐えながら「どうすれば面白くできるか」と考えれば、良い経験になるんじゃないかと。

――柔道では黒帯初段を所持されているそうですが、幼少期から習っていらっしゃったんですか。

ムラムラタムラ 柔道は高校から始めました。小中学校では野球や陸上をやっていて、得意なものを生かすなら高校でも続けるべきでしたが、芸人になる以上はいろんな経験を積もうと、正反対の部活を選びました。これはちょっと後悔しています。

 というのも、陸上部の女子からバレンタインにチョコをもらったり、放課後に呼び出されたりして、その子がかわいかったんですよ。でも「自分は柔道部だし、オタクだし、モテるわけがない。芸人を目指すと宣言しているし、ドッキリなんじゃないか」と思って、真に受けなかったんです。変に柔道部に入らず陸上部を選んでいたら、もっと素直になれて良い青春時代を送れたんじゃないかと、ずっと悔やんでいます(笑)。

さや香、蛙亭、ファイヤーサンダー…同期の活躍は素直にうれしい

――高校卒業後に、目指していたNSCに入学されました。同期には、さや香やファイヤーサンダー、蛙亭といった後に賞レースで結果を残すことになるメンバーがいらっしゃいます。

ムラムラタムラ 入ってすぐに「自分より面白いヤツってこんなにいるんだ!」と思いましたね。僕の育った地域は人口も多くないですし、芸人を目指す人も僕以外にほとんどいませんでした。周りからは「面白い」と言われていましたし、自分が一番面白い自負もあったので、ちょっとびっくりしました。

 ただ、ビビるとか悔しさといった感情はなくて、逆にワクワクしましたね。『ドラゴンボール』の悟空って、相手が強ければ強いほどワクワクしますよね。あんな感じです。

 同期では蛙亭が最初からめちゃくちゃエリートでしたし、さや香の2人も別コンビではありながら、それぞれすごくて。新山くんがファイヤーサンダーの﨑山くんと組んでいた「オリオン」というコンビは、見たことのないお笑いをやっていて衝撃を受けました。みんな今でも面白いままここまで続けているのは、うれしいです。

とにかく声がデカかった

――ムラムラタムラさんは当時、同級生の方と「ゆーひび」というコンビを組まれていました。どんな芸風だったのでしょう。

ムラムラタムラ 今とは違って、設定を重視して割と練ったコントをメインにしていました。NSC時代は結構先輩のネタを見る機会があって、中でもななまがりさんにはかなり影響を受けましたね。

 ピン芸人になったのは、相方が体調を崩して入院してしまい、1人でライブに出る機会があったのがきっかけです。1人になって冷静に考えると、自分の強みはとにかく「声」。NSCで声の大きさや発音を結構褒められていたので、これは武器だと考えてネタを練っていきました。

 まだゆーひびの解散前ですが、ピンとして初のライブでやったのは「大佐」というネタです。軍隊風の衣装を着て、大きな銃を持って舞台に立つのですが、笑いをとるのはとにかく「デカい声」。ひたすら大声で、腕に止まった蚊の対処法とか、熊に襲われたときの対応をレクチャーする内容でした。

 このネタがそこそこウケて、ライブのMCをやっていた先輩が、その日の1位にも選んでくださって、これまでコンビでは目立った結果を出せていなかったのに、案外ピンとしても生きていけるんじゃないかと思うようになりました。コンビと違って、ピン芸人は自分がやりたいことを、勝手に、そしてすぐに試せるやりやすさもあって、それも良いなと。

「もっこり」は「ムラムラ」から

――「ムラムラタムラ」という芸名は、当時から名乗られていたんですか。

ムラムラタムラ 今の芸名は、相方の体調が回復せずに解散することになって、そのタイミングで同時に発表しました。どうせなら、しょうもない名前にしたい。でも、苗字の「田村」は残したいし、覚えやすさも欲しい。そこでパッと浮かんだ「ムラムラタムラ」を採用しました。

 変な芸名にしたことで、ライブでも話を振ってもらえるだろうなと考えて生まれたのが、持ちギャグの「もっこりからのリーモコちゃん」です。最初は芸名の「ムラムラ」からの連想で「もっこり」という言葉が良いなと思いました。「もっこり銀行」とか「もっこり音頭」とか、どんな言葉に合わせても音が面白いじゃないですか。

 ただ、もっこりだけだと何となくすわりが悪い、どうしようと考えていて「そういえば、もっこりの反対を示す言葉ってないな」と思い付きました。もっこりの逆、それならば「リーモコ」じゃないか、さらにギャグとしてのリズム感を追求していくうちに「もっこりからのリーモコちゃん」が完成しました。言葉が最初で、動きが固まったのはその後です。

上京のきっかけは「おじさん芸人」

――ゆーひびの解散が2014年でした。そこから、10年以上にわたって「もっこり」を続けられています。違う芸風にしようと考えたことはありませんでしたか。

ムラムラタムラ ないですね。過去のR-1グランプリを見ていると年齢を重ねた方も多いですし、芸を磨くには、とにかく続けることが重要なんじゃないかと考えているんです。積み重ねたからこそ生まれる声のトーンや重み、哀愁的な「魂」ってあると思っていて、売れるにはこの魂が乗っかる必要がある、と。

 大阪から東京に拠点を移したきっかけも、こうした思いがあったからです。当時は吉本興業に所属していたんですが、大阪では漫才をメインにした劇場が増えていたタイミングで、ピン芸人の活動がしづらいと感じていました。

 そんなときに錦鯉さんや虹の黄昏さんといったベテランでもすごいネタをしている方々の存在を知って「こんなに年齢を重ねても、東京ではこういうお笑いができるのか!」と感動して、上京を決めました。

 なのでもともと自分がすぐに売れるとは思っていなくて、2020年に『有田ジェネレーション』で話題になったときは「やばい、早いな」という気持ちでしたね。

「お尻がぶりんぶりんするアニメ」に取り組む理由

――現在は、芸人の「売れる」形が賞レースだけでなく多様化しています。ムラムラタムラさんも、M-1グランプリやR-1グランプリにエントリーしつつ、アートのイベント「デザインフェスタ」に出展するなど、さまざまな活動を手掛けているのが印象的です。

ムラムラタムラ 賞レースの結果はもちろんあった方が良いですし、M-1も小さいころからあこがれていたので、出られる限りは挑戦し続けたいと思っています。ただ、おっしゃる通り賞レース以外で世に出る方法もたくさんありますし、最近は国内だけでなく世界を見据えた活動を始めました。

――直近では「リーモコで、世界を救う!」として、ご自身が主人公のアニメ制作も始められました。Xでは「りーもこちゃんのお尻がプリプリしたりお尻がぶりんぶりんするアニメを作りたい!」とアピールされていましたね。

ムラムラタムラ 日本から世界に向けて何かを発信するときに、やっぱりアニメの力はすごいんですよ。世界各国で人気ですし、いろんな人に触れてもらいやすい。あと自分は衣装を含めて見た目のインパクトがあって、キャラクターにしやすいのも相性が良いなと感じています。

 ここまで自分の人生を振り返ると、ナルトや米国の「マーベル」など、アニメや漫画、映画の影響が大きいなと感じています。自分がもらってきたものを、今度はリーモコちゃんを通して恩返ししていきたいなと思って、アニメ制作を始めました。

 具体的には、自分のお笑いをアニメにして伝えることで、世界をより良くしていきたいなと思っています。笑うことや笑顔って、間違いなく世の中にとってプラスですよね。どんなに少しでも、笑顔を増やせれば、世界は良くなっていく。そして、その笑顔や、自分の存在を知った人が、また次の人に笑いを与えていけば良いなと思っています。

世界を救ったら、地元に帰りたい

――そうした考えに至ったのは、どんなきっかけがあったのでしょうか。

ムラムラタムラ やっぱりエンタメ作品の影響ですかね。例えば『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』という映画で、スパイダーマン=ピーター・パーカーが、「自分には他の人にない能力があって、これを使わないことで誰かが傷ついたのなら、自分の責任なんだ。だからこの能力を使わないといけないんだ」と言っています。

 能力があるのなら、それを生かして誰かのためにならないといけない、という意味です。他にも『僕のヒーローアカデミア』には「余計なお世話がヒーローの本質」という名言があって、これも大好きな言葉です。

 エンタメ作品以外で言うと、父から常に「人のためになることをやれ」と言われて育ったので、その影響もあるかもしれません。自分にできること、持っている能力といえばお笑いで、広く世界に出て笑いを生み出したい。自分が納得いくまでやり切ったら、実家に戻ってお米を作りたいです。何かヒーローの余生っぽいじゃないですか(笑)。

写真=山元茂樹/文藝春秋

(鬼頭 勇大)

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