〈湾岸タワマンを2部屋大人買い〉中国“庶民”の意外な資金源
文春オンライン / 2025年1月31日 6時0分
©AFLO
〈 平凡なタクシー運転手でも〈資産2億円〉中国流「成り上がり」テクとは? 〉から続く
長らく続いた不動産バブルが崩壊し、今世紀最大の分岐点を迎えた中国。不動産さえ買えば誰もが富裕層になれた“チャイニーズドリーム”は、もはや存在しない。世界を翻弄する大国はどこに向かうのか。
ここでは、梶谷懐氏、高口康太氏による新刊『 ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界 』(文春新書)を一部抜粋、加筆編集して公開する。(全2回の2回目/ 前編を読む )
◆◆◆
平凡な人間であっても、大都市に不動産さえ買っておけば一財産を築ける。そんな「チャイニーズドリーム」の時代が終焉してしまった。この後、中国の人々はどのような夢を見るのか。その答えは「海外」にある……。
両親が子ども夫婦のマンションを購入
中国では結婚にあたり、新郎の両親がマンションを購入するという文化がある。つまり、家が用意できないと結婚できないとも言える。これは中国で古くから続く伝統文化のように思われているが、実は2000年代中盤以降に作られた慣習だと、北京在住のライター、斎藤淳子は指摘している。不動産バブルが続くなか、多くの中国人が不動産さえあれば一生安泰という意識を持つようになり、家持ちの男と結婚すれば老後の不安が消えるという意識になったのだろう。
同時に、両親にしてみれば、子ども夫婦のマンションを購入するかわりに老後の生活のサポートをしてもらうという動機も存在する。両親だけではなく祖父母も、値上がりを続けるマンション購入のための金銭的援助を惜しまない。このような社会的な意識を背景に、男子の人口比率が多い地域では、少ない地域に比べてマンション価格の上昇度がより大きいことを示した実証研究さえ存在する。
「富裕層と言われると違和感」
マンション値上がりで築いた資産を海外に持ち出せた人は幸運だ。沖縄県で高級民泊3棟を経営している翁さん(30代、男性、仮名)はその典型だ。
「親が20年前に買ったセカンドハウスを売ったら、東京のタワマンが2部屋買えるぐらいの金額になってしまいまして。そのタワマンも値上がりしたので、一つ売って民泊経営を始めた次第です。自分が富裕層と言われると違和感がありますね。北京では安い時に不動産を買っていた人なんてごろごろいます。みんな普通の人ですよ」
北京中心部のマンションならば、どんなに古くても1億円以上はざら。一人っ子政策の影響で子どもは一人の家庭が多いので、親世代、祖父母世代の不動産を相続するだけで、普通の市民が立派な富裕層になってしまう。
アフリカで同じ夢を見ようと…
だが今や、このラッキーなチャイニーズドリームは存在しないのではないか。すでに価格は上がりきっている。今さらマンションを購入しても、もうこれまでのような値上がりはしないと諦めのムードが広がっている。それどころか今回の不動産危機で、所有している物件の価格が下がるというリスクまで生まれてしまった。筆者の友人である、企業家のロビン・ウーは講演会で「若者よ、アフリカでマンションを買え」と檄を飛ばしていた。
次はアフリカで同じ夢を見ようというのだ。どこまでいっても不動産に囚われているのがおかしかったが、10年20年続いてきた成功パターンを忘れるのも難しいのだろう。
今回の不動産危機によって、若者にとっては親世代のような資産形成の道、チャイニーズドリームが断たれた。そして、それはリタイアし老後を迎えた世代にとっては最後の人生設計が狂ったことを意味している。中国も核家族化が進み、老後は子どもの手を借りずに過ごす人が増えた。60代以上では66%が子どもと別居している。不動産の価値が下がれば老後の人生計画の支えを失う。
日本のタワマンを購入するなど、不動産資産を海外に持ち出せた人は幸せだ。逃げ遅れた人々の道はまだ見えていない。夢のような高成長の時代は終わったのだ。となれば、「大きくは成長もしないが、それなりに安定している普通の国……まさしく日本のような国になるべき」と発想を変えるのが当然のようにも思う。だが、長らく続いたバブルに慣れ親しんだ中国人が急に思考を変えることは難しい。
「黄金時代が終わり、歴史のゴミ時間が始まった。もうダメだ」と嘆くか、あるいは海外で別の夢を追うか。現実を受け入れるのは難しい。
(梶谷 懐,高口 康太/文春新書)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
平凡なタクシー運転手でも〈資産2億円〉中国流「成り上がり」テクとは?
文春オンライン / 2025年1月31日 6時0分
-
神戸市が“タワマン空室税”を検討するに至った切実な背景…加熱するタワマン投資の恐ろしい行く末「超有名マンション購入客の1割が中国人」
集英社オンライン / 2025年1月25日 10時0分
-
日銀、追加利上げ決定で聞こえる「タワマンバブル崩壊」の足音…世帯年収2000万円の「パワーカップル」に起きる最悪のシナリオとは
集英社オンライン / 2025年1月25日 10時0分
-
「湾岸タワマン生活」強制終了…世帯年収1,200万円・人生を満喫する「子のいない30代パワーカップル」、余裕のローン返済のはずが急転直下のワケ【FPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月6日 10時45分
-
「本当のお金持ち」の街・田園調布は住みやすいのか…不動産のプロが考える「良い街」の共通点
プレジデントオンライン / 2025年1月3日 17時15分
ランキング
-
1フジ「CMストップ大打撃」、親会社の利益ほぼ半減 「中居問題」で広告収入が200億円超も吹き飛ぶ
東洋経済オンライン / 2025年1月31日 7時30分
-
2地方の鉄道会社が執念で成功「誠実ビジホ」の実態 ものづくりの境地?静鉄ホテルプレジオの凄み
東洋経済オンライン / 2025年1月31日 8時40分
-
3《日本で最初の大規模ニュータウン》大阪の「千里ニュータウン」が限界化しない理由 1970年万博をきっかけに開業した鉄道
NEWSポストセブン / 2025年1月31日 7時15分
-
4「しれっと訂正した文春」フジとの"ズルい共通点" 批判の矛先が次は週刊文春に向かっているが…
東洋経済オンライン / 2025年1月30日 15時45分
-
5「ポケット型Wi-Fi」「ホームルーター」「光回線」インターネット回線で一番コストがよいのはどれ?比較して解説
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月30日 10時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください