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橋下徹「フジ説明拒否への疑問と文春への注文」|中居・フジ問題「私はこう考える」

文春オンライン / 2025年1月29日 12時35分

橋下徹「フジ説明拒否への疑問と文春への注文」|中居・フジ問題「私はこう考える」

フジテレビの番組にも出演する橋下氏

「腹は立つけど、文春の役割は認めないといけないと思う。報じることで、変えようという流れを作ったわけですから。でも――」

 

「週刊文春」の取材にそう語るのは、元大阪府知事・大阪市長で、弁護士の橋下徹氏(55)だ。

誤りの上書きは、読者に不誠実

 僕は、今回の中居正広さんとフジテレビの問題に関する「週刊文春」の報道については、意義や価値があったと思っています。極めて影響力の大きい芸能人に対し、テレビ局側が女性を接待要員のように扱っていたとされる疑いを問題提起し、それがトラブルにまで発展していたことを明らかにしました。中居さんは芸能界引退を発表し、フジテレビは今、一連の対応に追われています。

 旧ジャニーズ事務所の性加害問題や松本人志さんの問題と同じように、報じたことによって社会を大きく動かしました。僕も政治家だった時、私生活も含めて散々書かれました。仕方がないとはいえ、個人的な感情で言えば、文春のことは決して好きじゃない(笑)。好きじゃないけれど、報道機関として果たしている役割は認めざるを得ません。

 ただ、だからこそ、注文もあります。文春は世の中に数多ある雑誌とは違って、現実に政治家の不祥事を報じてクビを取ったり、性加害報道で社会を変えたりして、間違いなく、公共性・公益性を担う重要なメディアです。権力を持つ者が一番恐れている存在が文春だと言っても過言ではない。であるならば、世間の面白おかしい噂話を即座に報じればいいというような“便所紙雑誌”の類とは一線を画さなきゃいけない。そのために必要なのは、誤りがあれば、きちんと訂正するということです。

 第一弾の記事では、トラブルが起こった当日にプロデューサーが中居さんと被害者の女性を呼び、二人きりにさせたという趣旨が書かれていました。この記述は、フジの関与度合いという意味でも核心部分の一つです。ところが、第二弾以降の記事では、トラブル当日は中居さん本人から女性側に連絡があって、家に行ったというように前提が変わっていました。「知人の証言」という形で、しれっと誤りを上書きしていたのです。これでは、読者に対して不誠実でしょう。

 実際、ワイドショーでも出演者の多くが、フジテレビのプロデューサーが中居さんと女性を二人きりにさせたという“前提”で議論を進めていました。みんな、文春の第一報を鵜呑みにしたのでしょう。ただ、それはどうも誤っていた。

 報道は、何より事実が絶対的に重要です。もちろん、速報性が求められる中で間違えることもある。であれば、事実を訂正した上で謝るべきです。例えば、立花孝志さんも亡くなられた元兵庫県議について、任意の事情聴取を受けた上で逮捕されるという誤った情報を流していましたが、警察側が否定すると、「間違っていた」と認めたうえで謝罪しました。立花さんには様々な評価がありますが、この点においては、なかなか謝ろうとしない既存メディアより立派です。

第二弾には、重要な“前提”が

 一方で、裏取りをした結果、事実の間違いをきちんと突き止めたのも、文春の取材力あってこそ。しかも、第二弾で報じた「知人の証言」には、重要な“前提”が書かれていました。女性は、それまで「何度かプロデューサーに誘われて中居さんと食事をしていた」こともあり、仕事上の影響力を考えると、中居さんからの直接の誘いを断れなかったということです。

 これが事実なら、女性を伴うような芸能人に対する“接待飲み会”が幾度も行われていたことになる。さらに、第三弾の記事ではフジテレビの女性アナウンサーが「私も献上された」と告白していました。いずれも、非常に大きな問題提起だと思います。

 30年、40年前であれば、行き過ぎた飲み会があったかもしれない。でも、時代が移り変わっているにもかかわらず、同じような飲み会をしていたらマズいのではないか。世間も許さないだろうし、スポンサー企業も許さない。文春の問題提起を重く受け止めたからこそ、各局揃って社内調査に動いたのでしょう。

 松本さんの問題を巡る報道でも同様です。松本さんは「暴行や脅迫を示す客観証拠はなかった」と主張しましたが、飲み会での振る舞いや対応については否定しませんでした。けれど、あたかも女性の意思に反するような飲み会の文化自体が問題視されるような時代になっていた。そのことを、松本さんは見落としていたのではないでしょうか。

 文春を含め、各メディアには是非、大物芸能人に対する性接待にも繋がりかねないテレビ局の飲み会文化について、しっかり斬り込んで欲しいと思います。

 ただ、そこで一つハードルとなるのが、フジがプライバシーを盾にして、トラブルに関するあらゆる説明を拒んでいるように見えること。事情は理解できなくもないですが、報道機関としてこの姿勢には疑問を抱かざるを得ません。

ギリギリを攻めて報じるべき

 これまでメディアは、公共性・公益性が伴う問題については、当事者のプライバシーをある意味では犠牲にして報じてきました。ところが、フジは自社が関与した今回の問題について真逆の態度を取っている。これでは今後、フジの記者は取材相手にも「説明を拒む社にお話ししませんよ」と言われてしまうでしょう。

 国民的スターだった中居さんはなぜ、一斉に番組を降板せざるを得なかったのか。フジはなぜ、名立たる広告主から一斉にCMを引き上げられたのか。そして、最大のポイントと言えるのが、フジが女性から報告を受けながら、中居さんの出演を継続させた判断は適切だったのか。いずれも、報道機関が全力で取材すべき尋常ならざる事態です。

 もちろん、被害女性が傷つくような事実まで何でもかんでも報じるべき、というわけではありません。まして、仮にトラブルが極めてセンシティブなものであればなおさらです。加害者側の中居さんも守秘義務がありますから、当然、詳らかに話すことはできない。ただ、一定程度「何が起きたか」が分からないと評価しようがありません。中居さんがここまでの社会的制裁を受けるほどの事案だったのかどうか。「性加害の有無」以外は否定しなかった松本さんの時と比べても、不透明な部分が目立ちます。メディアは当事者のプライバシー保護とのせめぎ合いの中、ギリギリのところを攻めて、きっちりと報じるべきです。

 とはいえ、大手メディアの場合、プライバシー侵害だ! 人権侵害だ! という世間からの批判も怖い。僕もフジの番組では自由に発言しているつもりですが、調査権限やその能力があるわけではない。これまでの実績から見ると、世間からの批判をものともせずに斬り込んで、調査・報道していく力は、悔しいけれど文春が群を抜いています。中居さんと女性を巡って何があったのか。フジの関与はどこまであるのか。会社としての体質の問題なのか。取材を続け、読者に事実を提供して欲しいと思います。

◇◇◇

 12月26日発売号では事件当日の会食について「X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」としていましたが、その後の取材成果を踏まえ、1月8日発売号以降は「X子さんは中居に誘われた」「A氏がセッティングしている会の”延長”と認識していた」と修正しています。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 電子版オリジナル)

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