「テロ対策のプロだが経歴に傷が…」新警視総監に昇格した迫田裕治氏が監督していた“あの冤罪捜査”とは
文春オンライン / 2025年1月31日 11時0分
©AFLO
全国の警察を監督する警察庁と首都・東京を守る警察の最前線、警視庁のツートップが交代した。かねてから予定されていた人事ではあるが、人選を疑問視する声も出ている。
警察庁長官に就任したのは前任の露木康浩氏を次長として支えてきた1989年入庁の楠(くすのき)芳伸氏(58)だ。
「交通畑が長く、東京オリンピック・パラリンピックの警備や交通を無難に仕切りました。菅義偉元首相の秘書官も務め、政治との付き合い方も熟知している」(全国紙社会部記者)
「露木氏の前任は安倍晋三元首相銃撃事件の責任を取って辞任…」
勇退した露木氏は2年5カ月という異例の長期政権を築いており、一部には2月以降も続投するとの見方があった。しかし、蓋を開けてみれば当初の想定通り、通常国会スタート後、間もなくでの交代となった。
「露木氏の前任の中村格氏は安倍晋三元首相銃撃事件の責任を取って辞任。昇格したのが同期で次長だった露木氏。闇バイトなどで顕在化した新たな犯罪者らを『匿名・流動型犯罪グループ』(トクリュウ)と名付けて徹底した対策を取るなど、現場の評価は高い」(同前)
楠氏に課せられたのは治安対策の強化。露木氏の退任直前の1月23日、捜査員が身分を隠して闇バイトなどの犯行グループに潜り込む「仮装身分捜査」のガイドラインを警察庁が公表しており、着実な実行が求められている。
「石破茂首相はかなり治安対策に前のめり。楠長官の下、政府・与党と連携した治安対策が矢継ぎ早に繰り出されるのでは」(同前)
新警視総監は“テロ対策のプロ”だが、経歴に傷が…
一方、警視庁のトップである警視総監に就任したのは、1991年入庁で警察庁警備局長だった迫田裕治氏(56)だ。
「外務省や国家安全保障局への出向経験もある国際派で、外事畑が長い能吏です。特にテロ対策に関しては右に出る者がいない、とされています」(同前)
ただ、経歴に「傷がある」とするのは警察関係者だ。
不正輸出を巡る外為法違反容疑で警視庁が3人を逮捕後、起訴が取り消しになった横浜市の会社「大川原化工機」の冤罪事件を監督したのが迫田氏なのだ。
「警視庁公安部が2018年10月に同社を捜索した時点で所管官庁の経済産業省が捜査に後ろ向きで、公安部の現場の刑事らも疑問視していたことが明らかになっています。当時、警察庁の外事課長として捜査を監督していたのが迫田氏。現場指揮官ではないが、ずさんな捜査を見過ごした責任は重い」(同前)
起訴取り消しを受け、公安部は警察庁長官賞を返納。しかし、明らかな冤罪にもかかわらず、関係者を「特に処分はしていない」と、後に国会で答弁したのも警備局長に昇任していた迫田氏だ。初仕事には、冤罪を生んだ捜査の検証がふさわしいかもしれない。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年2月6日号)
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