主役でありながら目立ってはいけない…「全員が主人公」で吉野北人が背負ったこと
文春オンライン / 2025年2月1日 6時0分
©佐藤亘/文藝春秋
1月31日公開の『 遺書、公開。 』で、地味で目立たない高校生・池永柊夜(いけなが・しゅうや)を演じた、THE RAMPAGEのボーカリスト・吉野北人にインタビュー。
主役でありながら目立ってはいけないという矛盾した役柄をどう演じたのか。「全員が主人公」という作品の見どころや、演じる難しさについてもお聞きしました。(全2回の前編/ 続きを読む )
◆◆◆
あらすじ
私立灰嶺(かいれい)学園2年D組の生徒24人と担任教師に、新学期の朝、「2−D序列」と書かれたファイルがメールで届く。そこには担任教師を含めたクラス25人の名前が、1位から25位までの順位とともにならんでいた。
犯人がわからないまま一度は落ち着きを取り戻したクラスだったが、半年後、誰もがうらやむ序列1位の姫山椿が学内で謎の自殺を遂げ、彼女の遺書がクラス全員の机の上に置かれていた。
姫山はなぜ自殺したのか。そして遺書は本当に彼女が書いたものなのか。
真実を知るため、クラス全員でその遺書を公開することになるが、遺書を公開するうちに、クラスメイトは、実はそれぞれが、表には出さない裏の顔を持っていることが明らかになっていく。
「座長」や「主演」という立場を忘れようと考えた
──英勉(はなぶさ・つとむ)監督が「(吉野さんの)声を聞いたときに、“ああ、池永柊夜(いけなが・しゅうや)だ”と思った。これは絶対大丈夫、この役を背負える人だと確信した」と吉野さんの演技を絶賛されていました。オファーを受けたときの状況を教えてください。
吉野北人さん(以下、吉野) 監督は最初、僕が池永のイメージに合うかどうか、不安だったと思います。オファーをいただいたときは僕、金髪だったので、ステージ上のイメージが強かったみたいなんです。
本読みのときは黒髪にして行ったんですが、台本を読み始めたら監督がホッとした顔をされたような気がして、僕も安心しました。
──今回、吉野さんは主役でありながら、地味で目立たない序列の低い生徒という難しい役柄に挑戦されています。
吉野 そうなんです。主役なのにクラスの序列は25人中19位という微妙な……、というか、むしろ後ろから数えたほうが早いくらいの低い順位で、目立ってはいけない。難しい役だな、と思いました。
しかも、僕が演じた池永は、ずっと登場し続けるわけでもありません。原作ももちろん読ませてもらいましたが、「主役だから」と目立ったら逆に池永ではなくなってしまうので、一度「座長」や「主演」という立場を忘れようと考えました。
──それは監督からのアドバイスですか?
吉野 いいえ。それは僕が自分で考えました。でも、「座長」「主役」であることを気にしない、というのは監督も同じ意見だったと思います。というのも、今回監督は、生徒それぞれの個性がちゃんと出るようにして、いわば「全員が主役」扱いだったからです。
一人ひとりに細かくていねいに助言やアドバイスをして、それぞれのキャラクターを明確にしてくれたので、「あの人はこういう人なんだな」「この人はこういうところがあるな」というのがわかり、演技しやすかったです。
──自分以外のキャラクターを把握することが、自分の演技にも役立ったということですか?
吉野 はい。今作では全員が一度は教壇の前に立って「遺書」を発表しますが、その時ほかの生徒は自分の机に座って発表を聞いています。つまり、いま発表している生徒がどういう人なのかが明確にわかることで、その人の序列は何位だから、聞いている人はこういう雰囲気になる、という気持ちの動きや表情が想像しやすくなるんです。監督が一人ひとりを本当に明確にキャラ付けしてくれたので、それが可能になりました。
主人公は九州男児である僕に似ているなと
──吉野さんは、池永柊夜をどんな人物だととらえましたか?
吉野 池永は目立つタイプではありませんが、僕もあまり前に出るタイプではないので似ているなと思いました。外からまわりを観察している感じも一緒で、だけど、いざという時は、自分で決断して動ける。そんな「奥ゆかしいけれど実は芯が強い」みたいなところも、九州男児である僕に似ているなと感じ、違和感なく演じることができました。
あとは、正義感が強くて、少しお人好しなところも、自分と似ていると感じました。
──池永は、曲がったことや間違ったことに対しては、はっきり言うタイプですが、吉野さんもそうですか?
吉野 はい、言います。わがままは言いませんが、仕事でも自分のなかで「これは違うんじゃないか」と違和感を覚えたことは、相手がどんな人であっても必ず言います。それも僕なりの「正義感」から来ているのかもしれませんが……。
監督が毎朝メイク部屋に来てくれた
──撮影中のエピソードを教えてください。
吉野 監督が毎朝メイク部屋に来てくれて「今日はどう?」と聞いてくださることに感動しました。本当に毎朝、必ず来てくださるんです。「今日は遺書を読む日なので、こういう感じでやろうと思っています」などと、自分なりの考えやアイデアを話してから現場に入れたので、ありがたかったです。緊張感はありましたが、それがいい方向に作用して、いい雰囲気で撮影に入れたのは、監督のおかげです。
──本作はひと味違う「学園モノ」ですが、撮影現場はどんな雰囲気だったのでしょうか。
吉野 今作は大半が教室内のシーンなんですけど、教室の照明が薄暗いんですよ。だから、撮影が進むにつれ、だんだん気持ちが沈んでいきました。
最初はみんなそれなりに楽しく撮影していたんですけど、メンタル的にだんだん沈み、クライマックスに向けて緊張感も増して、どんよりした現場になっていきました。
普通は、最初は緊張して現場がぎくしゃくしたり、よそよそしさからちょっと重い雰囲気だったりしても、撮影が進むに連れてだんだん場が和み、明るくワイワイしてくるじゃないですか。それが真逆という。
でも、本番以外はみんなで差し入れを囲みながらコーヒーを飲んでおしゃべりをしたりしていました。僕も差し入れをして、現場ムード向上に一役買いました(笑)。
これまでにない、新しい演技ができた
──ご自分の「池永柊夜」をどう評価されますか?
吉野 自由にできないからこそ難しいところはありましたが、ちょっとした表情やしぐさで、自分なりの「池永柊夜」をつくれたのではないかと思います。
とても控えめなキャラクターということで、身体的表現もかなり制限があって、いつものように感情を全開で出したり、自由に表現したりができなくて、最初はすごく不安でした。「こんなんでいいのかな、もっと感情を出したほうがいいのかな」と迷うこともありましたが、そういう意味ではこれまでにない、新しい演技ができたと思います。
──本作の見どころを教えてください。
吉野 作品全体としては、僕がいい意味で地味で目立っていなくて、自分では大成功だと思っています(笑)。
教室のシーンが多いので、廿日市(くるみ/演:志田彩良)と名取(恭四郎/演:大東立樹)と一緒に、学校の帰りに寄り道をする「ロケ」シーンは、違う作品を撮っているような感覚でした。僕たちにとっても気分転換になりましたが、映画をご覧になる方たちにとってもいい息抜きになると思います。
サスペンスとしてもミステリーとしても最高に面白い作品ができたので、ぜひ映画館で観てください。
撮影 佐藤亘/文藝春秋
ヘアメイク 大木利保(CONTINUE)
スタイリスト 吉田ケイスケ
INFORMATIONアイコン
『遺書、公開。』
2025年1月31日(金)全国公開
監督:英勉/脚本:鈴木おさむ/出演:吉野北人、宮世琉弥、志田彩良、松井奏(IMP.)、髙石あかり、堀未央奈、忍成修吾/原作:陽 東太郎「遺書、公開。」(ガンガンコミックスJOKER/スクウェア・エニックス刊)/企画製作:HI-AX/製作プロダクション:ダブ/2025年/日本/配給:松竹/©2024 映画「遺書、公開。」製作委員会 ©陽東太郎/SQUARE ENIX
〈 「まだ全然高校生役いけるな」27歳の吉野北人が違和感なく「高校生」の世界に入っていけたワケ 〉へ続く
(相澤 洋美/週刊文春CINEMA オンライン オリジナル)
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