「178万円の壁」を主張する国民・玉木雄一郎を手玉に…自民・森山裕と立憲・安住淳の“阿吽の呼吸”
文春オンライン / 2025年2月7日 11時0分
衆院予算委員会で答弁する石破首相 ©時事通信社
窮地に立つ石破茂首相が頼ったのは……。月刊文藝春秋の名物政治コラム「 赤坂太郎 」から一部を紹介します。
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「議論好き」石破首相の国会答弁
「やはり総選挙は予算委員会の後にすればよかったな」
臨時国会が開かれていた昨年12月、石破は少数与党として臨んだ衆議院予算委員会の審議を乗り切り、2024年度補正予算が成立する見通しが立つと、周囲にこう漏らした。
9月の総裁選直後に、衆院解散・総選挙は国会論戦後と明言したのに、首相に就任するや予算委を開かずに早期解散に踏み切ったことが「変節」と批判され、自民党惨敗の一因となった経緯にまだ拘っているのだ。と同時に、石破本人は予算委での野党との論戦に自信を深めたと見える。
実際、臨時国会での答弁は危なげなくこなした。そもそも大の議論好き。質問をじっくり聞き、自分の言葉で滔々と答える様は、討論を楽しんでいるようにも映った。
答弁作りを担う秘書官に「お茶の間の人が聞いて『なるほど、そういうことか』と分かるような文章を心がけてくれ」と注文したが、手元の紙に目を落として答弁する場面は少なかった。
「石破論法」なる言葉も生まれた。野党議員の質問に、まず「ご指摘は謙虚に受け止めます」と下手に出て、問題の背景などを立て板に水で説明する。そして、「どうあるべきなのか」と問題意識を共有するものの、いつまでにどうするのか、言質を与えない。
立憲民主党からは「熟議の国会にふさわしくなってきた」「議事録をよく読むと質問にほとんど答えていない」と相反する評価が聞かれる。石破を攻めあぐねた証左である。
与野党が徹底論戦して合意を探ると言えば聞こえはいいが、政治から数合わせを排除することはできない。テレビやネットで中継される表の審議を尽くしたところで、双方の主張の違いが明確になるばかりで、妥協点は探れない。ならば、水面下で多数派工作を進めるほかない。
そこで石破が頼ったのは、やはり自民党幹事長の森山裕だった。補正予算案が混乱なく衆院を通過し、成立したのは、森山が立憲と国民民主党を両天秤にかけた調整が奏功したからだ。
まず森山は、国民が唱える「年収103万円の壁」引き上げについて、政治決着を急いだ。12月11日、自公国幹事長は制度の詳細や財源はさておき、178万円を「目指して」2025年から引き上げることに合意した。石破は178万円を「目指して」という玉虫色の表現に膝を打ったという。
野党を手玉に取った森山
国民の幹事長の榛葉賀津也は3党合意に署名すると、補正予算案に賛成する方針を表明。不倫で役職停止中の党代表、玉木雄一郎も得意満面だった。
その直後、衆院予算委理事会で与野党が補正予算案の採決に円満合意した。自公が立憲の要求を受け入れ、能登地域の復興経費を1000億円積み増したからだ。立憲は28年ぶりの予算修正を「勝ち取った」(代表の野田佳彦)と胸を張った。石破政権とすれば、国民の賛成方針が変わらないうちに、補正予算案を衆院で通過させたい。そのために立憲への手土産として1000億円を積み増したのだ。
補正予算案の衆院通過から5日後、三党税制調査会長の協議で、自公は改めて国民に123万円への引き上げを提案。178万円に遠く及ばないことに反発した国民は協議を打ち切ったが、時すでに遅し。自民内には「森山さんが野党を手玉に取った」(中堅議員)との声も上がった。
立憲側で森山と非公式に交渉したのは、予算委員長の安住淳だとみる向きが多い。両者は安倍・菅政権時代に自民、立憲の国対委員長を務め、長く気脈を通じているからだ。
キャスチングボートを握っているが故に、高い要求を一切譲らず、財源には責任を持たない国民に、自民では苛立ちが募っていた。立憲にも個人プレーに走る玉木への嫉妬がうずまく。自民、立憲が手を握れば、国民の影響力は一気に低下する。森山と安住は「阿吽の呼吸」で、補正予算案の修正と採決を同時決着させたとの見立てだ。(文中敬称略)
※月刊文藝春秋の名物政治コラム「 赤坂太郎 」全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「 文藝春秋PLUS 」で公開中です。全文では、立憲・小沢一郎と接触する国民・榛葉賀津也の思惑、選択的夫婦別姓の問題を政局に持ち込むか否か、「高市政権にするしかない」発言などについても語られています。
(赤坂 太郎/文藝春秋 2025年2月号)
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