ニセ活仏として約43億円を荒稼ぎ…日本では報じられない中国の面白すぎるB級ニュース
文春オンライン / 2025年2月7日 6時10分
『民族がわかれば中国がわかる』より
経済発展を遂げた中国は、人々の感覚も洗練されかつてのような極端なエピソードは語られなくなったが、それでも面白い話があるという。大宅賞作家・安田峰俊が上梓した『 民族がわかれば中国がわかる 』より一部抜粋。日本では報じられない中国のB級ニュースをご紹介する。(全2回の前編/ 続き を読む)
◆◆◆
「組織利用邪教破壊法律実施罪」ほかで懲役25年
中国でもっとも面白いもののひとつが、現地のB級ニュースである。
かつては湖北省武漢市に偽物の人民解放軍が駐屯していて地域住民も3年間にわたり信じていた(1989年)とか、山西省太原で学生600人を集めて5年間にわたり開学していた人民解放軍空軍学校を名乗る教育機関が実はニセ学校であることがバレて閉鎖に追い込まれた(2004年)といった、スケールの大きな話が多かった。
ただ、近年は中国経済が発展を遂げて人々の感覚もスマートになったことで、これほど極端なエピソードはめったに聞かれない。
とはいえ、それでも面白い話はある。
たとえば2021年2月、山東省済南市の裁判所が、王興夫という初老の男に懲役25年の重刑を言い渡した一件だ。起訴容疑は違法経営罪・強姦罪および強制わいせつ罪――と、これだけならばありふれた事件に思えるが、彼に対してはさらに、「組織利用邪教破壊法律実施罪」という日本人には耳慣れない罪状も挙げられていた。
中国側の報道によると、王興夫は漢族であるにもかかわらず、四川省甘孜チベット族自治州の4名刹で修行したチベット仏教の活仏「洛桑丹真」を自称。チベット族(蔵族)としてのニセ身分証も取得していたという。
活仏はチベット仏教を特徴づける存在だ。日本語では漢字のイメージから「生仏」という訳語が充てられることもあるが、この表現はあまり正確ではなく、学術的には「化身ラマ」と呼ばれることが多い。すなわち、この世の一切衆生が悟り救われるまで、如来や菩薩の化身として輪廻転生を続けているとみなされた高僧のことである。
活仏といえば、日本ではチベット亡命政府の指導者であるダライ・ラマ14世のイメージが強い。だが、実はチベット仏教の世界における活仏はかなり一般的な存在であり、中小寺院のマイナーな活仏を含めると、千数百以上の名跡が存在する。とはいえ、もちろん個人が好き勝手に名乗れる肩書ではない。
ニセ活仏として約43億円を荒稼ぎ
王興夫はもともと気功師だったが、中国政府が法輪功(党体制に敵対的な気功集団)を弾圧して気功が当局から睨まれた2000年から、インチキ仏教ビジネスに鞍替えしたらしい。中国側の報道によれば、彼は2008年に甘孜州石渠県にあるゲルク派のチベット仏教寺院・俄若寺を訪問、寺院側の協力者の助けを得て「洛桑丹真」「降巴洛桑丹真」というチベット名の2種類の身分証を得たという。
王興夫はそれからニセ活仏としての活動を通じて1.98億元(約42.53億円)を荒稼ぎし、12物件の不動産を取得。彼の「宗教活動」は軌道に乗り、瀋陽・北京・済南・成都など全国8ヵ所に道場を設けて、中国全土から信者3000人を集めた。
彼は潅頂(香水を頭に落とし仏縁を結ぶ密教の儀式)1回につき5万元(約107万4000円)のお布施を受け取り、ネットショップで購入した100元(約2148円)程度の壺を数千元で信者に売るなど、好き勝手をやっていたらしい。報道によれば、若い女性信者数人にマインドコントロールを施し、性的暴行も加えていたとされる。
(ただし、中国当局は「迷信」「邪教」の信奉者や民主化活動家、汚職官僚などの政治的に攻撃したい相手について、金銭スキャンダルや性的な不行跡をでっちあげて評判を落とすプロパガンダをしばしばおこなう。実際の被害金額や性的暴行の有無については不明である。)
〈 北京語と広東語はドイツ語と英語くらい違う?…ニッポン人が知らない“現代中国の方言事情” 〉へ続く
(安田 峰俊/Webオリジナル(外部転載))
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