抗がん剤を切り替えたら「ラクダを連れて歩いている感覚」に…余命半年宣告の医療ジャーナリストが体感した“意識レベル”の変化
文春オンライン / 2025年2月5日 6時0分
主治医の小路医師 ©文藝春秋
医療ジャーナリストの長田昭二氏(59)は「余命半年」の宣告を受けながら執筆活動を続けている。今回は、2025年を迎えての体調や意識の変化について綴った。
◆◆◆
経口の抗がん剤を切り替えることに
1月も東海大学医学部附属病院に行ってきた。
まず1月15日の水曜日。
この日は口腔外科だけの受診で、予定していた右下の一番奥の歯を抜いた。
元々ぐらついていた歯なので、麻酔こそ打ったものの、特に苦痛なく抜くことができた。
抜いたところは縫合し、1月22日の水曜日に再度受診し抜糸してもらった。
これで右あごの痛みが「顎骨壊死」「がんの転移」「歯槽膿漏」のいずれなのかがハッキリするのかと思っていたが、実際にはさらに2週間ほど様子を見ないと分からないとのこと。
いろいろと面倒な痛みである。
この日は抜糸したあとで採血してもらい、今年最初の腎泌尿器科外来を受診。主治医の小路直医師とも今年初対面だ。
「今年もよろしくお願いいたします」
もしかしたら年内のどこかで力尽きるかもしれないのだが、そんな説明をこまごまとさしはさむのも野暮なので、とりあえず一年分をよろしくお願いする旨の挨拶をする。
気になる血液検査の結果だが、PSA(前立腺特異抗原=腫瘍マーカー)は21.0。前回の18.6から2.4ポイントの上昇だ。人がだるさに耐えて年賀状を書いている間も、がん細胞たちは勢力拡大の手を緩めてはいなかったのだ。どうやら彼らにお正月休みはないらしい。
「体調はいかがですか」
「とにかくだるくて仕方ないのです」
昨年末に経口の抗がん剤「ザイティガ」から「イクスタンジ」に切り替えたのだが、それ以降だるくてだるくてどうしようもないのだ。
仕事をしていても「意識はふわふわ、身体は鉛」
まず、朝目が覚めても起き上がれない。休みの日などはそのままだるさに負けて夕方まで横になったままのこともある。
そうも言っていられない日は頑張って起き上がるのだが、食欲はないし、何よりつねにボーっとした状態に支配されている。
原稿を書いていても編集者と打ち合わせをしていても、意識がボーっとしている。
人と話しているときはちゃんと会話は成立しているし、相手にも失礼のない対応を取っている。なのに話した内容は話したそばから忘れていく。だからせっせとノートにメモを書いていく。最近やけにノートの減りが早いのだ。
いま感じている「意識がボー」は、徹夜した翌日に現れる「砂漠でジャンピングシューズを履いて、ラクダを連れて歩いているような感覚」に似た、ふわふわしたもの。
意識はふわふわしているのに体は鉛のように重く感じられるので、歩いているとふらふらする。
「ふわふわ」と「ふらふら」が融合すると「よろよろ」となって「いろいろ」と危ない。
わが家の前の道は狭い一方通行なのだが、比較的車通りが多い。背後から車が近付いてきたので道のわきによけて歩いていると、よろめいて車に接触しそうになる。だから最近は歩きながらよけるのではなく、完全に立ち止まって車を先に行かせるようにしている。
歩く速度も落ちている。歩いている僕を抜いて行く人はたくさんいるが、僕に抜かれる人は一人もいない。
なにしろ僕はラクダを連れて歩く身なので、急いでいない。
急いで歩けばよろけるか息切れを招いて座りこむことになってしまう。
「ラクダがいたら乗せてもらうのにな……」
などと考えながら四谷の町をよろよろ歩く医療ジャーナリストに未来はあるのだろうか……ないな。
この訴えを聞いた小路医師は、経口の抗がん剤を「イクスタンジ」から元の「ザイティガ」に戻す決断を下してくれた。
ちなみに今回の検査では。ヘモグロビンの値も9.2と、前回の10.3から1.1ポイントも落ちている。
そこでこちらからお願いして、2月7日の口腔外科受診のあとで輸血してもらうことになった。
薬を元に戻して輸血をしてもらえれば、かなり意識はハッキリするはずだ。
※長田昭二氏の本記事全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「 文藝春秋PLUS 」に掲載されています。全文では、遺言状作成の進捗、ラジオ番組への出演とその余波、主要取引先「夕刊フジ」との長い付き合いなどについて語られています。
■連載「 僕の前立腺がんレポート 」
第1回「 医療ジャーナリストのがん闘病記 」
第2回「 がん転移を告知されて一番大変なのは『誰に伝え、誰に隠すか』だった 」
第3回「 抗がん剤を『休薬』したら筆者の身体に何が起きたか? 」
第6回「 ホルモン治療の副作用で変化した「腋毛・乳房・陰部」のリアル 」
第7回「 恐い。吐き気は嫌だ……いよいよ始まった抗がん剤の『想定外の驚き』 」
第8回「 痛くも熱くもない〈放射線治療〉のリアル 照射台には僕の体の形に合わせて… 」
第9回「 手術、抗がん剤、放射線治療で年間医療費114万2725円! その結果、腫瘍マーカーは好転した 」
第11回「 『ひげが抜け、あとから眉毛とまつ毛が…』抗がん剤で失っていく“顔の毛”をどう補うか 」
第18回「 『余命半年』の宣告を受けた日、不思議なくらい精神状態は落ち着いていた 」
第19回「 余命宣告後に振り込まれた大金900万…生前給付金『リビングニーズ』とは何か? 」
第21回「 仕事をしても『意識はふわふわ、身体は鉛』…がん細胞は正月も手を緩めず、腫瘍マーカーは上昇し続けた 」
(長田 昭二/文藝春秋 電子版オリジナル)
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