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「殺すぞ」「くたばれ」と暴言、トイレに閉じ込められたことも…さいたま市の小4男子が受けた“壮絶なイジメ”と驚くべき学校の対応

文春オンライン / 2025年2月9日 11時10分

「殺すぞ」「くたばれ」と暴言、トイレに閉じ込められたことも…さいたま市の小4男子が受けた“壮絶なイジメ”と驚くべき学校の対応

Aくん

「死ね」「殺すぞ」「くたばれ」――。

 さいたま市に住むAくんは、小学校4年生の2022年4月からクラスメートから何度も暴言を言われる、殴られるなどのイジメを受け、不登校になった。Aくんが受けたイジメについて、母親はこう語る。

「4年生で同じクラスになったBという男子にターゲットにされ、『死ね』『くたばれ』などと何度も言われ、中指を立てられることもあったようです。Aは、イジメが始まるとすぐに『学校に行きたくない』と言うようになりました。担任に電話や連絡帳で『クラスの子からお腹にパンチされた』など状況を説明し、学校まで付き添うこともありましたが、状況は改善しませんでした」

 4月に始まったイジメは徐々にエスカレートし、5月頃には暴力も振るわれるようになっていた。母親はその時期も担任に相談を続けていたが、6月の休み時間中には、5分間にわたってトイレに閉じ込められる事件が発生した。

「休み時間にトイレに行ったところ、Bに個室の外からドアが開かないように押さえられ、何度押してもドアが開かず閉じ込められました。『助けてー!!』と声をあげたそうですが、チャイムが鳴り休み時間が終わっても誰も来なかったと言っていました。結局、Bがドアから離れるまで出られませんでした」

 次第にAくんが「学校に行きたくない」と言う頻度は増えていった。Aくんが受けたイジメは以下のようなものだ。

7月 突然お腹をパンチされ、何度も腕を殴られる。
9月 校庭で泥を投げられ、Tシャツを汚される。
  体育の時間に「お前は役に立たない」「お前女かよ、死ね」と言われる。
  遠足で階段を登ってるときに上から押される。遠足の帰り道に腕を何度も殴られる。
10月 上履きを投げつけられ、「死ね」と言われる。教室で足を蹴られる。

 そして10月には、授業中に怪我をして帰宅する事件も起きた。

「図工の授業中に、Bに顔を箒で殴られたというんです。その日は担任から状況報告と『相手の親にもこの件を伝えた』と留守電が入っていました。箒で殴られた頬骨の部分が赤くなっていて、Aも痛いと言うので夜間救急を受診しました。骨に異常はなく、打撲の診断でしたが、Bの親からの連絡はありませんでした」

 Aくんへのイジメがエスカレートする中、母親は学校に何度も相談し、登校に付き添うなど思いつく限りの対策をしていた。

「Aにも『何かあったら先生に言いなさい』と教えていました。暴言の内容がひどかったので、担任に、Bの保護者にもイジメのことを伝えて欲しいとお願いもしています。しかし担任は協力的とは言い難い反応でした。Aに対してもそうで、勇気を出して『死ね』と言われたことを伝えた時は、担任は『死んでないから良いじゃないですか?』と言ったというんです。階段で押されたときも『気にしすぎです。気にしない』と」

「いじめで間違いないですか?」「いじめ……本人がそう思うなら」

 しかし実は、学校側はAくんが受けていた行為を6月の「トイレ閉じ込め」の時点でイジメと認定して調査を開始していた。

 いじめ防止対策推進法では、いじめが発生した場合、学校が調査を行うことが義務づけられている。学校側は校内のいじめ対策委員会で調査を実施し、さいたま市に報告も行っている。

 ただ同時にいじめを受けたAくんや保護者への支援や、加害行為を行った児童に指導をする必要もあるが、Aくんや保護者は調査を行っていることを伝えられていなかったという。

「学校は6月にいじめを認知したようですが、それを私たちが知ったのは10月にかかってきた市の教育委員会からの電話がきっかけでした。直後に担任に電話をして『この件は、いじめで間違いないですか?』と聞くと、『いじめ……本人がそう思うなら』と答え、ようやく認めたんです。なぜ6月にいじめを認知した時点で伝えなかったのかと学校に問いただすと、『「いじめ」という言葉は使わずに伝えていた』と言われました。とはいえ、学校がいじめを認知した後も、暴言・暴力は止まず、Aは2学期の途中から学校へ行けなくなったのです」

 筆者がいじめの問題を取材していると、当事者の子どもや保護者が「いじめ」という言葉を使わなかったという理由で「いじめ」と認定しない学校や教育委員会が多くある。しかし、Aくんの学校の言い分は、「いじめ」という言葉は使っていないが、「いじめ認定」について保護者に説明はしていた、というものだ。

「階段から突き落とされそうになった」ことなどはいじめと認定されたが…

 しかし保護者にしてみれば、学校が「いじめ」という言葉を使わない状態では事態をどう認定され、どんな対処が取られるのかは曖昧でわかりづらい。「いじめ」という言葉を明示しなかった学校の対応には落ち度があると言わざるを得ない。

 10月に「いじめ」としての対処が始まっていることを知ったAくんの母親は、いじめの疑いがある数十件についての調査を望んだが、翌年2月に作成された報告書では以下の6つの行為が「いじめ」と認定されるに留まった。

1. BがAくんに対して「死ね」という言葉を繰り返した。
2. BがAくんに対してお腹をパンチしたり、ちょっかいをだしてきたりした。
3. 運動会の練習中にBが使用していた太鼓のバチがAくんにあたった。
4. Aくんがトイレに入っている際に、Bがドアを叩いたり、外側からドアを押さえたりした。
5. プラネタリウム学習の際、鉄道博物館駅の階段でBに突き落とされそうになった。
6. 図工の時間、Bが振り上げた小さな箒の先がAくんの顔に軽く当たってしまった。

 調査開始当初、学校は「いじめと欠席日数(不登校)は関係ない」といじめと不登校の因果関係を認めていなかったが、後に「Aさんは不安が残ったまま学校生活を送った結果、適応障害と診断され、登校することができなくなり、(中略)相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある」(校内いじめ対策委の報告書)と不登校との関係も認めた。

 しかしAくんの母親は内容が不十分だとして第三者による調査委員会の設置を求めた。

「12月に校長から『今回のいじめは重大事態と同様として捉えている』と伝えられましたが、重大事態としての調査はされませんでした。Aは全部で数十件の暴力や暴言の被害を受けています。授業中に殴られた際には警察に被害届を提出し、傷害で受理されました。その時は警察が学校まで実況見分にもきたのですが、報告書では軽微なもの6件しか認定されていません」

 Aくんがいじめを受けていたことが学校に認知され、調査が始まってからも、いじめそのものに対して効果的な支援はなされず、結局Aくんは12月6日から翌年の3月9日までのほとんどの期間不登校になってしまったのだ。

〈 「イジメ」で不登校に追い込まれた小6男子が書いた“切実すぎる卒業文集”に校長が発した「驚きの一言」とは 〉へ続く

(渋井 哲也)

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