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「イジメ」で不登校に追い込まれた小6男子が書いた“切実すぎる卒業文集”に校長が発した「驚きの一言」とは

文春オンライン / 2025年2月9日 11時10分

「イジメ」で不登校に追い込まれた小6男子が書いた“切実すぎる卒業文集”に校長が発した「驚きの一言」とは

Aくんがイジメからの立ち直りを書いた「笑顔」という題の作文

〈 「殺すぞ」「くたばれ」と暴言、トイレに閉じ込められたことも…さいたま市の小4男子が受けた“壮絶なイジメ”と驚くべき学校の対応 〉から続く

 さいたま市に住むAくんは、小学4年生になった4月からイジメを受け、12月から翌年3月までのほとんどを不登校として過ごした。3月からは登校を再開し、今年の3月には卒業を控えている。しかし心のダメージは大きく、卒業文集の作文を書くことになった際、イジメの経験を書くと決めた。

 しかし学校側は、イジメに言及した内容に難色を示し、内容を変更するよう要請したという。

 卒業文集のテーマは「イジメの経験と、それを通じて気づいた笑顔の大切さ」というもので、作文のタイトルは「笑顔」だ。その中で、次のようにイジメの体験が書かれている。

教師に言われた「死んでないからいいじゃないですか!」

<僕は、四年一組の時にクラスメイトの二人から暴力と暴言のイジメを受けました。クラスメイトから『死ね』と言われた時に担任の先生に助けてほしくて言いに行ったら『死んでないからいいじゃないですか!』と言われ、暴力を受けた時には、『あなただけじゃないです』と言って助けてもらえなくて悲しかったです。

 クラスメイトからなぐられた次の日には加害者の親に『許して』とクラスのみんなの前で泣かれてとてもいやな気持ちになりました。辛い事が続いて、僕は学校に行くと頭やお腹が痛くなって学校に行けなくなりました。

 僕のイジメの事が新聞の大きな記事になったのを見て先生はイジメじゃないと言ったけどやっぱりイジメだったんだなと思いました>

 なぜ、この作文が「笑顔」というタイトルなのか。それは、イジメ体験の後に書かれている。

<学校に行けなくて辛い時、笑う事もできなかったけど、僕のために学校に何度も話しに行ってくれた人がいた事を知った時、友達や学童の先生、家族が心配して声をかけてくれたのがとてもうれしかったです。僕は、たくさんの人に支えてもらって生きてこれたのでこれからは僕もいつか恩返しできるように努力していきます。

『笑う門には福来る』のことわざを信じて、僕は、笑顔を大切に生きていきます>

 Aくんが書いた作文は、イジメ被害体験は書かれているものの、その体験を前向きに捉えようとしている内容だ。しかし校長は、「個人特定につながる」という理由で内容の修正を求めたという。しかしAくんと保護者は強硬に反発し、代理人弁護士を介してやりとりした結果、Aくんが書いた作文のままで掲載されることになった。

「いじめの加害児童について実名で書いているわけではなく、内容的にも辛い経験をなんとか前向きに捉えようという内容のものです。それなのに内容の変更を要求され、納得できませんでした」(Aくんの母親)

 4年生の時にAくんが受けたいじめについては、現在も調査が続いている。

 6年生になった年の8月にさいたま市の教育委員会が調査に着手し、10月には「いじめ重大事態」と認定。その後、第三者による調査委員会(第三者委員会)が設置された。

「教育委員会の対応自体も調査対象になると思うのですが…」

 その第三者委の方向性を決める要因の1つに、調査委員の人選がある。この人選についてもAくんの母親は希望を出し、一部認められた。

 文科省の、当時の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(2017年3月)では、調査組織は「当該いじめの事案の関係者と直接の人間関係又は特別の利害関係を有しない者(第三者)」によって構成することとされている。ただし、第三者のみで構成するか、教育委員会が主体となったうえで第三者が加わる体制にするかは、学校や設置者の判断に任されている。

「Aが受けたイジメに対する教育委員会の対応自体も調査対象になると思うのですが、第三者委員会の主体が教育委員会自身だったんです。私たちは他県の弁護士の先生やNPO法人を入れてくれるようにリクエストしたのですが、一度は『中立公正ではないからダメ』と言われました。しかし他県でNPO法人が第三者委員会に加わっている例を伝え、今は協力してくれるNPO法人を探し、認められました」

 またAくんと母親は、イジメがあった事実や「いじめ重大事態」と認定されて調査が行われていることを説明する文書を同級生やその保護者に対して配布してほしいと学校に伝えてきたが、卒業を間近に控えた現在まで実現していない。

 イジメについての文書を配布してほしいというのには理由がある。

「Aが4年生でイジメを受けた時、学校は加害児童のBに他の学級に移る提案をしたのですが、断られています。そのため、今度はAが他の学級に移るのはどうかと提案されたんです。Aの意思を確認すると『他学級での学習はしない』というので、学校に断りの連絡をしました。ただその日、教頭先生が別のクラスでAの名前を出して『このクラスで学習するかもしれない』と話していたんです」

「Aはもうすぐ卒業してしまいます。なんとかその前に…」

 その後、Aくんの母親は学校と話し合い、Bが他のクラスに移ることを提案してもらい、Bの保護者も一度は了承し、最終的にBは保護者の希望で別室登校となったという。

「Aが4年生の12月に不登校になって以来、初めて学校に行った翌年3月9日に、担任にはイジメがあったことを同級生に説明するように求めていました。しかし結局、担任はイジメのことは触れずトラブルを回避するためという説明をしたんです」

 Aくんの母親はその後も、学校側に対して、きちんとした説明をクラスにしてほしいと願っていた。しかし現在まで、学校側から公式にAくんが受けたイジメについての説明は行われていない。Aくんの母親がイジメを説明した文書の配布を希望しているのはそのためだ。

「Aはもうすぐ卒業してしまいます。なんとかその前に、この学校でイジメがあり、いじめ重大事態と認定され、現在まで第三者委員会が調査している事実を公表してほしいと思っています。学校側は『過去に新聞などで報道された記事と結びつけられて取材が来てしまう』と言うのですが、いじめの事実を風化させたくはないですし、加害者には粛々と受け止めてほしいと思っています」

(渋井 哲也)

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