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「尾行されているな」と思ったらどうする? 『VIVANT』監修を務めた公安OBが教える2つの撒き方「公共交通機関で…」「鏡やガラス窓を…」

文春オンライン / 2025年2月12日 6時0分

「尾行されているな」と思ったらどうする? 『VIVANT』監修を務めた公安OBが教える2つの撒き方「公共交通機関で…」「鏡やガラス窓を…」

©AFLO 写真はイメージ

〈 「これはお国にとっても重大なことだから」と3人の男に説得され…吉田茂邸に住み込みで働いていた“純朴なお手伝いさん”の驚くべき正体 〉から続く

 スパイやテロリストの行動を追尾し、不正な情報漏出や破壊活動を防ぐ「外事警察」と呼ばれる警察部門が存在する。中でも、警視庁の公安部外部課はドラマ『VIVANT』(TBS系、2023年7月~9月放映)に登場したことでも注目を集めた。 

 ここでは、警視庁公安部外事課のOBであり、『VIVANT』の公安監修者を務めた勝丸円覚氏が「カウンターインテリジェンス」の世界について明かした『 公安外事警察の正体 』(中央公論新社)より、一部を抜粋して紹介する。プロが語る尾行の手法と「撒き方」とは――。(全4回の3回目/ 続き を読む)

◆◆◆

尾行を成功させる3原則

 情報収集や尾行といった話をすると、しばしば聞かれるのが、「どうやって尾行するのか」「どうやって撒くのか」である。

 尾行がいいことに使われるとはあまり思えないが、「情報を集める」、「目立たない」、「行動を予知する」という原則は知っていていいと思う。

 まず、闇雲にターゲットを追いかけようとしても、それは不可能だ。よく使う交通手段は何か? 性格は外向的か、それとも内向的か? どのような場所へ行くことが多いか? これらの情報集めがないと、尾行は難しい。

 たとえば、自転車で尾行する気で用意していても、相手がバイクに乗って移動するのであれば太刀打ちできないだろう。徒歩と電車の組み合わせは都会ではよくあるが、特に電車のような狭い空間ではどう距離をとるかは、難しい問題だ。

 次に、「目立たない」。「同じ人だ」と相手にわからないように、変装することなどもあるかもしれないが、目的は目立たないことだ。これ見よがしにサングラスにマスクを着け、帽子を被っていたら怪しいだけだ。たとえば冬場に色の濃いサングラスはミスマッチだし、夏場にウールのハンチング帽も奇妙だろう。相手が行くような場所で、周囲に自然に溶け込める格好は何か、情報収集と並行して服装や動き方を更新していかなければいけない。

 そうしたことを心掛けていると、自然に相手の行動を予知できるようになってくる。今日の格好だと、どうやら比較的落ち着いた、しかしお洒落な街に食事にでも行くようだな、あの人の場合だと神楽坂が多いな、などといったことである。ここまで行けると、少なくとも素人相手だと、尾行は成立しやすくなる。

尾行されたくなかったら…

 尾行されたくない人は、これを逆に考えよう。「情報を収集させない」「目立たない」「行動を予知されない」が原則、ということになる。

 最近はネットでも注意喚起が盛んになってきたが、SNSを頻繁に更新し、特に写真投稿が多い人は、「情報収集してください」と言っているようなものだ。趣味は何か、どこに行きがちか、どの沿線に住んでいるか、断片的な情報でも数が集まれば推測は容易だ。インスタグラムやX(旧ツイッター)でそういった使い方をしている人はただちに実名をやめ、非公開アカウントに切り替えることを推奨したい。

「目立たない」というのも同様だ。派手な服を着てはいけないということではなく、周囲の環境にあったものを選ぶのが重要だ。表参道や銀座ではハイファッションに身を包んでいても周囲に馴染むだろうが、霞が関では浮いてしまう。

 服だけではない。時計、車、バッグ、靴、髪の色。外見だけでも要素は多くある。自分に特徴的なものはいったいなにか、たまに振り返ってみるのは、防犯対策としてもいいことだ。もっとも、飛びぬけて背が高いなど、隠しようがない身体的特徴があれば、嫌でも目立ってしまう。そういう場合は、別の対応を優先して考えるしかない。

 そこで重要になってくるのが、「行動を予知させない」ことだ。たとえば、家から駅までの移動経路を2パターン、3パターン持っておく。ルートだけでなく、手段も徒歩と自転車、などと変えてみる。あるいは行動の時間を変える。たまには家を早く出て、職場や学校近くのカフェに寄ってもいいだろう。退勤時も同じように、パターンを複数持って、自在に変えてみる。これだけで、尾行のしにくさは大幅に上がる。

 ここにさらに、場所と衣服の組み合わせ、マスクやサングラス、場合によっては伊達メガネの装着など、外見的特徴に変化をつけるとずいぶん追いにくくなる。

尾行の撒き方

 それでも「尾行されていそうだ」と思ったら、どうすればいいか。ふたつ、簡単な方法をお教えしよう。ひとつは、公共交通機関(電車やバス)の、扉が閉まるギリギリのタイミングで降りて、乗り換えることだ。ギリギリのタイミングでぱっと電車を降りるあなたを、尾行者があわててついて降りてきたら、それはかなり間抜けな尾行者だ。

 もうひとつは、鏡など、後ろを振り返らずに相手の顔を見られるポイントをいくつか持っておくことだ。「変だな」と思ったら、たとえば鏡のあるエレベーターや、鏡面仕上げになっているエスカレーターのガラス窓などで確認するといい。

「不審だな」と思えば、コンビニやホテルなど人のいるところに逃げ込んで警察に相談しよう。「危ない」と思ったら、ひとりで対処しないのが、何事においても重要だ。

 ところで、本庁の公安は、各警察署から選抜されたメンバーが集まる場所なので、実績もプライドも高い。辛い仕事ではあるのだが、自分から辞める人はほとんどいない。プライドの塊みたいな人が多く、一匹狼タイプの人がほとんどだ。同僚同士でもお互いをライバル視しており、非常にピリピリした空気が流れている。

 だからもし、「尾行を撒かれた」というようなことがあれば、かなり屈辱的な場面になる。ごく稀にある職場の飲み会などで、「おい、あの尾行、撒かれたんだってな」などと口に出しようものなら、つかみ合いになることもある。プライドの高い人間の、「あるある」かもしれない。

〈 「テッパンはジャパニーズ・ウイスキーと…」『VIVANT』監修も務めた公安OBが明かす、海外で情報収集のために使った“プレゼント”とは 〉へ続く

(勝丸 円覚/Webオリジナル(外部転載))

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