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明るいバスケ少年がなぜ…長野3人殺傷事件、46歳犯人が「借金地獄」に落ちるまで

文春オンライン / 2025年2月9日 17時0分

明るいバスケ少年がなぜ…長野3人殺傷事件、46歳犯人が「借金地獄」に落ちるまで

捜査員に囲まれ自宅を出る矢口容疑者

「近隣トラブルなどはなく、会えば挨拶を返してくれました。普通の人という印象です。ただある日、彼宛に届けられた“あるもの”が目に入ってしまって……」

 長野駅前で3人が死傷した通り魔事件。殺人未遂の疑いで逮捕された矢口雄資(ゆうすけ)容疑者(46)と同じアパートの住民は、逮捕前の生活状況について重い口を開いた。

◆ ◆ ◆

「リレー捜査」で容疑者を特定、約83時間後の逮捕劇

 地元記者の解説。

「長野駅善光寺口にあるバス乗り場で、22日午後8時ごろ、男女3人が刃物で襲われ死傷する通り魔事件が発生しました。この事件で、長野市内に住む丸山浩由(ひろよし)さん(49)が胸などを刺され死亡。現場は帰路につく会社員や観光客で賑わうエリアですが、規制線が張られた駅ビルの入り口には血溜まりも残っており、騒然としていました」

 事件直後、矢口は現場から逃走。県警は220人態勢で捜査本部を設置し、近隣住民への聞き込みや周囲の防犯カメラ映像を繋ぎ合わせる「リレー捜査」で容疑者を特定した。逮捕は26日午前7時13分。発生から約83時間後の逮捕劇だった。

「逮捕は長野県警の特殊捜査班『NSIT』が中心となって対応しました。長野市内にある容疑者の自宅に突入した際にはチェーンソーや強い光を放つ閃光弾を使用。容疑者は連行される際、取り乱すことなく素直に応じたそうです」(同前)

 矢口が逮捕された26日には奇しくも、刺されて亡くなった丸山さんの葬儀が長野市内で営まれた。丸山さんの知人が、憤懣やるかたない様子で漏らす。

「行きつけのスポーツバーで、丸山さんは初めて店に訪れた人をダーツに誘うなどフレンドリーで優しい人でした。地元の少年サッカーチームでコーチをしていて、サッカー日本代表戦のパブリックビューイングにも来ていた。常連のみんなから好かれていました。なぜ彼が殺されなければならなかったのか……」

学生時代は明るい性格で、全体的にソツがない

 無辜の命を奪った矢口とは一体、どのような人物なのか。中学、高校の同級生が証言する。

「学生時代は明るい性格で、コミュニケーション能力が高かった。小学校の時の夢は教師、中学時代はバスケットボール部に入っていました。勉強も学年の『中の上』から『上の下』で、全体的にソツがない印象。東京電機大学の理工学部に進学しました。今回の事件に結びつくような行動は思い当たりません」

 矢口の生家の近くに住む人物は、矢口が育った家庭環境について説明する。

「(矢口が)大学生のころ、お母さんが乳ガンで亡くなった。まだ52歳でした。3人兄弟でしたが、お父さんが男手一つで子どもたちを支えていた。お父さんは長野駅前で時計屋を営んでいます。婿入りして店を引き継いだ。80年以上続く、かなりの老舗です」

 前出の同級生は、社会人になった20代の矢口にも邂逅している。最後に会った日を振り返り、嘆息する。

「(会った時は)普通でしたよ。病んだり、何か変わったな、と思うことはありませんでした。千葉でIT系の会社に勤めているとも聞いていました。30代、40代に何か大きな挫折や、転落を味わってしまったのでしょうか……」

 同級生も首を傾げるほどの急変ぶり。小誌が取材を続けると、逮捕直前の生活ぶりが浮かび上がってきた。

生活保護、借金の督促状…困窮した暮らしぶり

 まずは住居。矢口が住むアパートは築29年のワンルームで広さは20㎡あまり。同様の間取りの部屋は、家賃3万円ほどだ。このアパートに住む別の住民が説明する。

「至って普通のワンルームですが、壁が薄くて隣の部屋のテレビ音や電話が聞こえてきます。あまり大きな音を立てないよう、少し気を使って生活してますね」

 金銭的に困窮していたと見られ、「生活保護を受けていた、という捜査関係者からの情報もある」(前出・地元記者)。さらに冒頭のアパート住民は、金銭事情を窺わせる物的証拠を目にしていた。

「ポストからは、債権回収業者から送られたとみられる借金の督促状が何通もはみ出していました。また、別の日には〈父より〉と始まり、〈郵便受けの中を見て〉〈電話もお願いします〉と書かれたメモも貼られていました」

 公的扶助を受けながらも、借金地獄に喘いでいたと見られる矢口。高齢の父から差し伸べられていた「助言」も虚しく、追い詰められた末に凶行に走ってしまったのだろうか。

 28日朝、矢口の父親が1人で暮らしているという市内の実家を訪ねたが、インターホンにも反応はなかった。

事件については黙秘

 前出の地元記者が続ける。

「矢口は取り調べで会話には応じるものの、事件については黙秘を貫いています。捜査本部は殺人を含む余罪の立件に向け、丁寧に裏取り捜査を進めています」

 明るい性格でみんなから好かれていたバスケ少年はなぜかくも転落してしまったのか。余罪の立件だけでなく、動機や背景の解明も待たれる。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年2月6日号)

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