「日産・内田社長は自力再建派の役員を制御できなかった」日産が協議打ち切りを急いだ“本当の理由”
文春オンライン / 2025年2月13日 6時0分
![「日産・内田社長は自力再建派の役員を制御できなかった」日産が協議打ち切りを急いだ“本当の理由”](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_76863_0-small.jpg)
日産の内田誠社長(左)とホンダの三部敏宏社長 ©AFP=時事
経営統合に向けて交渉していたホンダ(三部敏宏社長)と日産自動車(内田誠社長)。しかし、日産は2月13日、統合交渉に向けた覚書を正式に白紙撤回する。日産とホンダの社内で、どんな判断がなされたのか。そして、日産に残された再建シナリオはあるのか。ジャーナリストの井上久男氏による インサイドレポート 。
◆◆◆
「ホンダから見てスピードが遅いと映った」
2月13日、ホンダと日産は経営統合交渉に向けた覚書を正式に白紙撤回する。
これに先立つ2月6日午前10時過ぎ、日産自動車の内田誠社長を乗せた車が、東京・青山にあるホンダ本社に到着した。内田氏は、ホンダの三部敏宏社長に対し、経営統合交渉の打ち切りを正式に伝えるために訪れたのだ。
昨年12月23日、両社は共同持ち株会社設立による経営統合に向けた交渉を開始したと発表した。同日付で統合に向けた基本合意書(覚書)を締結していたが、それを破棄することになった。
なぜ両社は決裂したのか。そこに至るまでの経緯は 『文藝春秋』3月号 、および 『文藝春秋PLUS』 に掲載の 「日産鈍感力社長にいら立つホンダ暴れ馬社長」 で詳述したが、最終締切時点では協議打ち切りにまで至っていなかったため、盛り込めなかった情報も多い。本稿では、破談決定以降の最新情報を紹介しつつ、ホンダと日産が決裂した真相と、その後の展開について迫ってみたい。
まず振り返っておくと、経営統合はホンダ主導で進められ、新たに設立される共同持ち株会社の社長と取締役の過半数はホンダが指名することが決まっていた。その持ち株会社の下に、日産とホンダが事業会社としてぶら下がり、人事権などの経営判断は各事業会社が裁量を持つ方向だった。すなわち、持ち株会社はホンダが主導しても、その傘下に置かれる日産の経営にホンダが直接関与はしない形を取っていた。
ただし、その条件として、ホンダは日産に対して、(リストラして反転攻勢に出る)「ターンアラウンド計画」の着実な実行を求めた。日産は、収益源である北米事業が不振で、全社的に過剰設備にも悩む。昨年11月7日、全社員の7%に当たる9000人、生産設備の20%をそれぞれ削減するなどのリストラ策を発表していたが、ホンダ側はさらなるリストラ策と素早い実行を求めていた。
しかし、日産から納得のいく説明はなかった。「ホンダから見てスピードが遅いと映ったようだ」(関係者)。加えて、日産から「工場閉鎖」など大胆なリストラ策が提示されなかった。日産が進めているリストラ策だけで、果たして経営再建が可能なのかとの疑念が、ホンダの経営陣内で強まっていった。
取締役の過半数「協議打ち切り」に反対せず
日産のリストラ計画の実効性とスピードに課題があると判断したホンダは、今年1月半ば頃から、共同持ち株会社による経営統合プランは止めにして、日産を子会社化して役員人事も含め、ホンダが直接コントロールする新しい統合プランを日産側に打診していた。
日産の経営に関しては現在、多額の資金を融資しているメインバンクであるみずほ銀行の影響力が強いと見られる。関係者によると、ホンダの三部氏はみずほ銀行に対しても、日産の子会社化について理解を求め、了承を得たという。
子会社化を迫る動きに、プライドの高い日産は猛反発した。2月3日に開催された執行役員以上が集まる会議で、「自力再建」を目指すことを決め、翌4日にはホンダに協議を打ち切る方向であることを告げた。さらに5日には取締役会が開催され、12人の取締役の意向を確認すると、過半数が協議打ち切りに反対しなかったという。
だが、この取締役会では、社外取締役で監査委員会委員長の永井素夫氏(元みずほ信託銀行代表取締役副社長)、同じく社外取締役で取締役会議長の木村康氏(ENEOSホールディングス名誉顧問)らが、協議打ち切りに反対したといわれている。2月13日まで、この内容を適時開示をしなかったのは、取締役会で正式な決議を取ったものではなかったからだ。
5年間で抜本的改革をできなかった内田体制
だが、賛否両論ある中で、なぜ日産は協議打ち切りを急いだのだろうか。日産・ホンダ両社内には「問題は内田氏のリーダーシップの欠如。ホンダによる子会社化を嫌い、自力再建に舵を切ろうとしている一部の役員を内田社長が制御できなかった」と見る向きは多い。
日産は自力再建に向けて舵を切り始めたが、それは不可能に近いと筆者は感じている。内田氏が社長に就任したのは2019年12月。すでに当時からブランド力低下による値引き販売での収益性悪化、「ゴーン経営」時代の負の遺産である過剰設備の解消が大きな課題であることはわかっていたはずだが、内田氏以下の執行部は効果的な対応策をほとんど打てていない。
※ 日産に残された4つの再建シナリオを解説する記事全文は 、月刊文藝春秋のウェブメディア「 文藝春秋PLUS 」に掲載されています(井上久男 「ホンダとの協議を蹴った“プライド高き”日産に残された4つのシナリオ 」)。
現在発売中の「文藝春秋」2025年3月号と「 文藝春秋PLUS 」には、両者の交渉過程を詳細に取材したレポート、「 日産鈍感力社長にいら立つホンダ暴れ馬社長 」(井上久男)が掲載されています。
(井上 久男/文藝春秋 電子版オリジナル)
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