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デルタ株の子どもへの影響と感染対策。ワクチンの接種の判断は?専門家に聞く

Business Insider Japan / 2021年9月6日 7時30分

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デルタ株の流行によって、子どもが新型コロナウイルスに感染する事例が増えています。

新型コロナに関する正確な情報発信を続けている「こびナビ」の副代表で、小児感染症の専門家である池田早希医師に、デルタ株の流行による子どもへのリスクの変化や、中高生のワクチン接種の考え方について話を聞きました。

※取材は8月23日に実施。情報が更新された数値については、新しいデータを反映しています。

1 こびナビ副代表の池田早希医師。 画像:取材時の画面をキャプチャ

デルタ株の子どもへの影響は?

——デルタ株の流行に伴い、子どもの感染例が増えています。何が原因なのでしょうか?

池田早希医師(以下、池田):まず、日本でもアメリカでも、デルタ株は伝播性・感染性がとても強くなっています。感染者が全体として増えた分、子どもの事例も増えていると考えられています。

——「子どもに感染しやすくなった」というより、感染者の数が増えたことで、子どもの感染例も目立つようになってきたということでしょうか。

池田:そうですね。加えて、アメリカでは12歳未満に対するワクチン接種が未承認ということもあって、子どもの感染者の割合が高くなってきています。今までの累計では、(アメリカの)子ども(※)の感染者は全体の14%程度でしたが、8月19日〜26日の週は約23%になっています。

※アメリカでは州ごとに子どもの定義が0歳〜14歳や0歳〜20歳などと違うことがある点に注意。

2 感染者全体に占める子どもの割合が増えている。 出典:米小児科学会、小児科病院協会の共同報告書より

——ワクチン接種が出来ない分、子どもの割合が増えているということですね。デルタ株の性質として、子どもでも発症・重症化しやすくなっているとは考えにくいのでしょうか?

池田:感染が広がっている分、(感染者数が増えれば一定の割合で重症者も現れるため)相対的に確認される感染者や重症者が増えて見えている状況だと思います。

デルタ株の性質として子どもが重症化しやすいということは今のところなさそうです。ただ、まだ情報が少ないので、引き続き調査は必要です。

——以前の取材(2021年6月上旬)の際には、子どもの感染経路は家庭内感染(保護者からの感染)がメインだと伺いました。現状では子ども同士でも感染が広がっていると認識を改めた方が良いのでしょうか?

池田:家庭内が多いのは変わりません。しかし、地域で流行している分、子どもの間でのクラスターも増えています。学校や学童、部活動、塾などもそうですね。

——なぜそういった感染事例が増えてしまったのでしょうか?

池田:繰り返しになりますが、デルタ株の感染性が強い影響が大きいです。特にワクチン非接種者においては感染力が強くなっています。地域での流行が拡大した結果、学校などに持ち込まれる可能性が高くなり、そこで感染が広がりやすくなっています。

学童や保育所など子どもを預けるような場所では、感染対策は当然継続されていると思います。それでもマスクをしっかりできない子や、マスクを触ってしまう子もいるでしょうし、最初からある程度限界はあります。

3 東京の年代別新規陽性者数の7日間平均。20代、30代に続いて20代未満での感染が多い。 出典:新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月1日)

——社会の流行状態が悪化したことで、「隙」を見せたときに感染しやすくなってしまったと。

池田:はい。ただ、陽性者として報告されている例はやはり大人同士や、大人から子どもに感染させているパターンの方が依然として多いです。

ワクチンを接種することができない11歳以下の子どもを守るには、周囲の大人がワクチンを接種して、大人から子どもにうつさないようにすることが大事であることに変わりはありません。

特に感染者が多い今の状況では、保護者に加えて、学校の先生や保育士の方、学童のボランティアの方などにはしっかりとワクチンを接種して欲しいと思います。

——「子どもは軽症で済むのだから」と、さほど問題視していない方もいると聞きます。

池田:子どもは確かに軽症や無症状が多いのですが、それでも重症化することはあります。

アメリカのデータですが、感染した子どもの1%前後(100人に1人)が入院しており、約0.01%(1万人に1人)が亡くなっています。

日本でも数少ないとは言え、集中治療を必要とした患者さんも存在します。

少ない割合だとしても起こりうるんです。

そしてそれは大人のワクチン接種で防ぐことができる。子どももワクチン接種の対象年齢になれば身を守ることができる。

デルタ株では、ワクチンを接種していたとしても感染する「ブレイクスルー感染」が起こることがあります。それでも、重症化や死亡リスクを抑えられることが分かっています。

学校現場での感染、どう防ぐ?

pic001 Shutterstock.com/pensandoenmon

——夏休みが終わり、学校の再開に伴い感染対策に不安を感じている方が多いようです。学校現場などでデルタ株への対策として出来ることはないでしょうか?

池田:12歳以上の子どもや教職員のワクチン接種に加え、マスクや手洗いとともに、改めて換気を徹底すること、人との距離を保つことが重要になることに変わりはありません。

——8月末には新学期開始の延長や学校の休校に関する議論も盛んでした。今後、学校でクラスターなどが出た場合の対応についてはどう考えておけば良いですか?

池田:ここは専門家の間でも色々な意見があります。私は、地域の流行状況と教職員のワクチン接種率、年齢や活動内容にもよると思っています。

例えば、今の段階では、流行が増えている地域では密集しがちな室内の部活動やイベントなどは制限されるべきだと考えています。

一方、「休校する」ということについては、弊害がとても大きいことも考えておくべきだと思います。

10代の学生や大学生であれば、オンラインでも比較的ちゃんと勉強できますが、小学生のとくに低学年では難しい。アメリカでは、(コロナ禍のオンライン教育で)貧困層と富裕層で学力格差がさらに助長されたという反省がありました。

また、児童虐待の問題や、貧困家庭への悪影響もあります。休校して給食を食べられなくなると、給食で栄養を取っていた子どもに深刻な影響があります。

——低学年の子どもがいる家庭では、親の仕事の調整なども必要になる場合がありますね。

池田:ひとり親の場合は、仕事に行けず、ベビーシッターも雇えず、職を失ってしまいかねない方もいます。

もし休校にするのであれば、「どうして今それをするのか。そしてどういう状況になったら解除するのか」といったところの十分な説明が必要でしょう。

また、休校にするのか、学級閉鎖で済ますのかは、どのくらいのリスクを許容できるかという問題です。

科学的に考えると、同じ空間(学級や部活など)に集まっている人の方がリスクは高いです。

どうしても必要なのであれば休校もありだとは思います。ただ、感染がまん延している状況では、他の経路からも感染が広がることは十分にありえます。

だからこそ、基本的な対策を強化して、少しでも症状があるなら学校を休む。休んだり濃厚接触者になった場合は、オンラインでも学習できるハイブリッドな環境にする。人と人の接触を少なくするために登校時間をずらす、という柔軟な対応が必要になります。

コロナとの生活はまだ続きそうです。それを前提として、引き続きオンライン学習を含めた柔軟な環境整備を継続することが重要なポイントだと思います。

中高生へのワクチン接種はどう考える?

pic002 REUTERS/Dado Ruvic/Illustration/File Photo

——日本では12歳以上ならファイザー、モデルナのmRNAワクチンを接種できます。中高生など、特に若い人がワクチンを接種する上で気をつけるべきこと、メリット・デメリットはどういった点でしょうか?

池田:ファイザーは12歳から15歳の約2300人、モデルナは12歳〜18歳の約3700人で臨床試験を実施しており、そこで安全性を確認しています。副反応も重篤なものはほとんどなく、発症予防効果もとても高いことが分かっています。

一方、とても稀なのですが実際に接種が始まってから軽い「心筋炎」などの副反応が報告されています。

もしワクチンの接種後、1週間以内に「息苦しさ」や「胸の痛み」「気が遠くなる」などの症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診していただきたいと思います。

私が問診する際には(心筋炎の報告がほかの年代、性別に比べて多い)十代の男性にはそういったアナウンスを意識しています。

ただ、(ワクチンの副反応で見られる)心筋炎の症状はとても軽いので、海外で報告されている例も最低限の治療で改善しています。

その副反応が起きる確率と、実際にコロナに感染して重症化するリスクや、家庭内に持ち込んでほかの人を感染させるリスク、さらに言えば部活動などの学校生活の中で他者に感染させて広げてしまうリスクを考えると、ワクチン接種のメリットは大きいと考えています。

若い方では、副反応が怖いという方も多いと思うのですが、接種をしたらどのようなメリットがあるのかも考えて欲しいと思います。

4 年代別ワクチン接種回数と致死率。年代別に見ると、高リスクとされる高齢者ではワクチン未接種のグループで致死率が高い。 出典:新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月1日)

——実際、メリットとしてどういう点が挙げられますか?

池田:自分も安全になることはもちろん、周囲の人も接種すれば学校生活を安全に送ることができるようになる。以前のような生活を取り戻すことに近づいていきます。

価値観は個人で違いますので色々なメリットが考えられますが、それがあるからこそ発熱などの副反応を我慢できる。加えて、副反応は解熱・鎮痛剤などで緩和することもできます。

実際にコロナに感染した方が、本当に苦しい思いをしますので、そこを意識して欲しいです。

——ファイザーやモデルナは、ワクチンがまだ接種できない12歳未満の子どもに対してワクチンの治験を進めています。いずれ日本でもワクチン接種の対象範囲を拡大する議論が出てくると思うのですが、課題になりそうなことはありますか?

池田:他の年齢では若いほど副反応が出やすいことが分かっているので、11歳以下の子どもでどのような免疫応答が起こるのか、安全なのかをしっかり確認する必要があると思います。

実際、mRNAの投与量も年齢ごとに量を減らす方針が決まっています。

今は、(ファイザーもモデルナも)その決められた量で、11歳以下に関するランダム化比較試験(3相試験)を実施しているところです。

FDA(米食品医薬品局)からは、接種後のフォローアップ期間を大人の治験よりも長めにしたり、12歳以上の臨床試験よりも数を増やしたりするよう指示されています。(ファイザー:約4500人、モデルナ:約6700人)

——つまりワクチンを緊急承認するうえで、慎重に手続きを進めているということでしょうか?

池田:そうですね。人数を増やした上で試験を進めてまず5歳〜11歳、そしてその後さらに低年齢側に段階的に臨床試験が進められています。

専門家としての予想では、ファイザーのワクチン(5歳〜11歳向け)については9月末頃にデータが集まり、FDAに緊急使用許可が申請され、年内に承認されるのではないかと考えられます。

モデルナに関しても、ファイザーよりは少し遅れていますが、臨床試験が進められています。

コロナ禍の「出口」は?

pic003 渋谷の街のようす。マスク姿で歩く人の姿が多い景色は、もはや見慣れたものとなっている。(撮影:2021年8月29日) REUTERS/Androniki Christodoulou

——デルタ株の流行によって、ワクチンの接種が進んでいる国でも感染者が増えています。この先、コロナ禍からどう脱していくことになるのでしょうか?

池田:まず、集団免疫によってコロナへの感染をゼロにすることは、恐らく無理だと思っています。

世界のどこかで流行していれば、変異ウイルスが現れるかもしれません。パンデミックの状態が治まるまでしばらくは、感染状況に応じて感染対策の制限レベルを変動させる、つまり「感染者が増えたときには感染対策を徹底する」という繰り返しになると思います。

——結局、自粛に頼らざるを得ないわけですね。

池田:ただ、ワクチンは有効なんです。

アメリカなど、デルタ株によって感染が増えてしまった国では、春あたりに感染対策を解除してマスク無しの生活をしていました。

デルタ株がなければそれでもある程度感染の広がりを抑えられていたのですが、デルタ株に対しては足りなかった。

ただ、デルタ株が流行しても、ワクチンは重症化や死亡を予防するという最も重要な役割を果たしています。

ブレイクスルー感染が増えていますが、ワクチン非接種者と比較するとワクチン接種者での感染者はとても少ないんです。ワクチン接種と基本となる感染対策を組み合わせることで、守ることは十分可能だと考えています。

ワクチン接種がさらに進み、感染者が減ったら、徐々に以前のような生活に戻れると思います。

感染者が増えている地域では我慢が多く、辛い生活をされている方も多いと思いますが、終わりは必ず来ます。無理せず乗り越えましょう。

(文・三ツ村崇志)

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