クラシックオーケストラ、客が想像もつかないコンサートの“楽屋事情”

Business Journal / 2019年8月3日 20時30分

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 先日、指揮者が3人出演する、特別なコンサートで指揮をしました。通常、指揮者同士が共演することはなかなかありません。というのは、器楽奏者や歌手と違い、ひとつのコンサートで指揮者は1人しか必要ではないからです。そのため「久しぶりに、学生時代からの指揮者仲間と仕事をしたよ」ということはなく、もし今回のように特別な企画で複数の指揮者が参加したとしても、ほかの指揮者が指揮を振っているときは、僕は楽屋で自分の出番を待っているか、客席で聴いているかどちらです。

 しかし、直前に指揮をしたばかりの指揮者が次の曲で横に座っていたら、観客の方はかなり驚かれると思うので、あくまでもコッソリと客席に忍び込むのです。

 そういえば、ピアニストもよく似た職業です。ソロリサイタルや、オーケストラとの共演は、ひとりぼっちです。ほかの楽器との共演も、オーケストラのピアノパートを弾くのも、通常はひとりです。それでも、2人でピアノを弾く「連弾」というジャンルがあり、2人のピアニストが一緒に演奏する、つまり“一緒に仕事をする機会”があるので、うらやましく思います。

 指揮者は、数曲の例外を除いては、大勢の楽員と観客に囲まれてはいますが、指揮台の上では、ひとりで仕事をする孤独な仕事です。たとえば、小さな地方都市で仕事をしているとすれば、おそらくその町に指揮者は僕だけということになるでしょう。

 冒頭で紹介した「3人の指揮者が出演するコンサート」も、やはり3人が一緒にステージに上がることはなく、順番に1曲ずつ指揮をするコンサートでした。オーケストラはもちろん同じですが、指揮者だけが代わっていくわけです。

 通常は個室を与えられる指揮者ではありますが、当日の会場は楽屋数が少なく、この3人が相部屋となりました。僕は、ほかの2人より遅れて楽屋に入って驚きました。あまりにも汚かったのです。

 楽屋というのは、荷物を置く、休憩する、食事をする、着替える、化粧をする、リハーサルでうまくいかなかったところを真面目に話し合う、指揮者の悪口を言うなど、いろいろなことが行われる場所です。もちろん、男女で別の部屋が用意されるのは言うまでもありませんが、個室が与えられるコンサートマスターを除けば、たとえアメリカのオーケストラのトップ奏者で年収が3000万円を超えていようが、まだオーディションに受かったばかりで大学を出たての若手楽員であろうが、一緒の大部屋に入ることになります。

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