東電、原発事故被害者への「賠償の誓い」反故…賠償金を値切り、和解手続き打ち切り

Business Journal / 2019年8月25日 7時0分

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東電が反故にした「賠償3つの誓い」

 2011年3月の東京電力福島第一原発事故で被災した人たちの損害に関する「賠償請求権」の時効が迫っている。原発事故の発生から10年となる2021年3月を過ぎると、加害企業である東電に対する請求権が消滅するのだ。

 民法上の時効は3年である。だが、原発事故という特殊な事情を勘案して、2013年12月に原賠時効特例法が成立。福島第一原発事故による損害に限り、時効が10年へと延長された。一方、賠償金を請求される東電に対しては、政府が原子力損害賠償支援機構(原賠機構。現在は原子力損害賠償・廃炉等支援機構と改組)を設立し、税金を兆円単位で投入。東電が被害者に対して迅速に賠償を行なうよう、資金面で支援した。

 ところで、東電は同社のホームページに「損害賠償の迅速かつ適切な実施のための方策」を掲げている。この中で東電が「3つの誓い」として挙げた賠償方針は次のようなものだ。

1.最後の一人まで賠償貫徹

2.迅速かつきめ細やかな賠償の徹底

3.和解仲介案の尊重

 3の「和解仲介案の尊重」とは、裁判外紛争解決手続き(ADR)において国の「原子力損害賠償紛争解決センター」(ADRセンター)が仲介する和解案を、加害企業として尊重するという「誓い」である。だが2018年以降、東電はADRセンターが出す和解案を拒否し、ADRセンターが和解手続きを打ち切るケースが急増している。

 東電が「誓い」を反故にし、和解案には応じない方針を取る限り、ADRを通じて被災者を救済することは不可能である。つまり今のADRでの賠償交渉では、加害企業が賠償のルールを決め、被害者より威張っている。ならば東電も、ハッタリの「誓い」をホームページから削除すればよさそうなものだが、「誓い」は今も掲げ続けられている。

 原発事故で破綻した東電は、血税が投入されて救済され、今では事実上の国営企業(原賠機構の子会社)である。賠償費用にしても原子力損害賠償・廃炉等支援機構に用立ててもらっており、身銭を切らずに済んでいる。被害者に対し、とても威張れる立場ではない。にもかかわらず、ADRでの和解案を拒否し始めた東電に対し、国が是正するよう指導することもない。これでは、東電の「ADR和解案拒否」はこれ以上の税金からの支出を抑制すべしという国の方針だと見られても致し方ない。

 時効が近づくなか、ADR和解案が尊重されないようでは、「最後の一人まで賠償貫徹」どころか、賠償の網からこぼれ落ちる被害者が続出する。その一方で、大事故を起こした加害企業は恥も外聞もなく税金で延命を果たす。政府の“加害企業救済”方針は、21世紀最大のブラックジョークになりそうだ。

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