あおり運転エアガンの原因は「反社会性パーソナリティ障害」か…矯正可能かが議論呼ぶ

Business Journal / 2019年9月16日 15時51分

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 愛知県内の東名高速を走行中だった乗用車が後続のワゴン車にあおられ、エアガンのようなもので撃たれた事件で、14日、40歳で無職の佐藤竜彦容疑者が器物損壊の疑いで逮捕された。

 佐藤容疑者は容疑を認めており、「追いついたのに前の車がどいてくれなかった。ブレーキを踏まれてぶつかりそうになったので腹が立ち、撃った」と供述しているようだが、これは非常に自己中心的な動機である。

 道路を走っているのは、自分が運転する車だけではない。だから、前の車がどいてくれないこともあれば、急ブレーキを踏むこともあるだろう。そのせいでヒヤリとしたり、イライラしたり、ムカッとしたりしても、たいていの人は腹立ちを抑えて安全運転を心がけようとするはずだ。

 ところが、佐藤容疑者はカッとして頭に血が上り、仕返しすることしか考えられなくなったようだ。客観的にはどうであれ、少なくとも本人は「前の車に邪魔された」「前の車のせいで遅くなった」などと被害者意識を抱き、それから生じる怒りと復讐願望を募らせた可能性が高い。

 だからこそ、仕返ししたいという復讐願望を満たすために、クラクションやパッシング、急接近などのあおり行為を繰り返し、あげくの果てにエアガンを発射したのだろう。

 このように怒りや攻撃衝動をコントロールできない人、つまり衝動的で攻撃的な人はあおり運転をしやすい。しかも、運転しながらエアガンを発射したのは、自分の安全も他人の安全も考えない無謀さの表れだ。

 そのうえ、佐藤容疑者があおり運転に用いたワゴン車は盗難車であることが判明している。佐藤容疑者の知人である作家の沖田臥竜氏によれば、「車上荒らしをしたり覚醒剤をやったり」ということなので、社会規範に反する行為を繰り返していたと考えられる。

 また、東名高速でのあおり運転事件から約1時間半後に警察官から職務質問を受けた際、佐藤容疑者は「弟の免許証」を提示し、「トイレに行きたい」と嘘をついて、燃料切れの車と同乗の女性を放置したまま逃走している。こうした行動から、平気で嘘をつくうえ、無責任であることがうかがえる。

 このように、佐藤容疑者には衝動性、攻撃性、安全を考えない無謀さ、社会規範に反する行為の繰り返し、平気で嘘をつく虚偽性、無責任さが認められる。

 こういう人を精神医学では「反社会性パーソナリティ障害」と呼ぶ。8月に茨城県の常磐道で起きたあおり運転事件で傷害容疑などで逮捕された宮崎文夫容疑者も、「反社会性パーソナリティ障害」の典型のように見える。

良心の呵責も罪悪感もない

「反社会性パーソナリティ障害」の人は、規範意識が低く、逮捕の原因になる行為を繰り返すことが多い。これは、他人を傷つけても、他人のものを盗んでも、良心の呵責も罪悪感も覚えないからだ。

 このような傾向は、10代の頃から認められたようで、佐藤容疑者の弟の同級生によれば、弟めがけてエアガンを乱射し、へらへら笑っていたという。被害者の痛みに共感することも同情することもないからこそ、反省も後悔もせず、反社会的行為を繰り返すのだろう。

 こういう人を治療や教育によって矯正することができるのかについては、昔から盛んに議論されてきた。そもそも、性格の著しい偏りというか歪みであるパーソナリティ障害が精神科の治療の対象になりうるのかという議論さえある。

 非常に難しい問題であり、一朝一夕に解決できるわけではない。あおり運転の厳罰化も含めて、これから社会全体で考えていくべきだろう。

(文=片田珠美/精神科医)

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