総合商社業界「3冠」目前の伊藤忠、報じられない“2つの死角”
Business Journal / 2020年8月3日 18時45分

「週刊ポスト」(小学館)の仕事で、「日本郵政グループをもし、土光敏夫さんが経営すればどう変わる。どう変える」という記事を書いていて、「もし伊藤忠商事の岡藤正広会長CEOが三菱商事を経営したら、どう変える」を書いてみたらおもしろいと思った。6月に「2021年3月決算も三菱商事が首位になると予想する」と書いているが、少し様相を異にしてきた。伊藤忠の攻勢が目立つのだ。
伊藤忠はファミリーマートを完全子会社にして上場廃止とし、経営の自由度を高めることを決めた。コロナ禍であるが、岡藤CEOは今期「3冠」を目指すと宣言した。3冠とは時価総額、株価、21年3月期決算の税引後利益で三菱商事を抜き、業界トップになることを指す。時価総額、株価ではすでに三菱商事を抜き去り、その差はどんどん広がっている。
伊藤忠は「ファミマの完全子会社化は21年3月期の税引き利益4000億円に一定程度織り込み済み」(幹部)というが、「TOBが成立して、上場廃止(非上場化)に伴うシナジー効果が本当に出てくるのは来期(22年3月期)以降」(同)としている。ファミマを戦力化できればかなりの利益の上積みが期待できる。
当面の焦点は8月5日の伊藤忠商事の決算(4~6月期)の内容だ。「実は三菱商事も同日決算発表を予定していたが、8月13日に変更した」(兜町筋)。「伊藤忠の1Q(4~6月期)決算を見極めるための発表延期」(外資系証券会社の総合商社担当アナリスト)といった、うがった見方も出ている。ことほどさように伊藤忠の決算が注目されているのだ。
東京株式市場では「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が三菱商事株を売って伊藤忠株を買っている」と推測する。「これが、伊藤忠と三菱商事の株価・時価総額の逆転につながった」(大手証券会社)といった分析もある。かなりオーバーな言い方になるが「安倍政権が伊藤忠買い、三菱商事売りを決断した」ということになりはしないか。
逆風にさらされた三菱商事で有力OBからの垣内威彦社長に対する批判が強まっている。「繊維商社の伊藤忠に抜かれるとは……。ああ、世も末だ」(有力OB)といった具合なのである。伊藤忠を今でも繊維商社と考えている有力OBがいるから伊藤忠に負けたという冷厳たる事実に、このOBはまったく気づいていない。
垣内社長は、社長に就任した16年、「首位を奪還したら二度と(伊藤忠に)は譲らない」と明言している。今、この言葉が垣内社長に重くのしかかり「金縛りの状態」(三菱商事の幹部)といった、いささか荒唐無稽な情報まで流出している。
この記事に関連するニュース
-
「商社3位が定着」伊藤忠、三菱商事の後を追う三井物産の社長交代に秘められた意図
プレジデントオンライン / 2021年1月18日 9時15分
-
伊藤忠の社長交代で透ける「岡藤会長」の存在感 成長のカギを握るファミマ経営陣もテコ入れへ
東洋経済オンライン / 2021年1月18日 7時50分
-
バフェット銘柄になった三井物産、丸紅、三菱商事が「脱炭素」に大きく舵を切る必然
プレジデントオンライン / 2021年1月16日 9時15分
-
三井物産、新社長が目指す「万年3位」からの脱却 課題は「脱資源」、ヘルスケアなど非資源がカギ
東洋経済オンライン / 2021年1月13日 7時50分
-
伊藤忠、総合商社業界トップへ…「非資源重視」だけでは説明できない“岡藤流”経営の神髄
Business Journal / 2021年1月8日 6時0分
ランキング
-
1「ムーンライトながら」違和感大ありの廃止理由 利用客に「行動様式の変化」を促したのは誰だ
東洋経済オンライン / 2021年1月28日 7時30分
-
2ソニーから5G対応のプロ用機材出ます。「Xperia Pro」って言うんですけどね
GIZMODO / 2021年1月27日 0時0分
-
3ANAの「機内食」を自宅で 新型コロナで大打撃の航空会社がアイデア勝負
J-CASTトレンド / 2021年1月27日 19時30分
-
4ワクチン9千万回分、国内生産へ 日本供給合意の英アストラゼネカ
共同通信 / 2021年1月27日 23時8分
-
529歳商社マン、初のアフリカ出張。意外な日本製品がワイロ代わりに
bizSPA!フレッシュ / 2021年1月27日 15時45分