ロスチャイルドが世界支配?経済危機の元凶は?陰謀論を真面目に検証してみた

Business Journal / 2016年1月15日 6時0分

 第三は、ネイサンがたった1日の債券取引で莫大な利益を稼いだのかどうかという点です。ネイサンは、独り占めした情報によるインサイダー取引まがいの短期売買で儲けたのではありません。終戦が英国の財政と経済に及ぼす影響を分析し、その読みに基づき、周囲の意見に逆らって英国債を辛抱強く保有し続け、17年の末に債券市場が40%余り値上がりした時点で手放した。つまり、長期の投資で利益を得たのです。

 疑似科学や陰謀論を批判するライターのブライアン・ダニングは、ウェブサイト「スケプトイド」で、「ロスチャイルドがワーテルローの戦いで大儲けしたという歴史的記録は、1940年の反ユダヤ的ドイツ映画『ロスチャイルド家』まで存在しない」と述べています。

●ロスチャイルドが中央銀行を支配することはできない

--ロスチャイルド伝説の検証は、これだけではなく、ネイサンの父であるマイアー・アムシェル・ロートシルトの「英国の通貨供給を管理する者が大英帝国を支配する。そして、私は英国の通貨供給を管理している」発言や、「ロスチャイルド一族が米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)を支配している」説などの真偽にも迫っています。

 特に、後者については、ベストセラー陰謀論本が記す、ニューヨーク連邦準備銀行設立時の株主の誤りを指摘した上で、こう述べています。「連銀の株主が民間銀行であるというのは事実である。しかし、民間企業の場合と異なり、ロスチャイルド財閥など外国の銀行が株式を大量に取得し、それによって連銀を支配することは制度上できない」【註:本書では、米国の中央銀行組織を示す言葉として、理由を述べた上で、連邦準備制度理事会(FRB)や連邦準備制度ではなく、連邦準備銀行(連銀)を使っている】

野口 もちろん、連銀が民間銀行からの政治的圧力と無縁というわけではありません。むしろ、第5章「中央銀行と通貨発行権問題の正体」で明らかにしたように、連銀は発足当初から現在に至るまで、米国内の民間銀行から強い影響力を受けてきました。しかし、それを欧州のロスチャイルド家と結びつけるのは、明らかに飛躍しています。

--読者は、これまでとはまったく異なるロスチャイルド像と金融の仕組みに驚くのではないでしょうか。

野口 詳しくは本書に譲りますが、まとめると、連銀は「民間と政府の共同経営」です。元米連邦下院議員で、連銀廃止論者として知られるロン・ポールも「民間企業の最悪の部分と公的機関の最悪の部分を併せ持った特殊な組織」と痛罵しています。いずれにせよ、ずさんな陰謀論者が主張するような「完全な私有企業」というのは誤りです。このように、中央銀行陰謀説には荒唐無稽で事実に反するものが多数ありますが、真実もかなり含まれているので注意が必要です。

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