初音ミクを生んだ“革命的”技術を徹底解剖!ミクミクダンス、音声、作曲…

Business Journal / 2013年1月16日 7時5分

「たった1人の、閉じた世界での、『初音ミク』の具現化」

です。

 スポンサー(出資者のご意向)も、ヒエラルヒー(上司の承認)も、チームワーク(マネージメント)も、スケジュール管理(進捗の線表)もいらない、自分だけの閉じた世界での初音ミクの具現化。

 私は、1人のエンジニアとして、拳を天に向かって突き上げたくなるほど、この「閉じた世界の素晴らしさ」を理解できるのです、自分のアイデアを仕事として提案するためには、他人に説明して、誤解を丁寧な言葉で解いて、稟議を通すために頭を下げて回らなければなりません。面倒くさいですが、組織で何かをつくっていく以上、仕方がないことです。

 しかし、自分の考え通りに何かを創作すること(例えば、このコラムを書くこと)には、そのような面倒な手続きは発生しません。私は、自分の世界で、自分自身の意思で、なんでも自由に表現できるのです(時々、編集担当者からストップがかかりますが……)。

「1人で閉じた世界での創作活動」というのは、私のような人間には、「地上に存在する、最後のパラダイス」なのです。そして、この初音ミクが他の創作物と決定的に異なる点は、「自分では表現できないこと(歌唱、ダンス)」を、初音ミクというキャラクターを通じて実現させることができ、それが100%自分の裁量で行えるという点にあります。加えて、このキャラクターを創成する立場であれば、間違いなくキャラクターに「愛」が込められていくのは当然のことです。

 前述した通り、私はボーカロイドパッケージ「結月ゆかり」の4小節程度のソロパートの歌唱だけで、いとも簡単に彼女に魅入られてしまいました。私のわがままなプロデュース(音階を変えて、リズムを変えて、歌い方を変えて)に素直に応じて、何度でもやり直す、そのけなげさに胸を打たれるのです。

 もちろん、これがプログラミングでいうところのデバッグ作業にすぎないことは十分に分かっています。しかし、そこに、キャラクターという媒体が介在することによって、ボーカロイドへの創作意欲は、他の創作物とは異なる爆発的なパワーを持つことになるのです。

 さて、次回中編では、この「1人で閉じた世界での創作活動」の結論を、一度ひっくり返してみます。初音ミクの創作は「たった1人」でありながら、同時に巨大なコミュニティの中の共同作業によって進化していくという、不思議な進化の形態について、初音ミクをプロデュースしている人、「ボカロP」と呼ばれる方のインタビューも含めて、ご説明したいと思います。
(文=江端智一)

【目次】
【1】『初音ミクを生んだ“革命的”技術を徹底解剖!ミクミクダンス、音声、作曲…』
【2】キャラ設定はない?ボカロPが語る「初音ミクの作り方」〜AKBファンと同じ?

※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。

【註1】http://ja.wikipedia.org/wiki/初音ミク
【註2】http://dic.nicovideo.jp/a/mikumikudance


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