“新富裕層”の実態〜低課税求め増える富裕層の海外移住と、先進国のジレンマ

Business Journal / 2013年9月10日 18時0分

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 「今から140km走って、マレーシアまで朝食を食べに行きます」と、愛車フェラーリに乗り込み、シンガポールの隣国・マレーシアまで爆走。到着したマレーシアでは、一杯数百円、うまいと評判のヌードルに舌鼓を打つ……まるで、「東京で『うまいラーメンに食べに行こう』と盛り上がり、その足で札幌へラーメンを食べに行く」という日本のバブル期並みのぜいたくな生活を今も送るのが、シンガポールに住む日本人“新富裕層”だ。

 世界で100万ドル以上の資産を有するのは1200万人。NHKスペシャル『新富裕層vs.国家 富をめぐる攻防』(8月18日放送)では、そのうち、IT・金融の分野で成功し、若くして資産を手に入れた“新富裕層”が、税金の低い国に移住する現状をレポートしている。金融所得は非課税、所得税率も日本の4分の1であるシンガポールへ、日本からの移住者が急増中で、年間1000人にも及ぶというのだ。

 日本人“新富裕層”は、シンガポール有数の超高層マンションに住み、愛車は最高級のフェラーリ。現地の“新富裕層”からは、5年で価格が倍になるという現在の富がさらに富を呼ぶ、笑いが止まらないシンガポールの不動産開発の儲け話が持ち込まれる。

●政策として、意図的に生み出した“新富裕層”

 そもそも“新富裕層”が生まれるきっかけは、1980年代からの世界の潮流となった、意図的に富裕層を生み出す新自由主義的な経済政策だ。減税や規制緩和によって特定の分野にお金持ちを生み出し、「富裕層が富んで消費をすることで、最終的に貧困層も豊かになる」というトリクルダウンを狙ったものだ。

 米国レーガン政権(任期1981-89年)による、規制緩和と90年代にかけてのIT、金融工学の発達で、シリコンバレーとウォール街には“新富裕層”が続々と現れた。日本でも外資系金融機関などに勤めれば、億を超えるカネを簡単に手に入れられるようになった。“新富裕層”の時代は、ジョージ・W・ブッシュ政権(任期2001-09年)の富裕層減税とサブプライムローンバブルで頂点に達する(日本では小泉・竹中路線の経済政策の下、堀江貴文氏の出現と、06年村上ファンド・村上世彰氏の「お金を儲けて何が悪い」発言が象徴的だ)。

 しかし、08年のリーマンショックを引き金にした世界大停滞で、その流れは逆流を始める。

 これ以上の財政赤字を避けるために、富裕層を中心にした増税が必要不可欠と、オバマ政権も日本の民主党政権も、格差是正の財政政策を打ち出すことになった。

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