【日興インサイダー裁判】破綻した検察側ストーリーと、動機や物的証拠なき不可解な判決

Business Journal / 2013年10月16日 6時0分

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 日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)元執行役員・吉岡宏芳氏が、インサイダー取引に関与したとして、金融商品取引法違反の罪に問われた、いわゆる「日興インサイダー事件」。

 横浜の金融業者・金次成氏が、公表前のTOB(株式公開買い付け)情報を元に株式を売買、総額約3600万円の利益を得たというこの事件では、吉岡氏が金氏に単に情報を伝達しただけでなく、吉岡氏が主体的に株式の購入を主導したというのが、当初の横浜地検の主張だった。吉岡氏が購入を奨めたフォーサイド・ドットコム株で金氏が多額の損失を被るほか、吉岡氏が金氏に依頼した自分の知人への融資が次々焦げ付き、その穴埋めを要求する金氏に未公開情報を提供していた、つまり「主犯=吉岡、共犯=金」というのが横浜地検のストーリーである。

 金氏はこの検察の主張を全面的に認めたが、裁判所が吉岡氏と金氏の共犯を認めず、検察に対し訴因の変更を求める異例の展開になった。このため、検察は「主犯=金、共犯=吉岡」に主張を変更。吉岡氏については補足的に「金氏への教唆」も追加した。

 金氏は全面的に検察の主張を認めていたので、今年3月に懲役2年6カ月、執行猶予4年、罰金300万円、追徴金1億円の判決が言い渡されている。

 一方吉岡氏は、「金氏との間で融資に関するトラブルもなければ、穴埋めを要求されていた事実もない、ゆえに未公開情報を提供する動機もなく、情報提供自体していない」と検察のストーリーを全面的に否認していた。

 だが、9月30日に横浜地裁で言い渡された判決では、吉岡氏と金氏の共犯は否認したものの、情報伝達は事実であると認定したうえで、動機は検察が言う「穴埋め」ではなく、「金氏の追及から逃れるための方便」だとして、「教唆」つまり吉岡氏が金氏をそそのかした、ということは認めた。結果は懲役2年6カ月、執行猶予4年、罰金150万円。罰金や追徴金の額以外は金氏と同じだった。

 この判決を不服とし、10月9日付で控訴した吉岡氏の代理人・佐藤博史弁護士に、今回の事件の真相と裁判の問題点について聞いた。

--10月9日付で控訴された理由はなんでしょうか?

佐藤博史弁護士(以下、佐藤) 本件は執行猶予が付いたからよしとしていい事件ではありません。吉岡氏は情報伝達なんかしていないのですから、無罪であるべきなのです。そもそもこの事件は、検察によってつくられた事件です。昨年6月27日の逮捕当日は、吉岡氏が検察から事情聴取で呼ばれていた日でしたが、朝から自宅がマスコミに囲まれましたし、テレビも新聞も、まるで示し合わせたかのように「日興インサイダー事件」というタイトルで報道しました。つまり検察が事前にメディアに「この日に吉岡を事情聴取で呼んで、そのまま逮捕する」ということだけでなく、吉岡氏の自宅も教え、なおかつこの事件名でリークをしていたということです。最初から吉岡氏が主犯でなければならないという、検察の強い決めつけがあったんですよ。横浜の一金融業者の事件ではなく、3大証券の一角である日興の執行役員の事件にしたかったのです。

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