TPP農業開放は“逃げ切れる”か?迫られる、反対運動から「攻めの準備」へのシフト

Business Journal / 2014年3月23日 1時0分

 かといって、現在の戦略が永遠にうまくいくかというと、そうでもありません。日本の工業製品を輸出するという面で諸外国に貿易自由化を求めながら、海外からの輸入品には高い関税を設けるというのは、ルール上できないバーターなのです。「農業を保護すべきである」というのはあくまで日本の立場でしかなく、海外から見るとフェアとはいえません。よって、我が国が世界の中で貿易立国として生きていく以上は、我が国の関税を下げるように国際的な力が働くのは不可避です。今まではそうした力を周辺諸国が保持していなかっただけなのですが、そうした国々の経済力が大きくなった現在では、「日本の独り勝ち」という状況はもう許されません。つまり、TPPに関しては「逃げ切れなくなったから応じざるを得なくなった」ということになるでしょう。

●国際競争力強化に向けた戦略づくり

 では今後TPPをめぐる動きはどうなるのかというと、「交渉に時間がかかっても農業分野の関税は現状のそのままで決着する」と楽観視できない状況です。堅守したくても難しい、ということもシナリオとして知っておくべきです。難しいならば交渉の間に(あるいは実際に関税が引き下げられるまでの間に)、どのようにしたら国際競争力が高まるのか真剣に考えて戦略をつくり、世界に勝てる産業に変えていくことが、ビジネスの観点からは選ぶべき選択肢なのだと思います。

 なお、TPPの非関税障壁撤廃の中には、衛生管理の水準を国際貿易レベルに上げるということも入ってきます。例えば水産加工施設に関しては、アメリカはHACCP(危害分析・重要管理点手法)普及率100%に対して、日本では20%程度です。こういった遅れた部分を限られた時間の中で改善していくことも重要です。改善すべき部分はたくさんあります。しかし改善できるものである以上、早急にその準備を今始めることが大事なのであって、TPP反対運動にすべての費用や時間、エネルギーをつぎ込むのは極めてリスキーなのではないでしょうか。

 ちなみに、そもそも実質関税が最大3.5%の水産物はすでにほぼ自由化品目なので、水産業はこれから世界で十分に戦うことができる産業です。オンリーワンである日本酒、その原料である酒米、味噌や醤油や緑茶、ミカンやリンゴなど、勝負できる商品はたくさんあります。こういった分野で世界市場を開拓していくためには、商社任せだけではない、「包括的マーケティング」が必要になってきますが、日本企業がすでに持つノウハウを集めていくことができれば、むしろ地方が経済を引っ張る存在になると思います。守りに入るのではなく、攻めなければならない時期に来たということでしょう。
(文=有路昌彦/近畿大学農学部准教授)

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