ボーイング737MAX運航再開、国交省は性急な認可は禁物…墜落の危険性、解消されず

Business Journal / 2021年1月23日 5時50分

 737MAXはエアバスのA320neoとライバル関係にあり、ボーイングが失敗を認めて撤退することはアメリカの航空産業の失墜とエアバスにマーケットを独占されることにもなり、簡単に引き下がれないという事情があろう。2件の墜落事故を起こし計346名の乗客乗員の命を失った直後は、トランプ前大統領もMCASについて「常に不必要な対策や改善を進めている」と批判的な見解も述べていた。しかし、新型コロナウイルスの流行拡大により航空産業が大きな打撃を受けるなか、737MAXの飛行禁止を続けていくと、メーカー、エアライン、そこに従事する航空関係者の雇用も深刻な状況になる。そのためトランプ前大統領は自国の航空産業を守るために、大幅な経済支援を表明したのである。

 このような事情により、これまで航空機の安全性については厳しく監視してきたFAAも、ボーイングや米政府の意向に負けたかたちで今般の耐空性審査にゴーサインを出した。だが、前述のとおり審査の公正性と適正性に疑問が持たれる事態に発展し、FAAは信頼を大きく損なう結果となった。

ANAHDと国土交通省はどう対応するのか

 FAAが再飛行にゴーサインを出したことで、すでに一部の航空会社で運航を開始したり、発注を始めたりしている。では、日本の航空会社と行政当局はどう対応するのか。

 日本ではANAホールディングス(HD)が19年1月に最大30機の導入を決め、12月には「ほとんど発注に近い」という見解を示している。スカイマークも検討中であるほか、投資会社JIAがリース用として10機の購入契約を結んだ後に一度キャンセルしているが、今後どうするのか。

 加えて、日本では部品を製造する多くの企業が存在しており、運航停止が長引けば経営へのダメージも大きくなるので、国土交通省の認可に期待をしていることであろう。アメリカのFAAが運航再開を認可したが、日本では国土交通省の認可が必要となっており、今後、各航空会社もそれを待って発注などの手続きを行うこととなる。

 とはいえ、国土交通省は実質アメリカの言いなりで、ANAHD等の意向も踏まえて認可に動くことは間違いないだろう。それは2件の墜落事故を受け中国など多くの行政機関が運航停止にした後も、日本の国土交通省はアメリカが運航停止を決めたのを受けてやっと腰を上げたという経緯から見ても明らかである。

 だが、待ってほしい。ことは人命にかかわる重要案件である。FAAの運航再開への認証手続きで不正や不備が内部告発されている現状では、安易にアメリカ側に追随せず独自に安全性について検証を加えて判断すべきであろう。そしてANAHD等の航空会社では、何よりも自社のパイロットや整備士たちに意見を求め、少しでも不安があれば全員が納得するまで検証を行い、導入を急いではならない。

(文=杉江弘/航空評論家、元日本航空機長)

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