為替の変動相場制、失敗が決定的…企業の多大な損失や国家間紛争が生まれる理由

Business Journal / 2016年7月29日 6時0分

 また、変動相場制を導入すれば、「国際収支の不均衡問題は一気に解決するはずだ」と予測した。「為替レートが自由に変動して収支を均衡に向かわせるので、国際収支はつねに均衡するはずだ」との考えからだ。さらに変動相場制を導入すれば、「財とサービスの自由貿易を効率的に推進できるようになる」とも説いた。

 以上が変動相場制を提案したフリードマンの論拠である。前述のように、同書の出版からおよそ10年後の70年代前半、提案は現実となったのである。

●フリードマンの誤算

 さて、それから45年がたった今振り返って、フリードマンの主張は正しかったと言えるだろうか。変動相場制こそ自由主義にふさわしいという主張に対しては、自由主義経済と固定相場制をともに支持する立場の経済学者から、次のように批判された。

 たとえば、体積の1リットルが10デシリットルに等しいと決められているのは政府の統制だといって反対し、ある日は1リットル=9デシリットル、ある日は同11デシリットルなどと変動させたら、社会が混乱するのは間違いない。リットルとデシリットルの関係は定義されているものであり、固定したからといって、自由主義に反することにはならない。為替レートも同じである。通貨と通貨の交換比率を固定したからといって、自由主義に反することにはならない。

 フリードマンの残りの主張は、為替市場の現実によって、正しかったかどうかを確かめることができる。

 まずフリードマンは、変動相場制が不安定な為替相場をもたらす心配はないと述べた。しかし現実の為替相場はしばしば不安定に動き、企業や金融機関はヘッジ手段の多用や為替差損を強いられている。

 次にフリードマンは、変動相場制になれば国際収支はつねに均衡すると予測した。実際には米国自身が多額の経常赤字を計上するなど、世界で経常収支の不均衡が深刻である。

 さらにフリードマンは、変動相場制によって自由貿易が推進されると言ったが、現実には自国通貨切り下げなどを背景に、貿易をめぐる国際対立が頻発している。

 フリードマンが描いた変動相場制の理想は、実現しているとは言いがたい。その理由を一言で言えば、彼が政府の自制心を信じすぎたからである。

●政府の気まぐれな通貨増発

 通貨発行という「打ち出の小槌」を安易に使わない自制心を持ち合わせた政治指導者は、あまりにも少ない。多くの場合、冒険的な軍事侵攻や有権者の人気取りのために、税収を上回る支出を行い、その穴を通貨の増発によって埋め合わせようとする。

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