一日2百個宅配の過酷労働…ドライバーがアマゾンの異常な便利さの犠牲に、ヤマトの英断

Business Journal / 2017年3月11日 6時0分

「もちろん一概にはいえませんが、ヤマトの配達ドライバーはライバル社よりも全体的に丁寧で親切な印象ですね。ホテルマンのような高いクオリティーの接客スキルがあるというわけではありませんが、低コストの宅配事業であることを考えると、十分すぎる接客レベルといえます。

 とはいえ、佐川の配達ドライバーの質が悪いというわけでもありません。ヤマトにしても佐川にしても、何万人単位の配達ドライバーがいるわけですから、確率論的に倫理観が欠如しているような人が多少交ざってしまっているのは仕方のないこと。これは宅配業界に限らず、どんな業界、どんな企業でも同じことがいえるはずです。

 今回の佐川急便の荷物を放り投げた配達ドライバーの件もそうですが、インターネットの発達によって1人の悪行がすぐに拡散していって、それが企業全体のイメージを揺るがしてしまうのです」(渡辺氏)

●未払い分の賃金支払いはヤマトの英断

 確かに、一般人の誰しもがスマートフォンでいつでも写真や動画が撮れ、さらにそれをTwitterやYouTubeにすぐに投稿できる時代となったため、数万人の中のたった1人の従業員の行いで企業イメージに大打撃を与えることもあるのだろう。

「そんな時代においても、ヤマトの配達ドライバーの悪評が大きく報じられることがないのは、やはり同業他社と比べ、企業文化や企業理念がしっかりしているからでしょう。

 3月4日、ヤマトは運送業務に携わる配達ドライバーなど約7万人の従業員の勤務実態の詳細調査に乗り出し、賃金未払いがある場合は支払う方針であることを発表しました。これは現場の労働環境を改善するための施策の一環ですが、なかには1人100万円ほどの額が支払われるケースも想定されていて、総額は数百億円規模になる見込みだといわれています。こういった見直しが図られていけば、ドライバーの質の向上はステップアップするかもしれませんね」(同)

 この約7万人の従業員の勤務実態詳細調査と、未払い分賃金の支払いに関する発表は、昨年8月に神奈川県の元配達ドライバーに未払い賃金があったことと無関係ではないだろう。この一件で、神奈川県内のヤマト店舗が労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けていたのである。

 しかし、そのトラブルを踏まえたとしても、ヤマト運輸の対応は英断といえるだろう。

 賃金の問題だけでなく長時間労働を強いる状況の見直しも課題となってくるのだろうが、宅配便業界の過剰サービスが健全化していき、近い将来、配達ドライバーたちの労働環境が改善されていくことに期待したい。
(取材・文=A4studio)

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