阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か

Business Journal / 2018年8月15日 21時0分

●踊り手は反発、強行実施へ

 この決定に、有名連が加盟する「阿波おどり振興協会」は「踊り手をないがしろにする」と反発し、演舞場外で独自に総踊りをする意向を示した。遠藤市長は「危険だ」などとして4度文書で中止を要請していた。8月13日の記者会見では、実施した場合に「ペナルティーも検討する」と述べるなど、異例の事態となっていた。

 そして有名連の踊り手約1500人が8月13日夜、実行委の決定に反して名物の「総踊り」を披露した。「阻止する」としていた実行委側も静観し、心配された混乱はなかった。

 さて、事前には「総踊りの中止」と告知されていた今年の阿波踊り、肝心の有料入場者数はどう増減したのか。速報によると、昨年の売上枚数より4会場トータルで10ポイント減少したとされている。つまり、遠藤市長が目指した、「総踊りの中止により、有名人気連の出場会場分散化を図り、総踊り会場以外の会場の売上を増加させる。その結果、売上の増収を図る」という目論見は外れたことになる。

●強さを伸ばし、弱いところは撤退、縮小を

 今年の「総踊り中止」の決定が遠藤市長の意向だとすれば、市長のビジネス戦略的判断には疑問を持たざるを得ない。

 まず、昨年までの4会場のチケット売上分布からの総数増への目論見である。一番人気だった「総踊り会場」を中止して他の3会場に来場者を流す、というのは文字通り机上の空論の愚策だったと指摘できる。

「阿波踊り」という「商品」にとって、メインブランドは「総踊り」ということになる。「総踊り」がメインブランドで、「顧客(=観光客)」はそのブランドを認識して購買行動を起こす。他の3会場はメインブランドから派生するサブブランドなので、メインブランドが消失するとサブブランドだけでは購買行動を起こすまでに機能しない、というのが阿波踊りのビジネス構造だ。

 経費削減を図るために中止すべきは、メインブランドである南内町ではなく、サブブランドのなかでももっともチケット販売率の低い市役所前である。ビジネス戦略では「強気を伸ばし、弱いところには注力しない、あるいは撤収する」というのが鉄則だ。遠藤市長の施策は、スポーツにおける下手なコーチのそれを想起させる。

 さらに取るべき施策だったのは、残すべきサブブランドである藍場浜と紺屋町の演舞場の強化、メインブランド化だったろう。具体的に提言すれば、夜10時からスタートする「総踊り」に出場する有名人気連には、7時あるいは8時からこの2演舞場のどちらかの出場を義務づけるというやり方だ。南内町のチケット販売率が100%だったということは、それ以上の潜在顧客がいたということだ。藍場浜と紺屋町のサブブランド力を強めれば、総踊り会場のチケットを購入できなかった客の移行率が高まるはずだ。

 今回の混乱により、「阿波踊り」というブランドは毀損してしまった。入場チケット数が10ポイント減ったという速報をもとに、昨年までの123万人来場者が12.3万人減少してしまったと試算してみよう。宿泊や飲食を含めて一人2万円の消費が徳島地域で発生していたとしたら、その減少額は24億6000万円となる。

 破産申告された市観光協会の累積赤字額は3億円強だったが、この赤字は累積であり、単年度のものではない。また阿波踊りの実施以外の事業による赤字、あるいは不明朗出費も取り沙汰されている。

 遠藤市長は3億円を節約しようとして約25億円を失った、という言い方もできようか。徳島市としては、運営方法の改善に取り組む一方、阿波踊りの目玉である総踊りの実施・強化に力を入れることこそが、観光による地位活性化の戦略にかなうだろう。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)

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