マツダ、世界がひれ伏すデザイン美を支える、世界最強の「金型製作部」

Business Journal / 2019年4月20日 8時0分

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●「魂動磨き」の誕生

 マツダ本社工場の一角には、機械加工がすんだ金型が並べられている。これを造形を崩さないように、金型職人たちが一つひとつ手で磨き、1ミクロンレベルの「面粗度」に仕上げていく。

「表面はあたかもピカピカに見えるけれども、機械加工目であるカスプを落とさなければいけない。大手の自動車メーカーさんは、それを機械でやろうとする。だけど、われわれは面粗度は人の手でやる。デザインさん、モデラーさんの思いは、機械ではつくれない。人の手ならではの味わいが金型に注ぎ込まれる。機械でミクロンのカスプを落とそうとすると何十時間もかかってしまうし、デザインのこだわりの想いは再現できない。だから、磨きの現場は『魂動デザイン』を必死で理解し、その極意を頭に叩き込んでいる」

 人の手の重要性について、こう熱弁をふるう金型部門の橋本昭の作業着の腕の部分には、なんと「魂動」の2文字が縫い取られているではないか。複雑なかたちをしている金型の磨き作業は根気がいる。作業者の技能に依存する部分が大きい。しかも、単に磨けばいいというわけではない。やみくもに磨けば、形状が痩せてしまう。

「最初、われわれはカスプを落としきって、きれいになったということで、『できた、できた』と大威張りしとった。でも、そうじゃなかった。欲しいデータが全部、崩れとった。“これでは、いかん”と反省した」

 最終磨き作業で製品形状面を丁寧に仕上げ、金型の組み立て作業に入る。こちらも難題だ。単に部品を組み合わせただけでは使いものにならない。誤差のまったくない加工は不可能だからだ。小さな誤差が重なれば大きな誤差となり、金型の合わせ面に隙間が生じてしまう。だから、加工された各部品を削りながら、微妙な調整を図っていく。

 しかも、「魂動デザイン」は車体に曲面を多用している。加えてキャラクターラインを使わずに、光と影のリフレクションでエモーショナルな動きを表現するために、金型の合わせ作業には“神業”が要求される。

「これがもう至難の業でね。面と面が全部一体になるようにつくっていかなきゃいけない。だから、金型の合わせ作業では、上下の金型の面のクリアランスをミクロン単位で均一化することがもっとも重要です。手間はかかるけど、それを欠かしたら絶対に『魂動デザイン』はできません」
 
 果たして、思い通りに金型を磨き込めるか。ブレイクスルーとなったのは、クレイモデラーが“ご神体”を制作する姿である。クレイモデラーはご神体に命を吹き込むかのように、リフレクションを通したい方向へと面を磨いていた。これを金型の磨きに応用したのだ。

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