AVにおけるエンタメ性とは…文筆家・森下くるみと考える「健全化されたあとのAV業界」

Business Journal / 2019年5月27日 20時0分

森下くるみ 確かに、考えてみれば当然のものがなかったんですよね。AVに出る以上、ある程度リスクがあるのは承知していても、自分の名前で売り出されたVHSやDVDが1本当たれば何千万円の儲けになる時代に、契約書はない、ギャラも開示されないという中でよくやっていたな自分、と今は思います。なんかもう気絶しそうです(笑)。

河合幹雄 もちろん、一部のフェミニストなど、AV業界自体を完全に消し去るべきだというレベルでの“健全化”を主張している人たちもいます。だけど、われわれのやっていることはそれとは違う。AV業界において問題のあるところは正すけど、あくまでそれはAV業界を生き残らせることを前提としています。この点については業界の方たちとも十分に話し合って合意していて、だからこそ業界側の協力を得られているわけです。

●健全化した業界から必然的にこぼれ落ちる者への対応が今後の課題

河合幹雄 だからその意味では、「結局おまえらはAV業界の味方だろ」といわれたら、「そうだ」と答えるしかないですね。というか、先ほどの歌舞伎町浄化作戦にも通ずる話ですが、私の専門である犯罪学的な見地からいうと、AV業界を潰そうとしても、いいことなんてひとつもないんですよ。もしそれをやったら、正規のAVで食えなくなる人たちがたくさん出てきて、無修正や海賊版などの非合法なほうへ流れ、女優さんたちがさらにひどい目に遭うだけです。

森下くるみ 新しいルールができたことによって、出演強要のような大きなトラブルは確実に起きにくくなったんじゃないでしょうか。かつてAV業界の現場にいた者から見ても、業界全体としては“正しい健全化”のほうへ向かっていると感じます。少なくとも外部から過剰な締めつけがなされているようには思えませんが……。

河合幹雄 ただ、ここのところ健全化に逆行する動きが見られるのも事実です。2000年代半ばから、業界全体の売り上げが下がってきて、経営の苦しくなるメーカーやプロダクションが急増したことはご存じでしょう。そういう中で、企業買収などによって業界の中心で成功しているところは、社会的評価の向上と経営の安定化を目指して、むしろ積極的に業界における自主規制のハードルを上げ、健全化を進めていきました。となれば当然、そこについていけずにこぼれ落ちていく企業も出てきます。すると先ほどお話ししたように、海賊版や無修正、あるいは出演強要のような非合法な手段を取るような業者も出てくるでしょう。そこをどうするか、というのが現在のもっとも大きな課題ですね。

森下くるみ お話をうかがえばうかがうほど、本当に面倒な部分の多い、大変な仕事ですよね。ルールを作っても次から次へと問題が出てきて、解決しながら進んでいくしかないという……。

河合幹雄 確かにこういう制度設計というのは、実効性を持たせるのが本当に難しい、というのはあります。まあ、だからこそわれわれとしては、やりがいのある仕事だと感じているんですけどね。
(構成=松島 拡)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング