もし消費増税が見送られたら?起こる“不測の事態”とは?広い範囲で混乱発生か

Business Journal / 2014年9月13日 1時0分

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 4-6月期のGDPは前期比年率▲7.1%と散々だった(二次速報)。7-9月期のGDPを材料として、消費税率10%への再増税(2015年10月)を今年の12月に判断することとなっている。消費増税を見送ろうとすれば、政治的には新たな凍結法案を国会で成立させる必要があり、かなり厳しい。

「政治は一寸先は闇」というものの、現時点では消費増税するというのが既定路線だ。今回の与党・自民党人事や閣僚人事から見ても、消費増税は「レールにのっている」(谷垣禎一幹事長)のは間違いない。ただ、7-9月のGDPをはじめとする経済統計の結果、消費増税が政治的に見送られる場合もある。安倍晋三首相はその選択肢も含めて考えているが、もし見送られた場合、どのような影響があるのかという「頭の体操」をしてみるのもいいだろう。

 まず、今回の党人事・内閣改造を受けて、財務省はこれまで以上に増税キャンペーンを張るので、それが無に帰すことになる。それだけでない。財務省の予算をばらまこうとする議員も当てが外れる。特に、09年の民主党への政権交代で長い間冷飯を食っていた自民党議員は、政権奪取のうまみを味わいたいので、消費増税を今か今かと待ち焦がれている。今年度予算は大盤振る舞いだったので、それなりに息がつけたが、野党時代の3年半で失った分はまだ取り戻していない。

 財務省の増税キャンペーンは、マスコミや有識者も動員するため、彼らは梯子を外される格好となり、その後の言論活動にも支障が出かねない。特に、同省御用達といわれる学者やエコノミストへの影響が甚大だ。マスコミも彼らを同省御用達という理由で使っているので、同省の見解をいち早く国民に伝えるという役目を果たせなくなれば、もうメディアでは使われなくなる。これは、彼らにとっては死活問題だ。

 梯子を外されるという意味では、日本銀行も同じだ。黒田東彦日銀総裁は、2%のインフレ目標の達成にあたり10%への消費税増税を前提にしていると言っている。もし消費増税がないと、金融引き締めに回らざるを得ず、それは目先の株価の急落や経済に不測の影響を与えかねない。

●国や地方の予算編成にも影響


 中央省庁の予算担当者も思わぬ余波を受けるだろう。消費増税を前提として予算要求しているので、それが見送りとなれば、年末の忙しい時期に予算編成のやり直しになりかねない。「消費増税を見込む」とは、機械的な手続きではなく「予算要求は気前よくやっていい」というのが官僚の間で暗黙の了解なので、それをご破算にされれば大騒ぎになるだろう。

 各地方自治体も割を食うことになるだろう。今回の内閣改造で地方創生大臣が創設され、地方へのバラマキがあるとの期待も高まっていたが、それもストップするだろう。なにより、地方創生大臣に就任した石破茂氏の仕事がなくなるので、いったん矛を収めた石破氏が再び暴れ出すかもしれず、自民党のまとまりがなくなってしまう。

 経済界も、政府へ求めていた法人税減税がお預けになる。政府は現在、消費増税と法人減税をセットで検討しているため、法人減税も見送られることなる。


 新聞業界も消費増税がスキップされると大変だ。というのは、新聞業界は軽減税率に賛成し、新聞料金への適用を財務省に求めているが、もちろんそれは消費増税が前提である。今のところ、同省もしたたかで、軽減税率には難色を示している。そこで、消費増税がなくなれば、軽減税率は自動的になくなる。それでは、ただでさえ購読部数が減少して経営難になっている新聞業界はさらに経営が難しくなる。

 このように、消費増税がスキップされると、それをあてにしていた関係者らは大騒ぎになるだろう。問題はそうした関係者があまりに多く、いろいろなところで実権を持っている人たちが存在するということだ。もちろん筆者は、消費増税がスキップされることがベストだと思っている。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)

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