年間1万人超の認知症行方不明者、個人情報はどこまで保護されるべき?遅れる行政の対応

Business Journal / 2014年10月21日 22時0分

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 認知症を患った父や母が、ある日突然行方不明になったら……見守ってきた家族の心配と心痛はいかばかりかと思う。今の日本で、そうした行方不明者が年間に1万人も出ているという、驚きの数字がある。

 認知症が原因で行方不明になったと警察に届け出があったのは、2012年に9607人、13年は1万322人にもなる。そのうちの多くは無事に保護されているが、12年に359人、13年には388人の死亡が確認された。また、2年間の受理分のうち、今年の4月末時点で行方不明のままも258人に上る。

 さらに、13年に警察が保護したが身元がわからずに、自治体に引き渡したのは157人。そして、今年5月末時点でまだ13人の身元が判明していない。

 この問題は、今春NHK が放送した『“認知症800万人”時代』で大きくクローズアップされ、各報道機関も一斉に取り上げた。それに対して行政側も動きを見せる。6月5日、警察庁が行方不明者の早期発見や身元確認などの対策を取るよう都道府県警に通達。8月5日には厚生労働省がホームページのトップに専用サイトを設けるなど、少しずつだが前進も見られるのだ。

●捜索を妨げる個人情報の壁 


 「行方のわからない認知症高齢者等をお探しの方へ」というサイトからは、保護された身元不明高齢者の情報を公開する各都道府県のページにアクセスできるようになっている。10月1日現在で、リンクが張られているのは千葉県や静岡県、兵庫県など8県と山口県萩市だけでまだまだ少ない。厚生労働省の呼びかけに応えて、準備を進めている自治体がまだ多くあるといいのだが。

 一方で、身元不明の高齢者をめぐっては、個人情報の取り扱いに自治体ごとで差があることなどから、情報の公開や共有がうまく進まないという問題がある。

 高齢者が保護されていると聞いた家族が自治体に問い合わせても、顔や身体的特徴は個人情報で出せないと断られることがあるという。本人の同意を得れば公表できる規定であっても、認知症の人の同意は法律的に有効なのか判断が難しい。今のところ、ほとんどの自治体は個人情報を理由に保護されている人の顔写真や身体的特徴などを公表していない。

 最近も、埼玉県狭山市で保護された男性(名前を言えるにもかかわらず、18年間も身元不明のままだった)が、テレビ放送された直後に身元判明したケースがあった。直接的な原因は警察の資料照合ミスだったというが、こうした例を見ると、自治体はむしろ積極的に情報を発信すべきだろう。

●情報公開のルールが必要 


 そんな中、千葉県や静岡県のように、個人情報保護条例を柔軟に解釈して顔写真などの公表に踏み切った自治体もある。たとえば静岡県の条例では、本人の同意がなくても「明らかに本人の利益になるとき」は情報を提供できるという例外が定められている。

 徘徊行方不明者の個人情報は、ストーカーやDV被害者のそれとは根本的に違う扱いをするべきだ。本人や家族の利益につながるものとして柔軟に対応して欲しい。やはりきめ細かな情報がなければ、より多くの身元確認には繋がらないからだ。

 今後は国が主導して情報公開の共通ルールを整備して行くという。もちろん法整備は急いで欲しいが、私たち自身も認知症への理解を深めることが重要だ。認知症の高齢者も安心して町を歩けるように、社会全体で見守るためのネットワークを作っていくべきだろう。
(文=チーム・ヘルスプレス)

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