センシティブな問題をAIで解決する/All Turtles フィル・リービン氏[後編]

cafeglobe / 2019年5月30日 7時45分

大問題化する前に、AIで職場の環境改善

サンフランシスコ、東京、パリの3箇所に拠点を置き、AIを使った製品開発を支援する会社、All Turtles(オール・タートルズ)。CEOフィル・リービン氏のインタビューを2回にわたり掲載しています。⇛前編はこちら。

インクルーシブな組織づくりの重要性などについて伺った前編に引き続き、今回はAll Turtles(オール・タートルズ)が支援しているプロジェクトについての話題です。

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フィル・リービン(Phil Libin)さん/All Turtlesファウンダー・CEO
90年代より米国で複数の事業を立ち上げてきた連続起業家。2007年にドキュメント管理クラウドサービスを提供するEvernoteを創業しCEOに就任。2015年に同社のCEOを退任後、米ベンチャーキャピタルのゼネラル・カタリスト・パートナーズに参加。2017年5月、AI(人工知能)関連の自社プロダクトに加え、スタートアップや大企業の新規製品開発を支援する新会社 All Turtlesを設立。

「The Future of Work 未来の働き方」と「The Future of Health 未来の健康管理」を大きなテーマとして掲げるAll Turtles(オール・タートルズ)が手がけるサービスのなかでも、特に興味深いのがSpotと呼ばれるハラスメント対策ツールです。

センシティブな問題もボットになら話しやすい

その仕組みはウェブ上のボットとのチャットを通して、職場で起きたハラスメントなどの不快な出来事を記録するというもの。警察が事件の目撃者などから話を聞きだす時に用いる、認知面接という方法に基づいた質問に答えながら、ユーザーは記憶を整理し記録を残すことができます。Spotで作成されたレポートは会社の人事部などに提出することができ、匿名での報告も可能です。

ボットとの会話なら相手がどう受け止めるかを気にする必要がありません。誘導的な質問によって記憶が混乱したり、心ない言葉によって傷を深めたりすることも防げます。

Spotは法人向けのサービスも展開していて、すでに複数の企業で導入されているとのこと。実際にどう使われているのかなど、MASHING UPコンテンツ・ディレクターの中村寛子がリービン氏に詳しく聞きました。

複雑化している人事の仕事

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中村:#MeToo以降、差別やハラスメントに対し以前よりも厳しく対処する企業が増えた一方で、人事部がリスクマネジメントに注力し過ぎていて、社員のキャリア形成がおろそかになっているとの声も聞かれるようになりました。

リービン氏:ものごとは振り子のようなもので、ある問題を正そうとすると、行き過ぎてしまうこともあります。ちょうどいいバランスを保つのは不可能に近いんです。

ハラスメント対策などに関しても同じことが言えると思います。人事のやり方に不満がでるのは、ある意味仕方のないことです。難しいということを受け入れて、試行錯誤をしていくしかないと思います。

職場の環境改善のためのツール

中村:Spotが企業のなかでどんな使われ方をして、どういった効果を上げているのか教えていただけますか?

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リービン氏: Spotは性差別やセクシャル・ハラスメントに特化したサービスではなく、差別全般を扱っています。深刻なハラスメントの報告は全体のごく一部で、多くの場合は職場の慣習などに軽い違和感をおぼえた人が意見を言うために利用しています。

ある大企業での使用事例で、面白いと思ったものがあります。次のような匿名の報告です。

「私の所属するチームでは毎週木曜日に飲み会があります。みんなが集まり、ざっくばらんに話し合えるのは素晴らしいこと。でも、イスラム教徒の私はお酒が飲めません。こうした場が飲みの席だけというのが残念です」

多数派が見落としがちな問題を顕在化させる

リービン氏:これは、決して大きな問題ではありません。報告した人は、全体の方向性には賛成だけど、ある部分に少しだけ不満を感じていると言っている。この報告を受けて、早速ほかの方法で集まれる方法が試みられたそうです。

中村:見過ごされがちな点をカジュアルに指摘できるのですね。小さなことでも積み重なると、ある日突然大問題に発展することがありますものね。

リービン氏:そう。誰かが指摘するまでは、多数派が気付かない問題はたくさんあります。そういうことを俎上に乗せて働きやすい環境を作るのに役立ててほしいと思っています。

記憶を整理し、外部化するだけで気分が変わる

中村:とはいえ、匿名だとしても、報告するには勇気がいる気がします。規模の小さな職場だと特に。

リービン氏:人事部など他人に報告するかどうかはユーザー次第です。匿名を希望する場合、報告先はもちろん、Spotの運営側も発信者を特定することができません。

すぐに報告しなくても、再度似たようなことが起きたとき、合わせて報告することもできます。

嫌な出来事について一人でモヤモヤ考えているよりも、手に取れるレポートとして外部化するだけで気分が変わると思います。それをどう使うかはゆっくり考えればいいんです。

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中村:興味深いですね。日本での展開を期待します。

[All Turtles, Inc., Spot]

取材・文、撮影/野澤朋代

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