職場での男女平等実現は200年先!? まずはインクルーシブな環境づくりを/SXSW 2019 レポート

cafeglobe / 2019年4月25日 5時15分

今や世界的メジャーイベントにもなったSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)。

他のイベントと異なり、「答えを聞きに行く」のではなく、登壇者や参加者が課題について「ディスカッションを繰り広げる」ところが大きな特徴です。

SXSWは毎年3月にアメリカ・テキサス州オースティンで行なわれる、音楽・映画・インタラクティブをテーマにした大規模なカンファレンス&フェスティバル。

今年は24のセッショントラックが組まれ、3月8日から2週間にわたり、毎日100を超えるセッションや展示が同時に開催されました。

sxsw_01 SXSW 2019のセッション会場。

ダイバーシティ&インクリュージョンがデフォルトトピックになったSXSW

そんな中で、筆者が注目したのは、「ダイバーシティ」や「インクルージョン」をキーワードにしたセッション。

実は昨年までは「ダイバーシティ&インクルージョン」に特化したトラックがあったのですが、今年はこのトラックがなくなりました。これは個人的には衝撃的な出来事。

ですが蓋を開けてみれば、ダイバーシティ&インクルージョンはさまざまなトラック、また、トピックで、当たり前のようにキーワードとして扱われていました。

sxsw_04-1 sxsw_05-1 sxsw_03-1 SXSW2019のライブ風景。各国からさまざまなバックボーンをもつアーティストが集結。出演者も参加者もダイバーシティ。

この事実から、トラックにして議論をうながすまでもなくなったため、“あえて”外したのではないか、というのが筆者の感想です。

sxsw_06-1 インタラクティブトラックより。 sxsw_02のコピー-1 会場内のインスタレーション。

女性の管理職を増やしたい企業、離職せざるをえない現実

20~50代の各世代から構成されたセッション「Return on inclusion : Generations of women at work」では、冒頭でマッキンゼー・アンド・カンバニーの調査結果をシェア。

2015年にアメリカ、イギリス、カナダ、中南米で展開する企業366社を対象に行われた調査を分析したところ、性別の多様性においてその上位25%以内に入る企業は、同業他社の平均値よりも15%以上財務パフォーマンスが高い傾向にあるそう。

しかし一方でスタンフォード大学の調査によると、女性の半数以上がライフイベント時に離職せざるをえない状況にいることがわかっているそうです。

セッションでは、「どうしたらこの相反する現実を、企業と女性たち、双方にとってメリットのある状況に変えられるか」という軸でディスカッションを展開。

sxsw_09-1 世代の違う4名の女性が登壇。

その中でスピーカー全員が口を揃えたのは、第一にCレベル(CEO、CFO、COOなどの経営幹部層)の意識改革が必要だということでした。

「企業のトップやエグゼクティブは男性だけとは限らない。女性も含めたCレベルが多様な働き手を受け入れる重要性を理解すること」がカギだと語ります。

多様性の重要性を理解するとともに、多様性が生まれていない現実を把握する。まずは経営層がそれを知らなければ何も始まりません。

職場での男女平等が実現するまで約200年!?

多様性を受け入れることの重要性が理解されたところで、行動に移さないと意味がありません。

毎年発表されている男女格差調査(世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」)を見ると、実は教育に関して言いえばすでに多くの国々で格差がなくなってきており、さらには女性の就業率もCレベル以外はとても高くなってきていると言えます。

しかし一方で、このままでは、すべての項目において男女格差をゼロにするまでにあと約200年かかるとも言われています。

この状況において、セッションでは、意識改革だけでなく行動改革の必要性も語られました。そして、そのためには、時に企業のCレベルはトップダウンで組織を動かす必要があるといいます。

実例として挙げられたのは、セールスフォース社CEOであるMarc Benioff氏のアクション。

2015年、同社で男女賃金格差があることを知ったBenioff氏は、即刻、全社員を対象に賃金格差の是正を始め、2017年までにセールスフォース社全拠点において賃金平等を達成しました。

また、同氏は常に多様性を念頭に置き、ミーティングメンバーが男性のみで構成されているなど、「何かがおかしい」と疑問を持った際には、すぐに改革に取り組んでいるそうです。

#metooムーブメント後の人事部署は崩壊寸前

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企業のCレベルの意識・行動改革の必要性は、SXSWのほかのセッションでも訴えられていました。

「HR in the Post #metoo World」のセッションでは、2017年の#metooムーブメント後、53%の会社員が「人事部門は崩壊寸前になった」と考え、67%の会社員が「人事部門は社員のキャリア構築やより良い組織作りではなく、リスクマネジメントに注力している」と感じているという調査結果を発表。今日の課題を浮き彫りにしました。

そして、この状況を打破するために、今、企業に必要とされていることは、Cレベルの意識改革をはじめとする組織改革であるといいます。

Chief Diversity Officer(チーフ・ダイバーシティ・オフィサー)、Chief Diversity & Inclusion Officer(チーフ・ダイバーシティ・アンド・インクルージョン・オフィサー)、そしてChief Equality Officer(チーフ・イクオリティ・オフィサー)の配置を推し進め、人事部門との連携を強めること。

これにより多様性を受け入れる体制を整え、社外にアピールするだけでなく、社員に向けて、その姿勢をきちんと示す必要があると言います。働きやすい環境づくりを責任をもって推進する人物が配置されていることを社員に示すことが、安心して働ける環境づくりの第一歩となるはずです。

多様な働き手、働き方を受け入れるインクルーシブな環境

sxsw_10-1 音楽業界の男女格差について語るセッションより。

今年のSXSWカンファレンスでは企業セッションだけでなく、音楽や映画といったエンターテイメントトラックでも「男女平等を実現するために何をすべきか?」と議論が交わされていたことがとても印象的でした。

業種は違えど、男女格差の課題はすべての人に当てはまることです。

男女のギャップを少しでも早く埋めるためには一人ひとりの意識改革に加えて、個を尊重し受け入れるインクルーシブな組織・環境を生み出すことが急務と言えそうです。

インクルーシブな環境作りに向けて、Cクラスが社員から意見を吸い上げ、組織が積極的に変わっていけたら——。男女格差是正へのスピードを加速できるかもしれません。

sxsw_07-1 会場は広大。電動スクーターで駆け巡りました。

取材・文/中村寛子 撮影/間部百合

[SXSW, Inc.]

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