どんな問題もスタートは同じ。リスペクトを忘れず会話を続けていきたい/エバデ・ダン 愛琳さん

cafeglobe / 2019年7月1日 5時15分

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去る2019年5月25日から30日、若い女性たちをエンパワーするカナダの団体G(irls)20によるワークショップとグローバルサミットが開かれました。10回目となる今年は世界各国から、18歳から23歳までの女性24人が代表として参加しました。

日本代表は、岐阜県出身のエバデ・ダン 愛琳さん(23)。ナイジェリア人の父と日本人の母を持ち、現在はドイツの大学院に通っています。バイタリティあふれる若い女性たちが集まった6日間の感想を聞きました。

24人の参加者たちは、とにかくパワフル!

Summitday2_G(irls)20 G(irls)20サミットでの一コマ。中央がエバデ・ダンさん。

———まず、G(irls)20に応募したきっかけは?

エバデ・ダン 愛琳さん(以下、エバデ・ダン):私には、今まで二本柱の自分のテーマがありました。ハーフであることが向き合う契機になった「多様性」と、今勉強している「環境問題」です。

G(irls)20がテーマとする「若い女性」が、イコール自分だという意識はあまり持っていませんでした。でも、「社会人になってから、女であることを意識するようになった」という友人の話を聞いたこともあって、自分のテーマに「ジェンダー」も加えたいと思って応募しました。

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——応募者は1600人を超していたと聞きました。どんな方たちが参加されていたのでしょうか?

エバデ・ダン:それぞれ地域や学校で、自分のNPOやコミュニティを持っていたり、夢に向かって頑張っていたりと活動的な人たちばかり。差別や性暴力など壮絶な体験をしている人もいました。

——エバデ・ダンさんも、大学在学中に、NPOでのインターンシップや、アフリカにルーツを持つ子どもを対象にしたキャンプをクラウドファンディングで立ち上げる活動をされていましたよね。

エバデ・ダン:当時は必死でした。私のような思いを、次の世代の子にはさせたくなかったからです。ハーフということで子どものときからジロジロ見られたり、日本語うまいねって言われたり。でも私には悩みを相談できるような、同じ経験をした大人が周りにいなかった。だから、同じルーツを持つ子が集まる場を作りたかったんです。

G(irls)20の参加者の活動は色々です。でもそれぞれの経験を比較するのではなく、情報交換をして助け合おうっていうポジティブな姿勢に感動しました。そして、みんな本当にパワフル!

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——期間中は、リーダーシップやセルフブランディングなど、朝から夕方まで様々なワークショップがありました。特に印象に残っているワークショップはありますか?

エバデ・ダン:ネゴシエーション(交渉)のワークショップです。大企業のトップに交渉の仕方を教えている男性が講師で、講義とロールプレイで計4時間。全く長く感じませんでしたね。将来は、民間セクターで環境問題の研究をしたいと考えているのですが、その進路に役立つと思いました。

——具体的にはどのようなことを学ばれましたか?

エバデ・ダン:男性と女性では、同じような交渉をしても女性の方がアグレッシブに捉えられてしまう。そういった現実を踏まえて、自分がどうやって交渉の場に臨むのかということを考える機会になりました。

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会話することの大切さは、両親から学んだ

——6日間をとおして、他に気がついたこと、得たことはどんなことでしょうか?

エバデ・ダン:何か問題があったとき、逃げずに会話をすることの重要性を再確認しました。大学院では、環境問題、特に気候変動について学んでいます。解決のための答えが一つということはない。試行錯誤していくしかありません。

そのためには、まずは会話が大切。相手をリスペクトしながら、お互いに意見を述べることが必要だと思っています。そして、それは多様性を考える上でも、ジェンダーについても同じだという認識を強くしました。

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——「会話」がキーワードですね。

エバデ・ダン:会話することの大切さは、両親から学びました。両親は何か問題があると、夫婦でじっくり話し合っていました。リスペクトについても同じです。父が時々、ナイジェリア出身であることで誰かにからかわれても、母は父をリスペクトしていました。2人の問題を2人で解決している姿を見て、私もアイデンティティや生活上の悩みについては2人の弟たちと相談して解決するようにしていました。

——今は、どのようにご自身のアイデンティティを受け止めていますか?

エバデ・ダン:「それぞれの個性があるように、私にも個性がある。違いがあっていい」と思っています。でもこれは、日本の大学を卒業して、ドイツに行ってからようやく思えるようになったことです。

小さいときから、「人と違う存在」であった私は、「普通」にならなくてはいけないと周りから言われているような気がしていたし、自分でも「普通」にならなくては、と思い込んでいた。14歳で初めてナイジェリアに行って父方の親戚たちに会い、自分のルーツに誇りを持てるようになったけれど、日本では「(肌が)黒い」と言われるのにナイジェリアでは「白い白い」と言われて。ここでも私は人と違うのか、と。

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様々な人種が集うヨーロッパでは「普通」になれるのではと、日本から逃げるようにドイツに行ったけれど、やっぱり電車や町中で、じろじろ見られる。悩んでいたら、友人が「あなたは、良い意味で人と違う要素があるから。魅力的だからみんな見るのよ」って。その言葉に、もう逃げなくてもいいか、と思えました。

地球の裏側でも同じ経験をしていた

——今回のサミットでも、各国から色々なバッググラウンドを持つ人が集まりましたよね。

エバデ・ダンさん:バッググラウンドは違っても、皆何かしら共通の経験をしていました。若い女性であるというだけでちゃんと話を聞いてもらえなかったり、ブラジル代表の子は、アフリカ系ということで、地球の反対側にいるのに私の鏡のような経験をしていたり。数日間でも濃い毎日だったので、お別れの日にはみんな号泣してしまいました。

Summitday_G(irls)20 異なるバックグラウンドを持つ各国代表の24人。6日間のワークショップをとおして、固い結束が生まれた。

また、こんなにアイデアがあって、やりたいことがあるのに、若い女性は注目されにくい。社会にとってももったいないことで、その点に気がつけて良かったです。

——今後はどのように活動していきたいですか?

エバデ・ダンさん:今はとにかく、ここで学んだことを同世代の女の子たちに伝えていきたいです。そして、まだアイデアの段階ですが、出身が岐阜県なので、まずは東海地区の外国人女性にフォーカスして、防災の手引きを作りたいと思っています。うまくアプローチする方法を考えているところです。

——力強さと柔らかさの両方を感じさせるエバデ・ダンさん。ひとつひとつの質問に、真摯に答えてくれた姿が印象的でした。今後の活躍が楽しみです。

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エバデ・ダン 愛琳さん
岐阜県出身。上智大学総合グローバル学部卒業。現在、ドイツ・フライブルク大学の修士課程に在籍。環境ガバナンスについて学ぶ。学部生時代は日本で暮らす外国にルーツを持つ子ども・若者がより暮らしやすい社会を目指しNGOでの活動、子どもたちとのイベント企画、大学やシンポジウムに登壇するなど幅広く活動。

撮影/YUKO CHIBA (DOUBLE ONE)、写真提供/G(irls)20(2・8枚目)、取材・文/土田ゆかり

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